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100m以上の長大・特殊橋は452橋に達する

2019新春インタビュー③ 西日本高速道路四国支社 長大特殊橋の耐震補強に着手

西日本高速道路
四国支社
保全サービス事業部長

熊野 賢二

公開日:2019.01.01

長寿命化修繕計画 2019年度の補修着手予定は2橋
 ジョイントの止水対策を進める

 ――橋梁の長寿命化計画に基づいた対策の進捗状況や具体的な損傷状況と補修補強内容について教えてください
 熊野 2017年度までに補修完了が2橋、補修着手済みが8橋、2019年度の補修着手予定が2橋です。損傷の大半がコンクリートのはく離、浮きで、対策は断面修復後に繊維シートで表面保護します。損傷箇所に漏水が確認される場合は桁端防水などの止水対策をあわせて実施しています。



桁端部の損傷例

 ――高知道などではかなり凍結防止剤を散布していて、将来的には塩害も考えなければならないと思います。桁端部はPCでは定着部がありますが、定着部付近に対する塩分浸透はありませんか。ある場合、NEXCO東日本では、塩分吸着剤入りのポリマーセメントモルタルを使用したり、シース内に防錆入りのグラウトを充填して補修していますが、四国支社ではPC端部の対策を行っていますか
 熊野 現在は、ジョイントの漏水防止、止水対策を進めています。幸いにPC定着部近傍の塩分浸透の影響など問題となるような損傷は確認していません。四国支社管内の凍結防止材散布量は年平均・km・車線当たりおおむね5tとなっています。高知道では同6tです。
 ――大規模更新、大規模修繕事業について、実績と今後の予定を教えてください
 熊野 管内では明神トンネルのみとなります。他の構造物等については、点検や詳細調査の結果を基に実施の判断をいたします。

明神トンネルで概略発注方式と入札前価格見積方式を採用
 発注額は全体で約10億円 施工延長は100m

 ――明神トンネルについて、発注の工夫、施工上の対策、新技術・新工法の採用などは
 熊野 発注は、概略発注方式と入札前価格見積方式を採用しました。ここで言う概略発注方式とは、当初発注時の積算にかかる受発注者相互の負担軽減を目的として、全体工事費に対する割合が小さい単価項目を、直接工事費に対する一律の割合で積算することを契約図書に明示して発注する方式です。
 ――発注額は
 熊野 舗装のやり直しや、電気ケーブル撤去等の付随工事も含め、約10億円です。


明神トンネルの大規模更新①

明神トンネルの大規模更新②

 ――施工量は
 熊野 施工延長は約100mですが、規制は3kmに及びます。工期は、2017年10月5日から2019年10月24日までの予定です。新技術・新工法の活用は現在考えていません。

ジョイント取替は今年度39箇所を予定
 21箇所でMMジョイントを採用

 ――支承、ジョイントの取替は
 熊野 支承取替えとノージョイント化の対象はありません。ジョイント取替えは2018年度に管内全体で39箇所を予定しています。内訳は荷重支持から荷重支持が17箇所、埋設から埋設が21箇所、埋設から荷重支持が1箇所。
 ――埋設ジョイントはNEXCO西日本ではMMジョイントとか、エンジ四国の長い遊間に対応する埋設ジョイント「サイレントジョイント」がありますが、採用している埋設ジョイントはどちらですか
 熊野 サイレントジョイントが1箇所、ほか21箇所はすべてMMジョイントです。


伸縮装置の交換例

 ――塩害、アル骨、ASRによる劣化の有無と損傷状況、その対策工法を教えてください
 熊野 塩害は凍結防止剤の散布によるものがほとんどです。ASRは発生していません。劣化状況ではジョイントの変状が多く、ジョイントからの漏水で桁端部や下部工などの部材の健全度に影響を及ぼしています。床版では、防水層が設置されていない箇所で不陸があったり、他の部材の健全性に影響を及ぼしていると考えています。対策工法については、鉄筋露出、腐食、浮き、はく離などのコンクリート部材の変状では断面修復、繊維シート、乾式止水剤の注入、樋の設置などがあります。壁高欄の目地からの水の侵入もあるので、そこの閉塞といった工法があげられます。
 ――壁高欄目地の閉塞はどのように
 熊野 モルタルや弾性の止水材を詰めることで対応しています。

床版防水設置率は約8割
 塗り替えは2橋約16,000㎡を施工

 ――床版防水の設置状況は把握していますか
 熊野 把握しています。床版防水の設置率は約8割です。


床版防水工の施工状況

 ――鋼橋塗替えの実績と予定は。耐候性鋼材の採用が多いので、その橋梁で錆による劣化や損傷が報告されている箇所はないかも含めて。また、PCBや鉛含有の塗膜に対する処理について
 熊野 2018年度の塗替え塗装工事は、松山自動車道東種川橋で面積10,000㎡、高知自動車道中谷橋で面積6,000㎡の2橋を実施しています。有害物質が含まれる際の塗膜処理は、湿潤化を行い実施しています。


