阪神高速道路では、大阪湾岸道路西伸部など4つの新設路線を進めていて、大和川線は供用までの大詰めを迎えている。また西船場JCT改築事業についても桁架設をほぼ完了して、床版工などを進めており、今年度末の供用に向けて工事を進めている。大規模更新については、湊町付近の鋼製フーチングの補強は詳細設計を実施中で、湊川付近の鋼桁補強のための中間橋脚設置対策についても工事発注を進めている。その詳細について建設事業本部の仲義史・副本部長 兼 建設更新総括部長に聞いた。(井手迫瑞樹)
外環状としての大和川線、淀川左岸線を整備
東西交通分散の観点から大阪湾岸道路西伸部を施工
――進捗中の各建設路線の目的と概要、現況を教えてください
仲建設・更新総括部長 建設事業では4つの路線を担当し、西船場JCTの改築事業を加えた5つの事業を進めています。
――具体的には
仲 大阪地区ではミッシングリンクを解消するため、大阪都市再生環状道路として既存の湾岸線・近畿道を活用しながら、現在の環状線の外側に環状道路を整備していくことになっています。その一環として進めているのが大和川線、淀川左岸線の2期および延伸部となります。こうした道路が完成すれば都心を通過している交通を外周部に回すことにより、都心部の渋滞の緩和や利便性が大きく向上します。
神戸・兵庫地区については、神戸線の西宮JCT以西で慢性的に渋滞が発生し、渋滞損失時間も全国ワースト1位、2位となるほど激しくなっています。その東西交通を分散する観点等から、大阪湾岸道路西伸部の事業を進めています。
大和川線 2019年度の供用目指し舗装工が進捗
淀川左岸線2期 舗装・施設・開削工事の一部を担当
――事業の進捗状況を大和川線からお願いします
仲 大和川線は全長9.7kmの路線で、西側の1.4kmは2017年1月に供用し、東側の0.6kmも2013年に供用しています。残りの工事中区間が7.7kmとなり、2019年度中の完成供用を目指しています。トンネルは完成していて、舗装工事と換気・照明・防災設備工事等を行っています。
大和川線のシールドトンネル部(阪神高速道路提供、以下注釈無きは同)
大和川線常磐西出口
大和川線の施工状況(2017年5月、井手迫瑞樹撮影)
――舗装の進捗状況は
仲 6月現在で本線シールドトンネル区間を中心に5割程度の進捗です。
――淀川左岸線2期の進捗状況は
仲 海老江JCT~豊崎IC(仮称)に至る延長4.4kmの自動車専用道路です。大阪市との合併施行区間は4.3kmとなります。工事着手したところで、大阪市の本体工事が先行して開始されています。具体的には、大阪市で設計、地下埋設物撤去、河川堤防工事などを2018年秋から着手されています。JCT部が高架橋でそれ以外はほぼトンネル構造です。
――合併施行区間の分担は
仲 淀川左岸線2期は主たる部分が淀川河川堤防に並行する開削トンネルとなります。トンネル本体は大阪市が施行し、当社は舗装、施設工事の一部を担当します。阪神高速では、開削トンネルの一部の工事を大阪市より受託しています。受託箇所は海老江工区と呼んでおります阪神電鉄交差部から国道2号の間の一部区間となります。
淀川左岸線パース(既掲載)
――工事延長は
仲 延長約200mの4車線の一層二径間断面の開削トンネル工事です。付近の構造形式は、西側から1期区間本線や3号神戸線と接続する海老江JCTが橋梁で、阪神電鉄交差部で土工・擁壁となり、それから東は開削トンネルとなります。
――工事は着手済みでしょうか
仲 大阪市より受託した区間の海老江工区開削トンネル工事については、6月3日に工事契約を行ったところで、早期の工事着手をめざしています。
――海老江JCT工事はどうでしょうか
仲 概略設計はほぼ完了しており、工事について大阪市と調整を行っているところです。
淀川左岸線延伸 上町断層交差部含む2.8kmを阪高が施行
――淀川左岸線延伸部の構造と進捗状況は
仲 近畿道・第二京阪道路との接続部である門真JCT~新御堂筋の豊崎IC(仮称)までの延長8.7kmとなります。門真JCT側の高架部等1.1kmはNEXCO西日本の単独施行で、豊崎IC側の2.8kmが阪神高速道路単独施行、残り区間(大阪市鶴見区緑地公園~同市都島区友渕町)の4.8kmが国と阪神高速道路の合併施行です。
淀川左岸線延伸部標準断面図
――合併施行区間の分担は
仲 事業区分としては、国が本体工事、阪神高速道路が舗装・施設工事等となります。
――構造は
仲 NEXCO西日本施行の高架部等を除き、本線はすべてトンネル構造です。豊崎側の淀川の河川堤防に近接している区間及び門真側の鶴見緑地区間が開削トンネルで、それ以外は大深度地下使用区間を含むシールドトンネルとなります。
――断層があると聞きましたが、阪神高速道路単独施行部での影響は
仲 上町断層ですね。同断層があるのは阪神高速道路施行区間となります。
――対策はどのようなものですか
仲 現在はトンネルの基本構造を検討している段階ですので、今後の検討となります。本年1月31日に、第1回目の技術検討委員会を開催したところです。
――委員長は
仲 京都大学の大西有三名誉教授です。
――阪神高速道路施行部は開削トンネルですか
仲 開削トンネルに加え、シールドトンネル全体の約3分の1が当社の施行区分となります。
――周辺地盤はどうでしょうか
仲 大阪層群ですが、地質データを確認し設計を進めています。
――シールドは両側から施工するのですか
仲 具体的な施工方法については、検討中です。
――シールドトンネルにおける合併施行区間の施工区分については
仲 施工の効率性や安全性などに配慮し、共同事業者と協力して検討していかなくてはならないと思います。施工方法については、周辺への影響や施工の効率性、経済性など様々な面から検討のうえ確定していくことが必要と考えています。
――大和川線では非常に近接施工でした。延伸部は
仲 大和川線よりも少し離隔を確保できると思います。但し2本のシールドトンネルが並行するだけでなく、上下に並ぶ区間もあり、その間の移行区間もあるので、技術的難易度は高くなります。
――現状は
仲 5月に「淀川左岸線延伸部シールドトンネル概略設計業務」を契約し、概略設計を実施しています。受注者は、日本シビックコンサルタントです。