鋼部材の疲労・防食 塩害対策も待ったなし
NEXCO中日本東京支社 大規模更新・長大橋耐震補強をいかにスムーズに進めるか
中日本高速道路株式会社
東京支社
保全・サービス事業部長
関谷 富彦 氏
塗膜剥離剤を用いた湿式剥離が基本
今年度は3万㎡を塗り替え
――塗装について。西湘バイパスでも循環式エコクリーンブラストを採用したり、別の橋では塗膜剥離剤を採用したりしていますね
関谷 工事前に既存塗装の塗替え履歴や塗膜成分の確認を行った上で、塗膜剥離剤を用いた湿式で行うことを基本としています。何回塗るかは過去の履歴に応じて変わってきます。有害物質が飛散しないようにシートを張ることや、作業員の安全確保を十分に行って施工しています。
有害物質対策を含む既設塗膜剥離の概要図
――鋼橋の塗替え面積は
関谷 昨年度は9橋で27,000㎡施工しました。今年度は3橋で30,000㎡を予定しています。これは大規模更新とあわせての数字です。
――塗膜剥離剤を使うことはわかりますが、NEXCOでは1種ケレンをやりたいという感じがあります。塗膜剥離剤を使用した後にブラストを行うのか、ブラストを行わずに2種ケレンで素地調整をして塗り替えるのか。例えば、西湘バイパスの横河の工区だと塗膜剥離剤を使わずに、エコクリーンブラストで施工しました。塗膜剥離剤を使う場合、塗装そのものは取れると思うが、素地調整をどう考えますか
関谷 塗膜剥離剤による塗膜除去では除錆やアンカーパターン等の素地調整が行えません。また、素地調整面積も大きいことから動力工具による2種素地調整でなくブラストによる1種素地調整を実施します。
過年度には小田原管内で循環式エコクリーンブラストも採用した
―――PCBは
関谷 塗膜の成分調査を実施しPCBを含有していれば、適切に処理を実施していきます。
14箇所ののり面で排水施設を改良
長期的な視野で排水設計を見直し
――土砂災害や風雨、地震で盛土、のり面に損傷がNEXCOだけでなく直轄でも起きていますが、それに対してどのような補強・補修をしていきますか。具体的な事例を示しつつ答えてください
関谷 東京支社管内では、14箇所ののり面で排水施設の改良を行っています。東名の静岡県内が多いです。排水施設とのり面のコンクリート吹きつけが老朽化している為、更新にあわせて、排水施設を改良しました。排水溝の断面を大きくすることや、跳水や溢水が発生している箇所に枡を設置するなど行い排水施設の改良を行いました。
――古いのり面の補修はアンカーの打ち直しで対応しますか
関谷 旧タイプのグラウンドアンカーの老朽化対策よりは、切土のり面の排水施設の修繕や盛土のり面補強の実施に向けた土質調査と補強設計を実施しています。また、点検しやすいのり面とするため、点検階段や扉、通路なども合わせて検討しております。
――民地からのもらい災害はありますか。自らが管理している切土は守れるが、民地からのものをどのように考えますか
関谷 側道を含めて点検をしているので、状況が大きく変われば、そこはすぐに確認するようにしています。民地の開発が急に進むと、水の流れが変わることもあります。どこまで道路会社が対応するかは難しい問題です。
ドローンや自走式点検装置などを積極活用
日本型ロードジッパーの開発も検討
――新技術やコスト縮減対策は
関谷 高速道路リニューアルプロジェクトである用宗高架橋の床板取替工事では、上り線が3車線断面あり広かったため片側2車線ずつ4車線を確保することができ、渋滞を発生させずに床板取替工事を実施することができました。そのため、渋滞発生に対する広報費用を削減することができました。
また、維持管理の分野では、点検困難箇所を見るためにドローンで代替できればと考えています。現在では、近接目視と同じくらいに見ることができると思います。
――災害復旧時の初期状況把握にドローンが非常に役に立っていますが、点検に関しては賛否両論があります。特に桁下に入ると制御を失ったりしますし、点検は目視だけでなく打音が必要です。このドローンは打音もできるタイプですか
関谷 打音はできません。あくまでもスクリーニングです。運用についてはGPSがなくても大丈夫なので、桁下で制御を失うことはなくなっています。
――斜張橋の斜材等の自走式点検装置も活用しておられますね
関谷 東京支社で所有して活用しています。斜材を把持しつつ自走する点検装置で、外観変状をビデオカメラにより撮影し、リアルタイムにモニタリングすることが可能です。また、過流探傷検査ができるセンサーを装備しており、内部の鋼材の状態も確認することができます。
――一般車両の突入を防止する新たな交通規制材並びに規制材設置装置の開発を模索していますね
関谷 日本型ロードジッパーシステムみたいなことができないか、と考えました。日本では今までニーズがありませんでしたが、アメリカでは毎日のように朝夕でリバースレーン運用をしています。更新事業をこれから12年間行っていく中で、防護柵を移動することは多くなってきます。そのため、日本型のロードジッパーを開発するために、共同研究を呼びかけて、3社ほどと共同研究を進めています。防護柵のメーカー2社と、産業機械メーカー1社です。
――付言して
関谷 これから保全部門の橋梁構造物の仕事は量として増えていく一方なので、より良いものをより短期間で仕上げられるような工事を進めていきたいと考えています。我々も努力させていただきますので、業界のみなさんも一緒に考えていただいて、新技術、新工法を提案していただけるような環境づくりをしていきたいと思います。
――発注は大型化しますか
関谷 大型化して場所が増えると、業界のみなさんからあまり評判がよくないと聞いています。場合によっては大型化も必要だと思いますが、今後の検討課題です。常に適正な工事規模、ロットを模索していきます。
――施工技術競争型総合評価方式も採用していますね
関谷 リニューアル工事は基本契約方式を使っています。あわせて施工技術競争型総合評価方式で価格も評価するが、技術力の評価も加えるものです。100%を超えても契約できる仕組みです。
基本契約方式のイメージ
施工技術競争型総合評価方式のイメージ
――ありがとうございました
(2018年7月31日掲載)