道路構造物ジャーナルNET

トラス橋などの特殊・長大橋を多く抱える

NEXCO中日本八王子支社 中央道中心に長大構造物を補修補強

中日本高速道路
八王子支社
前 保全・サービス事業部長
(現 中日本ハイウェイ・メンテナンス中央㈱取締役経営企画部長)

井口 忠司

公開日:2018.08.21

複数橋を大規模発注へ
 鋼トラス橋では大月、八王子管内でグループ

 ――1橋ごとの発注ですか、それともIC間発注になりますか
 井口 IC間を全部ではないですが、ある程度のエリアのなかで複数橋を大規模発注していきます。とくに鋼トラス橋では大月保全管内と八王子保全管内のグループというイメージです。
 ――そうすると、ゼネコン発注が多くなる感じですか
 井口 方式は決まりましたが、どの橋種、工種で選ぶかは難しいところもあり、これから煮詰めていく必要があります。
 ――鋼橋ファブリケーターへの発注になるのか、鋼・PCのJVを基本にするのか、それともスーパーゼネコンに対する発注になるのかということで、各社のモチベーションも変わってきます
 井口 発注見通しは公表していますが、公告はこれからなので、詰めていきたいと考えています。
 ――支承の取替は
 井口 熊本地震を受け支承逸脱対策として、支承高の高い鋼製支承をレベル2地震動に対応できる免震支承へ取替える計画です。

並柳橋の教訓 段差構造の解消を検討
 横桁を用いて支承の高さを同じレベルにする

 ――並柳橋の教訓として考えていることは
 井口 かけ違い部で桁高の違うところは、段差構造を解消させる改良も考えています。
 ――具体的には
 井口 段差構造で問題なのは桁の高いほうが衝突して、パラペット部分が損傷し、桁の低い側が落橋するので、それを同じ高さにすることで解消しようというものです。桁高の低いほうの、パラペットを切り欠いた後に、横桁構造で支承の高さを同じレベルにする対策で検討しております。施工方法としては、桁を仮受けし、支承とセットで取替えてしまうものです。メタルであれば桁に継ぎ足し、コンクリートであればRC構造で打ちおろすイメージです。


かけ違い部では段差構造を解消する対策も

 ――上下は添接?
 井口 そうです。供用中の桁を受けてやらなければならないので、添接になります。NEXCOの耐震補強としても、段差構造の解消は高い優先順位となっています。
 ――ジョイントの交換は
 井口 点検により漏水が確認されているものを適宜取替や補修を行っていきます。

天竜川橋塗替えではIH工法、剥離剤、ブラストなどを併用
 耐候性鋼材 下フランジが損傷

 ――鋼橋の塗替え実績は
 井口 2017年度は天竜川橋(上り線)で約3,600㎡を実施しています。限られた予算のなかで、どのように回していくかもありますので計画を十分に策定する必要があります。今後は特定更新や耐震補強を行うときに、足場を設置するときにあわせてやっていきたいと思っています。
 ――今年度は
 井口 今年度は、調布ICランプ橋などで塗替え塗装を予定しております。
 ――PCB・鉛などの有害物質の処理については
 井口 関係機関と調整を図ったうえで、必要な対策を実施しています。
 ――塗膜剥離剤やエコクリーンブラスト、IH工法など何種類かやり方がありますが、具体的にどのような工法で行ってきましたか
 井口 天竜川橋については、IH工法を一部試行的に使用して、塗膜剥離剤との併用工法で、仕上げはブラストで行いました。
 ――耐候性鋼材については
 井口 長野道で1橋あります。凍結防止剤の散布による影響により安定錆とならなかったため、現在は桁の塗装を実施して対応しています。
 ――1橋は東海環状のように国から移管されたものですか
 井口 長野道なので、日本道路公団時代に1橋だけ試験的に建設したと思われます。長野道の塩尻北IC~松本IC間にある鎖川橋です。4径間の鈑桁で、約160mの橋長です。下フランジ上面が腐食しています。塩を含んだ水がまきあがった際、塩分が一番残り、積もる箇所です。端部も損傷しています。


鎖川橋

 ――塗装の対応状況は
 井口 桁端部の1パネルを塗装に変えています。支間中央はまだ経過観察としています。
 ――谷風で塩が舞うので、供給が阻止できないところがあります。耐候性鋼材は硬くて、ブラストがなかなか難しいですが、今後どのように対応していきますか
 井口 塗替え時に検討をした上で対応をしていく必要があると思います。
 ――炭素繊維で下フランジのみ巻いて、塗装をする方法もありますが
 井口 断面欠損があれば、そのような補強とセットで、塩の侵入を完全に防ぐ方法としては有効だと思います。

隣接地に影響のある盛土対策を優先的に実施
 今年度は事前検討を実施

 ――異常気象対策について。牧之原での盛土崩壊や平成28年台風10号水害など、最近では全国で盛土、切土、長大自然斜面の大規模崩落が起きています。今後、盛土、切土、のり面、斜面に対して、どのような対策をしていきますか
 井口 現在、辰野IC~伊北IC間では、盛土材料が劣化しやすい粘性土などであり、盛土高さ10m以上の集水地形において、隣接地に影響のある盛土を優先的に実施しています。具体的な対策としては、盛土内の水位を下げるために、浸透水排除対策として導水ボーリングや砕石縦排水などを実施予定としています。


 これは牧の原のことをふまえて、このような方針で行うというものだったので、対象はそれほどありませんが、辰野IC~伊北IC間も集水地だったので、排水対策を行っています。
 アンカーなどで補強しているのり面については、詳細点検及びリフトオフ試験の結果をふまえ、アンカーの増打ちなどを計画していきます。
 ――旧タイプのアンカーの取替ということですか
 井口 現状、のり面を抑えるのにアンカーなどを打っています。アンカーの緊張力がきちんと導入されているかというリフトオフ試験を現地で行って、緊張力が抜けている恐れがあるときには、新しいアンカーを増打ちする対策は今後出てくると思います。
 ――具体的に対策が必要な場所はありますか
 井口 今年度から詳細調査を行って、実際の対策箇所を検討していきます。まずは既存の点検データの整理を行って、地形条件などからリストアップして、実施の優先順位をリストアップするなどの事前検討を始めていきます。
 ――民地などからのもらい災害はありますか
 井口 昨年の6月の雨で民地から土砂が流れ込んだケースがありました。
 ――今後の対応は
 井口 部分的な復旧は行っています。長期的にはリニューアルのなかで恒久的な対策が必要かを検討していきます。
 ――NEXCO東日本の蓬平では、恒久的な切土対策ができないので、埋め立ててカルバート構造にする補強を行いますが、そのようなものは
 井口 
そこまでの検討には至っていません。ただ、中央道はかなり急峻なのり面が多いので、長期的に見た時にどのような対策が必要かは、さまざまな検討をしっかり行っていかなければならないと考えています。
 ――新技術は
 井口 
リニューアル工事による大規模規制で、Bluetoothを用いた所要時間提供システムの開発と本格導入を行っています。
 ――ありがとうございました

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