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耐候性鋼材橋の補修、塗装も検討

NEXCO西日本四国支社 桁端部からの漏水対策が課題

西日本高速道路株式会社 四国支社
保全サービス事業部長

河野 英一

公開日:2016.06.21

風通しが悪く湿気が溜まりやすい耐候性橋梁で損傷
 3種ケレンで塗替えサイクル頻度を上げることで対応検討

 ――高知道で採用した耐候性鋼材橋について状況は
 河野 追跡調査を行っており、全体的には、ゆっくりと保護性錆が形成されているという調査結果となっています。ただし、風通しが悪い、或いは、環境的に湿気が溜まり易い橋梁の桁端部において、局所的に悪性錆が生じているところもございます。これについては、コストパフォーマンスを追求しつつ適切な部分塗装対策を、グループ会社の西日本高速道路エンジニアリング四国と共同開発し、試験施工中です。


耐候性鋼材橋の桁端部の悪性錆の状況

 ――耐候性鋼材の悪性錆対策は、ブラストも通常よりも割高になる傾向であり、さらに塗装をどうするかという課題もありますが
 河野 10年サイクルで塗り替えていくか、もっと耐久性の高い塗装を採用するか。ケレンに関しては、1種は手間がかかるため、3種で塗替えサイクルの頻度を上げることで対応するなど種々検討中です。いずれにしても、悪性錆が生じている箇所はきちんとケレンした上で、塗装し、できるだけコストパフォーマンスよく管理できないものか、模索しています。

検査路増設の必要性も検討
 上縁定着部はPC鋼材などの健全性を調査

 ――耐候性鋼材橋は、トンネルとトンネルの間の谷にある橋梁で、一度下に落ちた凍結防止剤が谷風にあおられて再び舞い上げられ、既設桁に付着するというケースもあったように聞きます。桁端部以外に損傷は生じていませんか
 河野 今までのところ、大きな腐食による損傷は生じていません。検査路が設置されていない桁間も、5年に1回、大型アームを有する橋梁点検車で桁下を管理しています。今後は点検頻度の増加を念頭に、検査路の増設の必要性も含めて検討していく方針です。


橋梁点検車による点検

 ――桁や床版の補強は
 河野 交通量がそれほど多くないこと、供用年次が他支社より新しいこともあり、桁の補強や床版取替等の大規模な損傷は、現時点で四国支社管内ではありません。ただし、PC鋼材を床版上縁で定着している橋梁(例えば金生川橋(上下線、橋長362㍍))等については桁やPC鋼材の健全性を調査し、損傷があれば、外ケーブル補強を行うなど、しっかり対応していきます。
 ――こうした橋梁は床版防水工をかけていましたか
 河野 当初は密粒アスファルトで施工しており防水工をかけていませんでした。舗装の損傷が生じたため、高機能舗装に打ち替えた際に、現行でいうグレードⅠ(GⅠ)の床版防水を施工しました。

4車線区間はGⅡ 暫定2車線区間はGⅠ
 グレードⅡsの開発を強く望む

 ――床版防水工の設置状況は
 河野 基本的に舗装の打ち替えに合わせて床版防水工を施工していく予定です。4車線区間につきましては、四国支社管内は、比較的交通量も少なく、昼夜連続規制ができますのでグレードⅡ(GⅡ、高性能床版防水)を施工しております。一方、暫定2車線区間につきましては夜間通行止めの中で舗装の打ち替えを実施するため、時間的制約もあり、GⅠでの施工を行っています。GⅡを施工したいのはもちろんなのですが、利用者の負担も考慮すると現状では難しい状況です。そのためより短期間で高性能床版防水が施工できるグレードⅡsの開発が強く望まれます。


GⅡ 床版防水工の施工状況

 ――床版防水工の現在の敷設率および昨年度の実績と今年度計画は
 河野 敷設率は2015年度末で全体橋梁面積比75%を完了しています。グレード別内訳はGⅠが70%、GⅡが5%です。
15年度は、約1万平方㍍の床版防水工を実施しました。16年度は22,000平方㍍の施工を計画しています。内訳はGⅠが14,000平方㍍、GⅡが8,000平方㍍です。

MMジョイントやサイレントジョイントを採用

 ――伸縮装置取り換えの2015年実績と16年度の予定は
 河野 15年度は11箇所で交換しました。16年度は21箇所の交換を計画しています。基本的には非排水化と走行性の改善をしていこうということで、アスファルト重合体を用いた埋設ジョイント(MMジョイント)をできるだけ採用しています。また、通常の埋設ジョイントが適用できない伸縮量(30㍉~100㍉程度)がある個所でも同様の効果を得られる「サイレントジョイント」を高松道の4車線区間(高松西IC~善通寺IC間)に位置している橋梁4箇所で試験施工を実施しています。


荷重支持型ゴムジョイントの損傷状況/サイレントジョイント 構造図

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