合材温度を80℃以上に保つ
防水工と舗装間の接着品質向上図る
――次に高性能床版防水に関しては技術的な変更はあるのでしょうか
広瀬 構造物施工管理要領において、床版防水工と舗装間の接着プライマー(熱可塑性樹脂)の性能を確実に発揮させるため、舗装基層部舗設時の合材温度を80℃以上(確認は敷き均し完了直後)に保つよう品質管理項目を追加しました。
――防水工への点接着を招いていた橋梁基層へのSMA(砕石マスチックアスファルト)からの転換は
広瀬 橋梁部の舗装基層にSMAを使うことはやめ、FB13 (密粒アスファルトに近い性状を有する合材)に転換しました。おっしゃる通りSMAは点接着を招く恐れがあるため、より粒径が細かい材料を使うことにしたものです。
SMAからFB13へ
――床版コンクリートの膜養生剤について東日本高速道路は5月28日に練り混ぜ型と浸透型について、床版防水工のプライマーとの相性から使用を事実上禁止しましたが、これは7月1日からの改定分にも反映されていますか
広瀬 反映しています。被膜系の養生剤のみに限定しました。大きな問題があったというほどではないのですが、やはり一部の現場で床版防水層のプライマーと床版コンクリートの間が相性の問題ではがれてしまうという現象がありました。被膜系は施工後にポリッシャーやライナックスで研掃できますが、練り混ぜ型や浸透型は成分の除去が困難です。また、一部では床版上面の仕上がり面がつるつるになってしまい、プライマーを弾いてしまうという事象がありました。よって事実上使用を禁止しました。
付け加えると、床版面はファブやゼネコンが施工し、舗装面は舗装専業が施工します。即ち施工者が変わってしまう部分に防水工はあります。そのため製品を限定することで、品質を向上させようとしたものです。
床版上面の断面修復材の規定を追加
凍結防止剤の影響を緩和する材料を開発中
――床版上面の断面修復材の規定追加について
広瀬 床版上面の断面修復は、交通荷重を受ける構造体としての機能回復が必要になるため、他の部位の断面修復とは求める性能が異なるべきですが、必要な基準の整備がなされていませんでした。
そのため、今次の改定で構造物施工管理要領に床版上面の断面修復の要求性能および性能照査方法(試験方法)を追加しました(下表)。
――床版上面以外の断面修復の性能照査試験の変更について
広瀬 従来の矩形断面による直接引張試験では、同条件下でも測定値にばらつきが出ることがあります。そのため、修復材とコンクリートとの付着性を適切に評価すべく、円形断面による直接引張試験方法に変更しました(JIS A6909をJSCE K 561に変更 )。ただし、耐アルカリ性、温冷繰り返し試験後の基盤の使用材料、厚さは、耐久性試験へ及ぼす影響を考えてJIS A6909のままにしています。
円形断面による直接引張試験方法
――凍結防止剤の影響を緩和する材料の研究について
広瀬 室内での促進試験を実施中です。現在のところ促進期間が70日間ですのであまり効果は出ておりません。さらに1年程度促進させる予定です。まず、凍結防止剤の浸透濃度を変えた床版を模擬した供試体に、鉄筋の腐食抑制効果のある薬剤を定期的に塗布し、自然電位を計測して経過を観察しているところです。この効果を確認した後に、舗装のすべり抵抗性など舗装に対する影響や、床版防水工への影響を室内試験で確認し、実橋でも試行したいと考えています。
金属溶射に関して性能確認試験方法を追加
――鋼部材の防食面では
広瀬 金属溶射を施工した箇所においても、鋼素地まで達する傷が存在した場合や素地調整および溶射の施工品質によっては期待した防食効果が得られない可能性があることがわかってきました。
そこで今回、構造物施工管理要領を改定し、採用環境に適した性能確認試験方法の実施および施工時の品質管理の重要性を追記しました。
――昨年の青木室長のインタビューでは粗面形成材の有無についても検討することを話されていましたが
広瀬 それについても検討を進めなくてはいけないと考えています。それもさることながら、様々な溶射工法の性能についても確認していきたいと考えています。
RC中空床版桁のはつり方法を検討
松島高架橋の知見や今後の施工実態を踏襲
――大規模更新においては桁の架け替えも重要な項目の1つですが、これについては
広瀬 RC中空床版のはつりおよび補修についての課題があります。
――具体的にどのような課題ですか
広瀬 大規模更新の中にもRC中空床版桁の補修は入っていますが、その構造上、取り替えは困難です。そのため、どこまではつり断面修復するか、ということです。
――その知見は阪和道の松島高架橋がありますが
広瀬 松島高架橋ではWJではつりましたが、時間がかかりすぎます。ですからそれに代わる、もしくはWJの技術を深化させたより速くはつれる手法を検討する必要があると考えます。
――阪和道の松島高架橋では、塩分総量規制前ということもあり洗浄が不十分な海砂を使用しており、それが劣化を促進していました。当時の松田哲夫・西日本高速道路関西支社調査役や宮里心一・金沢工業大学准教授(現・教授)などにより下からベントで支えた上で、上側のおよそ半断面をはつり、シラン系含浸材をマクロセル腐食抑制用の絶縁材料として塗布し、上側断面を打設するという手法を取りました。現在検討中の技術はこれに拠るものですか、それとも異なるものですか
広瀬 基本的に松島高架橋やこれから施工する橋梁における知見に拠ります。
――ありがとうございました
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