NEXCO西日本徳島工事事務所は、吉野川大橋を主構造物とした、四国横断道徳島東IC~徳島JCT間4.7㎞および徳島道の付加車線設置事業などの整備を推進している。徳島東IC~徳島JCT間は沖積低地故の軟弱地盤であり、土工、橋梁部ともその対策に非常に苦労した。また、吉野川大橋は、桁橋の張り出し長(最大130m)としては世界最大級のプレキャストPC箱桁(一部はラーメン構造)であり、上部工も製作・架設とも様々な工夫を施している。さらに徳島道では、世界初の非鉄PC橋であるデュラブリッジを採用した別埜谷橋をこのほど架設した。技術的挑戦が満載の同事務所の詳細を浦啓之所長に聞いた。(井手迫瑞樹) ※IC・JCT・橋梁等の名称は、仮称です。
徳島東IC~徳島JCT 橋梁も土工区間も難しい軟弱地盤対応
渡り鳥のシギやチドリもウォッチしながらの施工
――所管事業の概要から
浦所長 当事務所は新設・改築事業として四国横断自動車道の徳島東IC~徳島JCT間4.7kmの新設事業と、徳島道の土成IC~脇町ICまでの7.5kmおよび脇町IC~美馬IC間4.8㎞の付加車線設置事業、阿波スマートICの整備事業を進めています。また、令和2年3月末には、土成IC~脇町IC間の7.7kmが新たな付加車線設置事業として追加されました。
――具体的にまず四国横断自動車道(徳島東IC~徳島JCT)新設事業からお願いします
浦 四国横断自動車道(徳島東IC~徳島JCT)新設事業の正式路線名は、「四国横断自動車道 阿南四万十線」です。徳島平野を南北に横断するように徳島市北沖洲~同市川内町富久(徳島東IC~徳島JCT)までを通過する延長4.7kmを事業区間として、暫定2車線で整備しています。
徳島平野は、吉野川の下流域に発達した沖積低地です。吉野川、旧吉野川及び今切川等によって形成された三角州低地からなっています。軟弱である沖積層の厚さは40m~50mに及んでいます。また、江戸時代以降に整備された干拓地及び埋立地も分布しています。
構造物延長は土工部が2.9km(62%)、橋梁 が1.8km(38%)となっています。2021年度末の一日でも早い完成を目指して事業を進めています。全ての工事に着手しており、吉野川両岸の下部工工事の2件、土工工事2件及び鋼上部工工事1件が既に完了しています。稼働中工事は、土工2件、上下部工2件(吉野川大橋)、鋼上部工1件の計5件です。
吉野川大橋イメージ(NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)
同区間は、南海トラフ地震による津波発生時において、地域防災力向上の観点から、自治体との協定により、4.7kmの事業区間の中に3か所の津波避難場所を整備する予定です。
土工については、軟弱な沖積層上に盛土施工をすることから、盛土本体の安定、地盤の圧密沈下、周辺地盤への影響が懸念されるため、プレロード工法による軟弱地盤対策などを行いながら工事を進めております。吉野川左岸(旭野地区)が施工中で、吉野川右岸(沖洲地区)は竣工しています。
橋梁については、吉野川河口部に建設します「吉野川大橋」など全部で4橋(ほか宮島江湖川橋、徳島ジャンクションBランプ橋および同Dランプ橋)の施工をしています。橋梁は吉野川大橋が1696.5mのPC15径間連続ラーメン箱桁橋、宮島江湖川橋は上下で橋長が異なっており、上り線が93m、下り線が90m、Bランプ橋は375.5m、Dランプ橋が163.3mです。宮島江湖川橋は上部工を手延べ桁で送り出し架設中です。Bランプ橋は竣工しており、Dランプ橋は下部工を施工中です。
特に吉野川河口部周辺には、多種多様な希少生物や渡り鳥のシギやチドリが飛来する重要な湿原もあることから、環境保全にあたり専門家から必要な指導を得るための「四国横断自動車道 吉野川渡河部の環境保全に関する検討会」を設置し、関係機関と調整を図りながら環境保全と事業の両立に向けて工事を進めております。
軟弱地盤 プレロードに8~10か月かけ
NEXCO西日本で初めてICTを使った盛土施工
――土工部のプレロード工法、軟弱地盤対策についてもう少し具体的に述べてください。こうした沿岸部の平野に沿ってはしる土工部の沈下は、有明海沿岸道路など建設時だけでなく、供用後も沈下に悩まされることがあるので注意が必要だと思いますが
浦 プレロード工法は基本的には載荷盛土であり、概ね8か月から最大10か月かけて施工を行います。地盤改良工法としては、カルバートの一部で深層混合処理を行う箇所もあります。現地の地盤を精査して、応力遮断壁(用地境界沿いの地中にコンクリート壁を構築)による縁切り(ネガティブフリクションなどの対策)も必要があれば行います。
――当初、プレロードは半年程度で収まるという認識だったと記憶していますが
浦 そういう認識だったのですが、即時沈下量が収まっていません。10か月かけても収まらない箇所もあります。
――それは厳しいですね
浦 全線プレロードというわけではありません。プレロードは基本的に畑地で行います。住宅地などは収去してから施工するため、盛土載荷期間が何か月も取れないものですから、深層混合処理などの地盤改良のみで施工しています。深層混合処理は深さで言うと40m前後に及びます。ここは橋梁部も含め、軟弱地盤が平均40mほど堆積しています。
――同地も橋梁で飛ばしたほうがよかったのでは?
浦 当時は、他事業との事業調整もあり、例えば高松道4車線化事業の建設残土を有効利用するなどから盛土構造を採用してきた経緯があり、現在では、災害発生時の津波の防波堤の役割や周辺住民の一時避難場所としても期待されていることから盛土構造で進めているところです。
――工期を縮減するための施策としては
浦 旭野地区の竹中土木の施工する現場で、当社では初となるICTを使った盛土施工を実施しています。ブルドーザーやバックホウにGPS受信機を付けて、半自動施工するものです。
まずドローンで現地の点群データを取得し、それを基に設計して3DCADに落とし込み、そのデータをGPSで配信することにより施工していきます。
ブルドーザーはマシンガイダンスおよびマシンコントロールを実施します。横断図(横断的な機械の位置情報の確認)、平面図(排土板の左右の切盛高さ)、位置状況(排土板の座標・地盤高・設計高、現状のGPS受信による水平位置と高さの誤差)を受信し、オペレータはマシンを所定の位置に動かすだけで後は自動的にマシンがコントロールされます。
ICT土工を採用して工事が進められている旭野地区
バックホウ(マシンガイダンス)
ICTによって動かされている建設重機
バックホウはマシンガイダンスを実施します。平面図で現在の位置情報とバケットの設置向き、断面図で切盛の位置情報やバケットの左右の切盛の表示を行います。切土は赤、盛土は青、誤差の±0.05mは緑で表示されます。表示される項目は、現場状況により必要な情報が得られるよう選択できるようになっています。オペレータはその情報により適切に機械を動かして施工することができます。
最終的にはドローンを飛ばし、画像を撮影し3Dデータ化することで出来形管理を行います。
効果は精査中ですが、無駄な作業を極力省くことができるため効率化できますし、現場において監督指示する人間も省けるため、省人化も促せます。