延長比の構造物は26%を占める 橋梁は30年超が約5割
NEXCO西日本北九州高速 関門橋を10年間かけてリフレッシュ
西日本高速道路株式会社
九州支社
北九州高速道路事務所長
下登 新一 氏
NEXCO西日本北九州高速道路事務所は関門橋、関門トンネルをはじめ九州道、東九州道など約130㌔弱の高速道路・一般有料道路を管理している。交通量は九州道の6万台を超えており、損傷原因として疲労や塩害が挙げられる。特に供用から40年以上が経過している関門橋は平成23年度よりリフレッシュ工事が行われている。その関門橋の話題を中心に管内の構造物保全事業について下登新一所長に聞いた(井手迫瑞樹)
構造物は26%を占める
橋梁が16.2㌔、トンネルが17.5㌔
――事務所管内の地勢的、気候的特徴から
下登所長 関門自動車道と九州自動車道の一部(下関IC~福岡IC間、77.7㌔)、東九州道の北九州JCT~中津IC間(36.2㌔)、中国自動車道の一部(小月IC~下関IC間、0.5㌔)、一般有料道路の椎田道路(10.3㌔)、関門トンネル(3.9㌔)を所管しています。断面交通量としては、古賀IC~福岡IC間の65,000台/日を筆頭に、八幡ICまでは6万台で推移し、八幡から東が少し落ちて北九州JCTまでは4万台前後となっています。
関門橋と関門トンネルの断面交通量は合わせて7万台ほどとなっています。東九州道は北九州JCT~苅田北九州空港IC間が13,000台/日、苅田北九州空港IC~行橋IC間が5,600台/日となっています。現在、椎田南~豊前間約7㌔が工事中であり、これが完成すれば宮崎までの東九州道が全通することになります。
――現在の管内橋梁・トンネルの内訳は
下登 管内総延長は128.6㌔ありそのうち橋梁が16.2㌔、土工が94.9㌔、トンネルが17.5㌔となっています。構造物は26%を占めます。
橋種別では鋼橋が5.8㌔、PC橋が3.9㌔、RC橋が6.5㌔となっています。
関門橋(下関IC~門司港IC、供用後42年)、福岡IC~古賀IC間(40年)を筆頭に管内では30年を超えた橋梁の割合が約5割の84橋に達しています。10年後には管内全体の3/4の橋梁が30年を経過しますので適切な保全の必要性がますます高まっていきます。
桁端でひび割れや腐食
漏水が原因、沓座周辺にも腐食
――点検を進めてみて管内各路線の大まかな劣化の傾向について教えてください
下登 劣化が出ているのは九州道、中国道、関門道、椎田道路で、桁端部の漏水による劣化がほとんどです。RCホロ―桁の端部または張り出し部から水が伝ってその周囲2㍍位の範囲で鉄筋がさび、コンクリートにひび割れが出ているところがあります。鋼桁端部はさび、腐食、一部断面欠損が生じているほか、沓座周辺にも腐食が生じています。
――耐震補強の実施状況は
下登 橋脚の耐震補強については既に3プロ仕様で完了しています。
上部工の落橋防止対策については、大規模更新・大規模修繕事業に合わせて対策を進めていこうと考えています。
――上部工の補修補強で過去3年の実績および今後の予定は
下登 過去3年では実績はありません。ただし床版については舗装を剥いでみないと分からないという側面があります。秋に終わった工事ですが、門司ICの黒川方面のランプ橋では、床版上から叩いて調査した結果、少なくない数の補修(床版上面の断面修復)が必要になりました。同箇所については床版を補修した上で床版防水(GⅡ)を施工しています。
――NEXCOでも古い橋梁は床版に勾配がほとんど付いておらず滞水により損傷しているケースもありますが管内にそうした箇所はありますか
下登 舗装上に水が溜まっているというケースは見受けられません。床版上は剥いでみないと分かりませんが……。細部構造については桁端部の勾配が低い所に排水枡が付いていないケースもあり、損傷の要因になっていると考えられます。
――支承取替やジョイントの取り替え、ノージョイント化は
下登 支承取替は関門橋リフレッシュに伴い今年度(平成27年度)に416基を施工中です(線支承からBP-B支承に交換)。ジョイントの取り替えは吉田橋、木屋瀬橋、倉久川橋(いずれも上り線)と麻生橋(上下線)の車線全幅で劣化した埋設ジョイントを荷重支持型の非排水性鋼製ジョイントに取り替えます。ノージョイント化の施工及び計画はありません。
――ジョイントの非排水については受け樋などを用いて
下登 設置できる箇所については検討していきたいと考えていますが、遊間の狭い所が多く、なかなか設置は難しいと考えています。
――塩害やASRにより損傷した構造物はありませんか
下登 九州道や関門道では疲労や塩害の複合により床版や伸縮装置、支承部に劣化が生じています。管内で発生している橋梁上部工の損傷要因は、雨水および凍結防止剤散布による塩分などの浸透に起因するものであり、床版の損傷は、交通量の増加や車両の大型化による疲労、凍結防止剤に起因するものと考えています。ASRに関しては該当する構造物はありません。
――コンクリート片剥落防止工については
下登 点検の結果、損傷ランクA2以上が発見された箇所を優先して対策を適宜実施しています。今年度は点検も含めて鉄道や主要な道路など第三者被害が想定される箇所を重点的に実施する予定です。対策工法としては連続繊維シート工法(スマートメッシュ工法)およびネット工法を採用しています(約15千平方㍍)。