西日本高速道路四国支社は四国地方の5路線474㌔を管理している。暫定2車線の道路は263㌔と過半を占め、保全の際の規制に工夫が必要だ。また、高知自動車道などでは、耐候性鋼材を用いた鋼橋を採用しているが、凍結防止材などの影響から損傷が少なからず生じている。また、桁端部からの漏水による損傷も散見される。こうした保全上の課題について、どのように対処しているのか、河野英一保全サービス事業部長に聞いた。(井手迫瑞樹)
5路線574㌔を管理、暫定2車線が過半を占める
平均供用年数は19年
――管内の概要から
河野部長 四国4県の5路線、約474㌔を管理しています。大きな特徴としては、暫定2車線の道路が263㌔(55%)に及んでいるということです。
構造物比率は474㌔のうち約4割で、橋梁(約101㌔)、トンネル(約85㌔)となっています。供用後30年以上経過している区間が、1区間、11㌔(全体延長比2.3%)です。また、供用後20年以上30年未満の区間が44%を占めています。他支社に比べて四国支社管内は比較的若い路線であり、平均供用年も19年ほどですが、10年後には同時期に整備された多くの区間が供用後30年を越えることとなります。
橋梁種別はRC45㌔、鋼45㌔、PCが66㌔という構成比になっています。トンネルの工法種別はNATMがほとんどを占めます。500㍍ほど在来工法(高知道の津家、堂々谷、桧生、馬瀬、繁藤、平山トンネルの一部)がありますが、これは在来工法からNATMへの過渡期に施工されたものです。
落橋防止装置は発注計画、施工内容の見直し図
溶接不良は2橋を調査
――耐震補強の進捗状況は
河野 昭和55年道路橋示方書より古い設計の一般橋の耐震補強については、平成19年度に完了しています。特殊橋梁につきましては、S55道示より古いものは無く、四国支社管内では、「さぬき府中湖橋」(2径間連続鋼床版斜張橋、橋長196.7㍍)が、H8道示より前の設計の斜張橋ということで、唯一、耐震補強を完了しています。具体的には、主塔内部への補強リブの設置、支承の追加(8基)、支承跳ね上り防止装置および落橋防止装置の設置などによる補強です。
さぬき府中湖橋(左)/同橋の跳ね上がり防止装置(右)
同橋の支承追加(右)および落橋防止装置の設置状況(左)
――落橋防止対策の状況
河野 落橋防止対策として、最も有効な対策方法である、桁かかり長の確保を優先的に行っており、これについても四国支社管内では平成19年度までに完了しています。
落橋防止装置の設置は、試行的にRC橋及びPC橋を対象に、平成27年度に1工事(対象橋26橋)を計画しておりましたが、結果的に入札不調となり、現在、発注計画、施工内容等の見直しを行っています。対策方法の一例としては桁と下部工をPCケーブルでつなげる方式を考えています。
――落橋防止装置の溶接不良に関しては
河野 10年以内に施工した2橋について調査を実施しております。
桁端部からの漏水が局所的な損傷を惹起
部分補修や予防保全対策に取り組む
――上部工の保全についてですが、損傷状況と補修補強の進捗状況についてお答えください
河野 コンクリート橋のASRなどについては、今のところ四国支社管内では、問題となるようなものは確認されていません。劣化損傷としては、ジョイントからの漏水部分が課題と考えています。高知道などでは、冬季に散布する凍結防止剤を含んだ水がジョイントから桁や下部工に回ることによって、上部工の桁端部や張出床版部、下部工に局所的な塩害や鋼材腐食を発生させています。
対策方法としては、機能が低下したジョイントの取替、桁端部や下部工の部分補修を進めるとともに、劣化を進行させないように、ジョイントの漏水防止や桁端部の洗浄など予防保全対策にも取り組んでいきます。
桁端部の損傷例
漏水による桁端張り出し床版の損傷例
受け樋等も設置
桁の水洗浄をこまめに
――ジョイントの止水対策についてフェールセーフの面から取り組んでいることはありませんか
河野 ジョイント止水部の機能回復や、受け樋等の設置による漏水対策に取り組んで参ります。
――桁端部の部分補修について、現場においては遊間が少なく施工が難しい個所などもありますが、どのように考えておられるのでしょうか。また桁端部塗装など予防保全対策は
河野 桁端部への予防保全的な塗装は手を入れにくいということもあって難しいと考えます。できるだけ、こまめに桁の水洗浄を行うことで取り組んでいきたいと考えています。
――鋼橋については
河野 主桁本体が腐食や疲労により損傷するような、著しい損傷はありません。伸縮装置からの部分的な漏水や、床版の打継ぎ目からの漏水によって、局所的に腐食しているケースはありますが、部分塗装等で対応しています。