道路構造物ジャーナルNET

交通量多い個所へのGⅡs代替的な適用図る

NEXCO総研 コンクリート床版の高性能防水相当にグースアスファルト基層

株式会社高速道路総合技術研究所
(NEXCO総研)
道路研究部 舗装研究室長

高橋 茂樹

公開日:2015.12.16

舗装はぎ取り~打ち替え舗装完成までの施工時間を4分の3に短縮
 下地処理と床版防水工の施工時間短縮で実現

 ――施工はどのように行うのですか
 高橋 先ほどお話ししましたとおり、GⅡ相当の性能を有しながら、既設床版上の舗装(および既設防水層)はぎ取りから打ち替え舗装の完成までの施工時間を3/4に短縮できるのが当工法の特徴です。施工は従来のグースと同様の機械(製造工程:一般的なアスファルトプラント、運搬:アスファルトクッカー車、グースアスファルトフィニッシャ)を用いることができます。


(左、中)アスファルトクッカー車/(右)グースアスファルトフィニッシャ

 ――工種としては舗装はぎ取り、下地処理、床版防水、舗装の基層(レベリング層)、養生、表層とありますが、これのどこを短縮できるのでしょうか
 高橋 下地処理と床版防水工です。新工法もGⅡ同様、床版の下地はショットブラストで綺麗に研掃する必要があります。しかし、他の高性能床版防水とここが大きく異なるのですが、下地に少々の不陸があっても追従できなおかつ基層上面を平滑にすることができます。つまり下地に沿って施工表面に凹凸な形状が出ることがありません。グースアスファルトは所定の位置に流し込み、敷き均すだけで表面をレベルに保つことができます。締固めも必要ありません。また、ショットブラストの投射は1回だけで良く(GⅡは2回)、投射密度も50㌔/平方㍍(同100~120㌔/平方㍍)で良いため、時間を約半分程度に短縮できます。さらに、床版防水層施工はまるまる省略できます。この結果、施工時間を3/4に短縮することを可能にしました。


(左)下地処理を簡素化できる/

端部のみGⅡを施工する必要あり

 ――構造の詳細は
 高橋 基層は3.5~4cm表層は4cmと舗装厚は変わりません。但し、端部防水工はグースアスファルトで代用できないため、端部のみGⅡを施工する必要があります。
また、床版下地とグースアスファルト層とは溶剤型プライマーで接着します。


床版下地とグースアスファルトは溶剤型プライマーで接着

 ――新工法はGⅡs(高性能床版防水において既設床版を考慮して1パーティー当たり4時間で300平方㍍の施工性能を要求している)の適用を意図したものと言えます。これができれば既設は全て新工法でやっていくと考えていいのですか
 高橋 新設に近い、大規模更新事業のような規制時間を大きくとれる案件(床版取替など)は基本的に従来のGⅡを使うことになると思います。新工法の対象は規制時間を取ることがままならない重交通路線や床版補修が比較的小規模な舗装(床版防水)打ち替え現場などと考えています。
 ――重交通路線の橋梁床版ほど、本当は床版防水の高性能化が必要であるのに規制時間が足りないという理由で、やむを得ず従来防水で施工するといったケースが散見されています。そうした状態を改善できるものと考えて良いのですか
 高橋 良いと思います。ただし、そうした現場ほど(床版上面コンクリートの)打ち替えは大規模になるため、ブリスタリングが起きやすくなる危険性も高まるため、新工法を施工でいるかどうかの見極めは重要です。部分補修程度であれば十分適用は可能であると考えています。

山陽動 垣の浦川橋で試験施工
 台数不足が制約要因 需要見込みを確定させることが必要

 ――来年度の設計要領および構造物施工管理要領に新工法はスペックインされるのですか
 高橋 そうなることを目指し、開発を進めています。新型グースは、室内試験を終了し、12月上旬にも山陽自動車道の垣の浦川橋で1,200平方㍍ほど試験施工を行い(断面交通量約3万台/日)、施工性や耐久性を確認していく予定です。ただし、適用にあたっては現在クッカー車やグースアスファルトフィニッシャの台数が少ないため、大規模に展開するにはこの点が現状制約となるでしょう。そのためにも規格や要求性能をしっかりと作り込み、需要見込みをある程度確定させることが必要です。それにはもう少し多様な条件下での試験施工を行ったほうが良いのではないかという意見もあります。

垣の浦川橋では約1,200平方㍍で試験施工を行った

 ――ありがとうございました

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