鋼桁疲労亀裂対策は約400径間が対象
ピーニングと局部当て板を基本に対策
――鋼桁の疲労き裂の対象は
谷口 活荷重比率が高くて、疲労等級強度が低い継手を想定していて、約400径間が対象です。
――それはどのような構造の箇所となりますか
谷口 長スパンになるほど死荷重が重くなりますので、活荷重の影響が小さくなります。橋梁によって違いますが、死荷重に対して活荷重の影響度合いが大きい橋梁のほうが疲労の影響が大きくなるので、活荷重比率の高いもので、疲労等級が低いものとなります。
――対策としては
谷口 疲労等級E、Gのレベルはピーニングを行い、H’は局部当て板を基本に考えています。今回の対象橋梁における補強対象継手は以下のとおりです。
E:荷重非伝達型十字溶接継手-非仕上げのすみ肉溶接継手
G:ガセット継手-面外ガセット-すみ肉溶接継手
H’:ガセット継手-面外ガセット-すみ肉溶接継手(主板貫通)
――接合部が多いのでしょうか
谷口 そうです。
――工事はどのように実施していく予定でしょうか
谷口 疲労亀裂対策は工事規模としては小さいので、同じ場所で行う他工種の工事と組合せながら今後計画的に施工していく予定です。
鋼桁端部腐食はノージョイント化で対応
主桁下フランジ部の増し塗りや漏水部の補強塗りを実施
――鋼桁の端部腐食は
谷口 当社の設計基準(標準図)で構造物の細部を規定しており、現在は、桁端部の掛け違い部分は維持管理用に人が通れるマンホールを設置して作業空間、管理空間を確保しています。しかし、昭和54年以前はその規定がなく、管理空間が十分確保できず腐食している箇所があります。そのような箇所を対象に、鋼桁端部の改良を進めます。対象は300箇所となります。橋桁同士のつなぎ目となるジョイント部からの漏水が主たる原因になりますので、走行性の改善や騒音・振動の低減の目的も兼ねて、基本的にはノージョイント化を考えています。ノージョイント化が困難な箇所は、通常のジョイント補修を行い、漏水対策を行ったうえで、鋼桁端部の改良を行う予定です。
――ノージョイント化とジョイント補修の判断は
谷口 基本的にはまず主桁連結が可能か検討し、それができない場合は床版連結等のジョイントレスが可能か検討していきます。構造的にノージョイント化が困難となりますとジョイント補修を行うということになります。合わせて、腐食対策として、主桁下フランジ部の増し塗りや漏水部の補強塗りを実施しています。
桁連結の施工状況
床版連結の施工状況
――現在の進捗状況は
谷口 これから本格的に着手する段階です。
PC桁の上縁定着で鋼材腐食
約300径間で対策 外ケーブル補強が基本
――PC桁のひび割れとケーブルの腐食への対応は。とくにケーブルの腐食は大きな問題ですが
谷口 昭和60年以前の当社の設計基準では、ポステン桁のPC鋼材の端部定着を上縁定着も可としていましたので、一部のケーブルが上縁定着されています。上からの損傷で水が浸入して鋼材腐食が発生しています。約300径間を対象に対策を進めているところです。
――現在の進捗状況は
谷口 2019年3月末現在で約60径間が完了しています。
――補修方法は
谷口 グラウト充填不良には再充填を行い、主桁ではアウトケーブル補強 、間詰め部は鋼板補強 が基本となります。
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アウトケーブルの補強状況
鋼板補強
――間詰め部の鋼板補強は上からですか
谷口 下面からの施工となり、RC床版における鋼板補強のイメージです。
――アウトケーブル補強は対象の300径間すべてで行うのでしょうか
谷口 鋼材の損傷度合いに応じて、アウトケーブルのレベルは多少変えていきます。腐食等により鋼材の強度低下が認められる箇所はプレストレスを考慮した設計・施工を行い、損傷の進展していない箇所は予防保全的にアウトケーブルを設置していきます。
――ポステン桁のPCケーブルの損傷の確認方法は
谷口 明らかなケーブル損傷の疑いが認められる箇所は、微破壊調査(ドリル削孔)にてグラウトの充填状況、PC鋼材の腐食状況を確認しています。外観調査でケーブル損傷が確認されない箇所は、非破壊調査(インパクトエコー法など)でグラウトの充填状況を全数確認しています。充填不良が疑われる場合は、ケーブル損傷の懸念があるため、微破壊調査を実施しています。
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PCケーブルの損傷確認状況
――確認結果をアウトケーブルの設計にどのように反映しているのでしょうか
谷口 損傷を確認した場合は耐荷性能を照査して、ケーブルの断面減少など損傷程度に応じた設計を実施しています。
――現在はポリエチレンシースですが、昔は鋼管シースかと思いますが、腐食については
谷口 ケーブルを保護するためにグラウト充填を確実に実施することとしており、上面の床版にも高性能床版防水工を実施することから、鋼管シースの腐食の進行は問題ないと考えています。