コンクリート管理基準を見直し
立ち合いプロセス検査を簡略化
――次にコンクリート施工管理要領について主要変更点を教えてください
広瀬 現状の技術水準を踏まえたコンクリート施工管理基準の見直しを図っています。
プラント検査や各種試験の立会によるプロセス検査を簡略化し、非破壊検査手法などを取り入れることで品質が維持できると判断し、検査項目・立会頻度の合理化(省略)を実施したものです。
まず3配合(A・B・C配合)の試し練りを実施する条件を明確にしました。計画配合決定のための試し練りについてB配合のみで性状確認・強度試験を行えばよい要件を2点示しました。1点目はNEXCOへの出荷実績のある同一配合を計画配合としてよい、2点目はRC構造物について①JISマーク表示認証工場の既存の配合で出荷実績があること、②施工数量と同等または1,000㎥以上の実績があること、③実績を有する場合の単位水量が165kg/㎥以下であることを満たす実績配合があれば、PC構造物を除き計画配合として認める、というものです。この2点に該当しなければ3配合の試し練りを実施する必要がありますが、約8割の試し練りを削減できると見込んでいます。
次にフレッシュコンクリートの検査頻度見直しです。
フレッシュコンクリートの検査頻度見直し(写真・書類管理で代替)
監督立会いの省略、レディーミクストコンクリート納入書の受注者保管を規定しました。従来はスランプJIS A 1101の試験頻度について最初の5台+50㎥毎としていましたが、これを最初の1台+50㎥毎と省略しました。その代りにレディーミクストコンクリート納入書を運搬車毎に保管するよう規定しました。
最後に7日強度管理の省略・立会省略です。
7日管理強度の省略・立ち合い省略
硬化コンクリートの強度管理について7日強度を省略し、28日強度も監督員が立ち会うことは省略し、書類(写真含む)の提出による確認だけで済ますことにしました。実際において7日強度が出ていない現場はありませんから。
コンクリートのスランプ値を緩和
巻き立て補強コンクリートは28日強度を24から30N/㎟へ変更
――コンクリート種別の一部見直しについて
広瀬 維持管理の現場に対応した管理基準の見直しです。地覆壁高欄とプレキャストPC床版の間詰めコンクリートのスランプ値を従来の8cm±2.5cmから12cm±2.5cmに変更し、流動性を高めた上で品質も確保できる数値としました。一方、RC巻き立てコンクリートで既設の補強コンクリート表面にひび割れなどが生じていることを鑑みて28日強度を24N/㎟から30N/㎟に変え、加えて水セメント比を50%以下にすることを求めました。しかし耐震補強コンクリートの設計強度は既設コンクリート強度同様24N/㎟しか期待せず設計に強度向上分は反映しません。あくまで水量を減らして(RC巻立補強コンクリートの)ひび割れを抑止する対策として考えています。
コンクリート種別の一部見直し
エポキシ樹脂塗装鉄筋 鉄線もビニル被覆求める
損傷時の補修方法も明記
――エポキシ樹脂塗装鉄筋の品質基準の追加について
広瀬 既設床版や壁高欄の取替の際や、塩害・凍結防止剤多量散布地域の予防保全対策として適用例が多くなっている同鉄筋について品質基準を追加しました。
まずは土木学会基準JSCE E 102 エポキシ樹脂塗装鉄筋の品質規格を満足した材料であることを前提としました。また、施工の際に鉄筋の輸送や結束の際に用いる鉄線についてビニル被覆などの処置を施し、鉄筋のエポキシ樹脂被覆を傷つけないようにすることも求めています。鉄筋の保管方法についても引きずって運ぶなど傷つけるようなことをしないような取扱いへの配慮や直射日光による紫外線劣化を招かないような貯蔵方法などを求めています。万が一損傷した場合には、JSCE E 105エポキシ樹脂塗装鉄筋補修用塗料の品質規格を満足する補修方法で対応するよう明記しています。
エポキシ樹脂塗装鉄筋の使用例
反発速度比を用いるコンクリート圧縮強度検査機を導入
打撃時の角度補正が不要
――コンクリートの非破壊検査方法については
広瀬 コンクリートの圧縮強度を測るための新たな基準類の適用や、新たな機器の導入を行っています。
新しい非破壊検査機器の導入
橋脚や高欄などRC構造物のコンクリート強度の測定方法は、土木学会標準JSCE G 504-2013 硬化コンクリートのテストハンマー強度の試験方法(案)を従前から標準としています。計測箇所は監督員が指示した箇所としています。計測機器は従来、反発度を測定するものを使用していましたが、打撃角度の角度補正を必要としました。今回新たに導入するコンクリートハンマー(「シルバーシュミット」)は反発速度比を用いるもので、打撃時による角度補正が不要であり簡易かつ正確に測定することができます。また、反発度を測定するものに比べて高強度のコンクリートにも対応でき、コスト的には従来と変わりません。
――機械式鉄筋定着の導入については
広瀬 鋭角フックや直角フックを有する中間帯鉄筋やせん断補強金に関しては配筋時の施工性の悪さが指摘されており、TヘッドバーやVSLなど機械式鉄筋定着工法の施工例が増加しています。今回は国交省が進めるi-constructionの生産性向上の一環として、これを取り入れたものです。
土木学会「鉄筋定着・継手指針」を満足したものであることはもちろん、性能に関して公的認証機関による建設技術審査証明を受けたものでなければならないことを記しています。
機械式鉄筋定着の導入