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沖縄自動車道北部区間 現在は湖辺底橋と福地川橋

NEXCO西日本 沖縄高速道路事務所 大規模更新・大規模修繕事業が、年1、2橋のペースで進む

西日本高速道路
九州支社
沖縄高速道路事務所
所長

工藤 紀行

公開日:2018.03.26

許田高架橋で50支承線を取替
 ジョイント取替は二重止水構造を採用

 ――支承・ジョイントの取替えは
 工藤 平成29年度は竣工済みの許田高架橋の支承改良工事において、約50支承線で取替を行いました。防錆処理については、アルミニウム・マグネシウム合金溶射を実施しています。ジョイントの取り換えは、南部区間の南風原高架橋において3箇所で実施しています。ジョイント取替は二重止水構造を採用しています。平成30年度は支承、ジョイントとも取替予定はなく、それ以降における補修箇所を選定中です。


許田高架橋で約50支承線を取替(井手迫瑞樹撮影)

 ――塩害やアルカリ骨材反応は
 工藤 塩害は、北部区間の損傷状況を見ますと内在塩分によるコンクリート構造物の損傷および飛来塩分による鋼構造物の腐食が見られます。IBG床版のハンチ部分や雨水が進入する床版上面のポットホールが生じている箇所などで損傷が顕著です。下部工の損傷はそれほど生じていません。
 南部区間は、建設時に塩害対策を実施しているので塩害による顕著な損傷はほとんど生じていません。
 ――剥落防止対策の進捗状況と今年度の対策面積は
 工藤 国道を跨ぐ箇所などを対象に対策を実施しています。平成29年度は、連続繊維シート工法による対策を約600㎡実施しており、これで対象面積は全て完了となります。今後は、北部区間などで損傷箇所が発見される都度、対策を実施することになります。

塗り替えはⅢ種ケレンで対応

 ――鋼橋の塗り替えは
 工藤 平成29年度は許田高架橋などで3橋20,186㎡をⅢ種ケレン程度の素地調整を行い塗り替えています。平成29年度は福地川橋と湖辺底橋の2橋18,617㎡を同様にⅢ種ケレン程度の素地調整を行い塗り替える予定です。


端部など一部にはTAPS溶射を施した

 ――PCBや鉛を有する塗膜の有無とある場合の対処は
 工藤 PCBは確認されていません。鉛を含有している塗装が確認された場合は、屋外作業として、作業対策方法を労働基準監督署に確認してから実施しており、除去した既存塗膜は特別管理産業廃棄物として処分します。具体的には湿潤化して塗膜剥離作業を行う、集塵機を配置する、安全ファン付き防塵マスクの着用義務付けなど、現在できる安全対策は全て行っています。
 ――許田高架橋ではIH(電磁誘導加熱)やブリストルブラスターも採用されていました。今後はブラストを利用したⅠ種ケレンをどのように行っていきますか
 工藤 許田高架橋ではⅢ種ケレンで対応しましたが、現状ではほかの橋梁もⅢ種ケレンでの対応を予定しています。
 ――高機能舗装への改良状況は
 工藤 73%に達しています。来年度の新規改良予定は未定です。

大規模更新(桁及び床版取替)は14橋の対策が完了
 グランドアンカー取替は1箇所完了

 ――大規模更新・大規模修繕事業の進捗状況は
 工藤 橋梁は石川IC~許田IC区間の北部区間において床版取替を行っています。平成30年1月末の段階で14橋の対策が完了します。法面は那覇IC~石川IC間のグランドアンカーが対象です。旧タイプのアンカーを新タイプに変えるものです。PCアンカーに腐食なども生じている状況です。平成30年1月末の段階で1法面が完了しています。現在、2法面の工事を実施中です。


アンカーを旧タイプから新タイプへ

 ――NEXCO西日本では久留米管内において以前、法面の崩落を伴う事故がありました。そうした教訓を踏まえて湿潤多雨な沖縄において、対策の必要性や実際の対策について何かありましたら
 工藤 排水溝清掃や損傷への迅速な対策について注力しています。ただし、沖縄高速道路事務所においては、表面滑りによる路肩付近までの小崩落が多く、大きな崩落は幸い起きていない状況です。しかし、近年数多く発生する集中豪雨などにより法面崩壊を招く可能性もあり、注意が重要だと考えています。

福地川橋床版取替 構造上細心の注意が必要
 継手部にKK合理化継手を採用

 ――今年度行う福地川橋の床版取替について、施工上の難しさやそれへの対応を教えていただけましたら幸いです
 工藤 鋼トラス橋は、過去に米国のミネアポリスにおいて落橋事故が生じたこともあるようにリダンダンシーに乏しい橋梁形式と言われています。従って、まずはトラス桁の腐食調査をしっかりと行い、その上で床版取替前にトラス補修と補強工事を行いました。もう一つは床版の撤去および架設をする際の施工段階ごとにトラス部材の応力調査を行い、安全性を確認してから進めるよう指導しています。鈑桁と比べると、縦桁で床版を支持するトラス桁は、縦桁の剛性が低いということもありますので、特に架設クレーンの選定と配置に注意が必要であり、慎重な施工を求めています。


床版の撤去

新設床版パネルへの取替え

 また、床版剥離時に縦桁に損傷が起こる可能性がありますので、縦桁耐力を考慮したジャッキの最大荷重(剥離時にかけて良い最大荷重)を予め算定しておき、管理しながら施工するという配慮もきちんと行っています。
 床版支持桁の不当沈下による負荷曲げモーメントの検討もしっかりと事前に行っています。さらに鋼トラスの縦桁の方が鈑桁と比較して、上フランジ幅が狭いため、床版のずれ止めスタッドジベルの配置の検討も必要になっています。
 鋼トラス橋の足場においても、チェーンの吊り元の不足を補う足場計画の策定も必要です。
 ――管理すべき項目が沢山ありますね
 工藤 鋼トラス橋の床版取替はこんなにも細心の注意が必要である、と我々も身をもって体験している最中です。非常に難しく特殊な工事です。当社の内外からも多くの視察者が来訪されており、今後のテストケースともなる現場であるのだな、と感じています。
 ――床版取替後に新たな検査路の配置は行いますか
 工藤 現在の鋼製検査路をFRP製の検査路に取り換える予定です。
 ――FRP製を用いる場合紫外線劣化への対策はどのように考えていますか
 工藤 FRP検査路には、耐候性対策として膜厚25μmのフッ素樹脂を施すこと、およびFRPのマトリックス樹脂や繊維の劣化は力学性能に大きな影響を与えないことから、耐久性の問題はないと考えています。
 ――新技術およびコスト縮減策について
 工藤 新技術については、福地川橋の床版取替において「KK合理化継手」を採用しています。もう一つが、どちらかというと鋼橋桁端部の劣化対策を考慮して金属溶射(TAPS)を実施しています。また同様に伸縮装置の非排水化はもちろん、コンクリート橋の桁端部に防水塗装を施しています。


KK合理化継手

 ――ありがとうございました
(2018年3月26日掲載)

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