塗膜の劣化例(松山道東種川橋)

塗膜の劣化例(高知道中谷橋)

湿潤化した後に乾式ブラストを施工
 耐候性鋼材の採用橋数は上下線別で52橋

 ――ブラストは。あるいははく離剤塗布後にブラストをかけるのか
 熊野 湿潤化処理した後の下地処理方法は乾式ブラストです。
 剥離作業時の安全衛生保護具は、契約上、電動ファン付きマスク、化学防護服、防護手袋、化学防護長靴の着用を定めています。また、作業環境測定を行い、作業員の健康被害防止に努めています。
 ――今年度の2橋にはPCB含有は
 熊野 含有されていませんでした。
 ――平成31年度の塗り替え予定は
 熊野 未定です。
 ――管内の耐候性鋼材の採用橋梁数は
 熊野 上下線別で52橋。ほとんどが高知道です。健全度は予防保全の段階(NEXCO基準で1~3、国でⅠ~Ⅱ)です。


耐候性鋼材を使用した橋梁例1(井手迫瑞樹撮影)

耐候性鋼材を使用した橋梁例2(井手迫瑞樹撮影)

 ――端部塗装は施していますか
 熊野 塗装しているところもあります。手当ては順次行っています。
 ――全面塗装ではないのですね
 熊野 全面塗装はしていません。
 ――耐候性鋼材は予防段階のうちに手当てをしておかないと、損傷が進むとブラストができなくなります。今後、塗装していくことは考えていませんか
 熊野 状況を見ながら検討します。

グラウンドアンカーの更新や排水機能の強化を実施へ
 棒状補強材の導入、水抜きボーリングの設置などを行う

 ――全国的に異常気象が続いていますが、道路に面する斜面や古いのり面、盛土をどのように補強・補修していくか。とくに盛土構造で川や沢に面しているところでは、水抜き孔を大きくしたり、コンクリートで覆うなどの対策をするところが増えてきている。管内で具体的な対策事例や計画があれば
 熊野 大規模更新・修繕の一環で、グラウンドアンカーの更新や排水機能の強化を実施していきます。具体的な箇所については、高速道路の本体構造の長期保全更新のあり方に関する技術検討委員会の報告書をもとに選定を行っている。グラウンドアンカーについては、特定更新で松山自動車道正円寺地区のり面補強工事を契約して実施中です。


正円寺地区の法面

 ――既設グラウンドアンカーの腐食による交換なのか、それとも新しく打つのか
 熊野 のり面の安定を目的として、棒状補強材の挿入(約260本)、水抜きボーリングの設置などを行います。また、既設アンカー頂部の飛出し防止対策工も併せて行います。
 ――愛媛県に取材しましたが、7月豪雨時は瀬戸内海に面している県北でかつてないほどの雨が降ったということです。年間降雨量が1,000~1,500mmだったが、今回1カ月ですごい雨が降って、かつて崩落したことがないところでも崩落が起きた、と話をされていました。今後、予期しない集中豪雨に対する対策で、例えばグラウンドアンカーの設置ペースを上げていくなどはありますか。また、NEXCOの新設では水抜き孔の設計を大きくする変更をしているケースもあります。今後の特定更新などで、今回の7月豪雨に対応できるような通水量の確保をするなどの設計変更は考えていますか
 熊野 特定更新などの事業のなかで排水機能強化は当然考えて実施していきます。設計変更を伴うかどうかは支社だけで判断できるものではありません。

Jシステムを用いてスクリーニングし変状箇所を絞り込む
 特殊高所技術も活用

 ――支社独自の新技術や新材料の活用は。例えば点検において特殊高所技術を採用している話なども聞きますが
 熊野 高速道路の点検から補修で業務の高度化、効率化、長期耐久化については、グループで高速道路のリスク低減や構造物診断の精度向上、限られた人材のなかでの最大限の生産性向上を資する技術開発を進めています。グループ会社の西日本高速道路エンジニアリング四国で開発した赤外線カメラを用いてコンクリートの健全状況を診断する「Jシステム」があります。近接目視や打音検査に先立ちスクリーニングを行うために使っているもので、これを使うことで変状想定箇所を絞り込み、打音検査の作業を軽減することができます。
 ――Jシステムは全支社で活用しているのですか
 熊野 支社内では全面的に採用しています。



特殊高所技術による点検例(立川橋)

 ――松山道でハイピアのところで特殊高所技術を採用していることも聞いているが
 熊野 橋梁点検車での点検が不可能な箇所については、特殊高所技術を使って点検をしています。
 ――ありがとうございました

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