NEXCO総研は、今年度も7月1日付で設計要領および構造物施工管理要領とコンクリート施工管理要領の改訂を行った。橋梁分野では24年道示の耐震設計法への対応の積み残し(鋼管・コンクリート複合橋脚)、床版取替工法、床版防水の際の舗装敷設温度を80℃以上に保つことおよび橋梁部の舗装基層部をSMAからFB13に変更すること、床版上面の断面修復工法、PC鋼材の非破壊検査手段(広帯域超音波法、漏洩磁束法など)のスペックインなどが骨子という。広瀬剛橋梁研究室長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
先付けアンカーを標準化
あと施工アンカーは数年かけて性能を設定
――7月1日付の設計要領(第二集)橋梁建設編・橋梁保全編と構造物施工管理要領の橋梁部分とコンクリート施工管理要領の改訂について主な変更点を教えてください。まずは橋梁建設編から
広瀬室長 まず、アンカーは先付けアンカーを標準とする旨を追加しました。あと施工アンカーとりわけ接着系は、笹子トンネルの事故を受けて、使用条件や使用環境の影響を考慮し、様々な再評価が必要なためです。
例えばアンカーの周りにコンクリートのひび割れが生じた場合どうするのか、温度の影響(凍結融解や温度が接着樹脂に与える影響は)はどうなのか、それらは全て引張強度に影響してきますが、そうした事態に対する知見が未だ不十分と判断しました。
――どのように知見を増していきますか
広瀬 従来の静的引張試験(施工方向、母材強度、清掃程度などに考慮した)や衝撃荷重試験だけでなく、新たに長期持続引張荷重試験、繰返し引張荷重試験、ひび割れ影響試験、ひび割れ幅変動試験、凍結融解試験、温度影響試験、アルカリ性耐性試験、二酸化硫黄耐性試験といった評価試験を実施し、性能評価手法の確立を目指します。評価は数年かかると見ています。
――あと施工アンカーに対する知見は名古屋大学の中村光教授などが先行していますが、そうした学識経験者とのコラボはありますか
広瀬 正式なものではありませんが、土木学会やJCIなどで相互に情報交換を行っています。
鋼管・コンクリート複合橋脚は設計方法を再掲載
――H24道路橋示方書改定に伴う変更として昨年度に鋼管・コンクリート複合構造橋脚を設計要領第二集(橋梁建設編)から削除しました。今年度1年間かけて正負交番繰返し載荷実験を実施し、塑性ヒンジの発生メカニズムや損傷過程、破壊性状を把握した上で耐震性能の評価方法を確立し、設計要領に再掲載する方針としていましたが、今次の改定ではどのようになりましたか
広瀬 仰るとおり平成26年度に1年間かけて試験を行った結果を反映し、平成24年道示にも対応できると確認し、設計方法を再掲載しました。鋼管・コンクリート複合橋脚に特有の塑性率の値を少し見直すことによって今まで通りのやり方で耐震性能は評価できると確認しました。