トラス橋などの特殊・長大橋を多く抱える
NEXCO中日本八王子支社 中央道中心に長大構造物を補修補強
中日本高速道路
八王子支社
前 保全・サービス事業部長
(現 中日本ハイウェイ・メンテナンス中央㈱取締役経営企画部長)
井口 忠司 氏
床版は凍結融解と塩害により複合劣化
桁端の腐食やコンクリートの剥落も生じている
――変状の特徴としては
井口 床版では、昼夜の寒暖差が大きいことから凍結融解によるコンクリートの劣化と塩害による鉄筋の腐食が複合して劣化を促進し、床版上面から損傷が進行して、路面のわだちぼれやポットホールが多発する事象が発生しています。また、桁端部のウェブ、フランジの腐食や、端部のコンクリートのはく落があります。桁端部においては当て板補強などを実施しています。
小早川橋の床版変状
――平出高架橋では、曲線で下り勾配になっているところで損傷が顕著でした。中央道では、横断、縦断といった勾配があるということですか
井口 管内は線形が厳しいところが多いですね。
平出高架橋遠景 曲線かつ下り勾配であることが分かる(井手迫瑞樹撮影)/床版下面の劣化状況
――桁端部では、大きな孔食がでていますか
井口 孔食もありますが、支承よりもパラペット寄りに損傷が出ています。当て板補強は大月で実施しています。
――東京支社では、排水管の中間部の継ぎ目部分に漏水が発生して、下フランジ上面が損傷するケースが出ていました。八王子支社ではそうした影響は出ていませんか
井口 排水枡の損傷はありますが、排水管の継ぎ目での損傷は比較的少ない状況です。やはり、ジョイント部からの漏水の影響が損傷原因です。
――ジョイント部からの漏水はどのように止水しますか
井口 非常に難しいですね。基本的には、非排水型への交換しかありません。それ以外にどんなことをやっても端部の漏水を止めることは難しいです。あとは、沓座に水が行かないような樋の設置や、沓座の水洗い清掃に取り組んでいます。
――排水樋はかなり設置しているのですか
井口 特にジョイント部はそのようなことをこまめにやっていくしかないと考えています。
大規模更新時の対応としては、床版取替時に排水枡の落とし口を二重管に変更して、しみ出し防止対策も実施しています。
床版取替え完了は4橋、施工中が1橋
長大切土を増吹き補橋
――大規模更新・大規模修繕事業の実績は
井口 床版取替が完了したのが3橋、床版取替施工中が2橋、覆工補強中が2チューブ(辰野トンネル)となっています。小早川橋他1橋(下り線)床版取替工事は、小早川橋(下り線)と弓振川橋(下り線)が対象で、施工は完了しています。小早川橋はプレキャストPC床版の割付を変更して、間詰め部以外の場所打ちコンクリートが発生しないように工夫しました。弓振川橋は、活荷重合成桁橋の床版取替であり、詳細設計で桁の補強方法を再度検討して、外ケーブルを併用することで、工事期間の短縮および補強部材を小さくすることができ、維持管理ができる空間を確保しました。
高速道路リニューアルプロジェクトの推進状況
渋滞対策では、Bluetoothを用いた所要時間提供システムを利用した所要時間の提供を実施しています。
辰野IC~伊北IC間改良工事では、天竜川橋(上り線)の床版取替を昨年度に完了しました。平出高架橋(上り線)も今年度の対面通行規制で施工し、床版取替を完了しました。辰野トンネルは覆工のはく落対策と、炭素繊維シートによる覆工補強を実施しました。辰野IC~伊北IC間では、のり面補強も実施中です。盛土部は水抜き対策、切土部はコンクリート吹付けの長大切土があり、鉄筋挿入をしてその上から増し吹きをすることで補強しています(吹付厚さ17cm)。総厚のうち表層部の7cmは繊維入りのコンクリート吹付けとしています。鋼繊維入りのコンクリート吹付けではのり面全体が錆で覆われてしまうので有機繊維入りとしています。
のり面補強も実施している
平出高架橋と辰野トンネルのリニューアル
平出高架橋撤去前床版下面損傷状況/新設床版の架設
天竜川橋撤去前床版下面/新設床版の架設
床版防水工の施工/辰野トンネルのリニューアル工事状況(井手迫瑞樹撮影)
――繊維入りコンクリートはどのようなものを用いていますか
井口 補強繊維はポリプロピレン製であるBCファイバーを使用しています。
調布ICランプ橋の床版取替工事は、渋滞対策と工事の安全性確保の観点から、仮橋を架設しランプの迂回を実施しました。OFFランプ(Gランプ)の床版取り替えを行った後、ランプ切替えを行い、ONランプ(Hランプ)の床版取り替えを行います。ここは床版延長が短い合成桁のため、場所打ちのPC床版とします。
――今後の予定は
井口 発注の工夫では、技術的に難易度の高い鋼トラス橋の耐震補強工事と床版取替工事を組み合わせた基本契約方式を採用する計画としています。
この方式では、先行契約工事の鋼トラス橋耐震補強工事のノウハウを複数の鋼トラス橋に適用しながら繰り返しの工事を行うことで、安全性や品質の向上、確実な事業進捗を図ることが可能と考えています。
都市部の重交通区間の橋梁では片側2車線を確保する車線シフト運用により、床版取替えの分割施工を行います。多摩川橋や府中高架橋は都市内で交通量が約8万台なので、対面による車線規制では、多大な渋滞が発生することから、工事中も上下2車線を確保する計画としています。
多摩川橋
――路肩の広さは
井口 八王子支社管内の中央道や長野道では路肩が狭いため、既存の幅員では二車線の確保が困難であることから、上下線の間に仮橋を設置することなどにより、スペースを有効活用する方法を検討しています。
仮橋を3~4年使って施工することもありうる
――予定期間は
井口 詳細設計を入れて、3、4年はかかると思います。
――仮橋を架ける期間は
井口 一緒で3、4年です。そのため本格的な仮橋となります。仮橋による交通迂回の期間が長期間になることを踏まえ、お客様の安全な通行を確保できる仮橋の構造を考えています。
平成30年度の大規模更新発注予定は、それ以外に小原第二橋(上り線)、中野橋(下り線)左ルート、祝橋(下り線)、岡谷JCT橋があります。
大規模修繕としては、日川橋(上下線)のセンターヒンジ部の連続化、岡谷高架橋(上下線)の外ケーブル補強、勝沼IC~甲府南ICののり面があります。
岡谷高架橋/岡谷JCT橋
岡谷高架橋で外ケーブル補強、日川橋でヒンジ部を連続化
勝沼IC~甲府南ICでのり面の排水機能向上図る
――岡谷高架橋の外ケーブル補強は以前行った弓振川橋みたいなものですか
井口 ディビダーク工法で建設した上下線一体の橋梁です。規模は大きいものですが、長期保全のため、外ケーブルによりPC箱桁橋を補強する予定です。
――日川橋のヒンジ部連続化は
井口 日川橋は(第三京浜野川橋のように)吊桁を入れているわけではなく、支間中央のゲレンク支承で支えあっていますが、ヒンジ部に水が入って劣化しているので、センターヒンジを連続化して、桁に外ケーブルを配置して補強します。センターヒンジの位置は支間中央です。
日川橋の支承損傷状況
――勝沼IC~甲府南ICののり面は
井口 甲府保全の管内で、切土・盛土のり面の排水機能向上となります。のり面の小段排水は、現在、約240mmのU字溝でそれがオーバーフローする事象があるために、通水断面を大きくして機能確保します。