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床版の更新が最大 98㌔5669億円

西日本高速道路の大規模更新・大規模修繕計画

西日本高速道路株式会社
前 保全サービス事業本部 保全サービス事業部長
(現九州支社長)

北田 正彦

公開日:2015.07.16

半割施工は避けたい
 やむを得ない場合は継目部を工夫

 ――しかし、区間によってはダブルネットワークが形成された後も相当の交通量が残る路線もあります
 北田 名神と中国道の一部、神戸~京都間では現在約8~11万台の1日交通量がありますが、新名神の交通容量を考えても、なお相当量の交通量が残ると想定されます。こうした路線に関しては、国土交通省や阪神高速道路など関係機関と協議しながら、さらに交通量をそうした事業者に移し、台数を減らした上で規制しつつ工事を行う必要があるでしょう。場合によっては、名神高速道路の集中工事でも行っているような料金調整なども検討する必要があるでしょう。

 ――中日本高速道路では、東名高速において床版取替えや高性能床版防水工などを施工する際に半割り施工することも考慮しているようです。西日本高速道路ではそうした箇所は出てきますか
 北田 基本的には半割り施工はしたくありません。縦目地の部分がどうしても弱点になりがちですから。とはいっても、交通量が多く供用経過年数が長い区間を中心に半割り施工が必要になってくる案件は出てくることは否めないでしょう。例えば片側3車線ずつを保ちながら、路肩を縮小して断面6車線を確保しながら半面ずつ割って床版防水するようなことも考えなくてはいけないでしょう。
 そうした際は、工事用防護柵をいかに簡易に設置できるかを追求するとともに、特に継目部分を中心に高い水密性を確保した場所打ちコンクリートの採用、高性能床版防水の確実な施工を行う必要があります。また、デュラブリッジの技術を継目部に応用するなど、当該個所を錆びないようにすることが重要です。
 ――継目部には高炉スラグ混入コンクリートなどを採用していかないのですか。沖縄道などで実績がありますが
 北田 沖縄道や京都縦貫道などでそうした実績があることは承知しています。しかし沖縄道では床版全体、京都縦貫道では下部工全体で使うなど大量に用いていました。継目だけにそうしたコンクリートを用いる場合、少量を練ってくれる工場を確保できるのかが課題です。

確実な防水工の施工のために時間確保に努める
 リスク対応能力を技術審査の一つに取りいれることも検討

 ――そうした施工、特に高性能床版防水工の施工には高い対応能力が必要です。NEXCO3社では短期施工可能な高性能床版防水の基準としてグレードⅡs(4時間で300平方㍍の施工能力を要求する)を規定していますが、未だにその基準で実現場施工できた事例はありません。即ちある程度余裕を持った施工時間を与える必要がありますが、その点をどのように考えますか
 北田 償還期間を延長してまで大規模更新・大規模修繕する以上、生半可な工事はできません。そのため必要な工期をいただけるよう広報で周知していきますが、一方でご利用される皆様にご迷惑がかからないよう早期施工する技術の開発も進める必要があります。
 仰るとおり、既設の床版防水工の施工は、舗装を除去してみないと本当の所が分かりません。場所によっては大きな不陸や前段の点検では見つからなかった損傷が出てくる可能性もあります。当社としても、そうした事態を予見してある程度余裕を持った工期を設定することに努めます。同時に施工者を決定するに当たって、発注時にリスク対応能力があるか否かを技術審査の一つとして取り入れることも必要であるかもしれません。また材料会社にはそうした各工程のリスクに対応し、高耐久な構造物を実現できる製品を求めていきたいと考えています。
 また、施工前に試験施工を行い、ある程度床版の状況を確かめてから本施工を行うなどより精度が高く、手戻りがないような施工ステップを考えていかなくてはいけないと思います。加えて、発注方法も考慮して設計変更や施工時の各種変更に対してどれだけフレキシブルに応じて金額的にも対応していくか、そうしたことも明らかにしていかないと受注していただく会社に対して魅力を感じられないと危機感を持っています。
 その意味では、ここ3年は試行錯誤しながら発注方法、技術革新などを行っていき、受発注者とも納得のいく普遍的な大規模更新・大規模修繕手法を模索する期間であると考えています。
 ――PCの上縁定着部の点検・補修について
 北田 点検・モニタリングについては、大規模更新・大規模修繕事業の一環として行っていきます。具体的な補修補強については、今後検討していく必要があります。
 ――活用している新技術は
 北田 鋼桁端部や支承の鋼部分、添接部やボルトを防食する手法としてAl-Mg溶射(TAPS工法)を積極的に採用しています。また、高性能床版防水を施工する前段としての研掃基準(粗さや不陸の精度)を良くするためにショットブラストやウォータージェットの精度を追求していく必要があると考えます。また、先述しましたようにデュラブリッジの要素技術を床版の継手部に使うなどの考慮も行っています。


TAPS溶射
 ――ありがとうございました

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