短時間異常降雨の増加に伴う崩壊リスクの高まりに対し、
粘性土、マサ土やシラスの盛土では水抜きボーリング等の排水対策が必要
旧基準アンカーは防食アンカーへ取替え
――土工部は
北田 近年の短時間異常降雨の増加による災害発生リスクの高まりとともに、3段以上の高盛土のり面は被災件数や、1件あたりの被災土量も多く、崩壊に対するリスクが高くなります。そこで、脆弱化し易い土質(粘性土、まさ土、やま砂、シラス等)について水抜きボーリングや砕石たて排水工などの対策を考えています。
また、既存のグラウンドアンカーのうち、1991年(H3)以前に施工された旧タイプアンカーは、鋼材の防食機能が不十分であるため、鋼材が破断する事象が顕在化しています。そこで、防食機能を有した新タイプアンカーによる再施工等による対策を考えています。
桁の更新が12㌔965億円
盛土・切土補修は13,820箇所2,463億円
――さて、大規模更新・大規模修繕のメニューについて、西日本高速道路の規模感を教えてください
北田 大規模更新事業は床版の更新が98㌔で5,669億円、桁の更新が12㌔で965億円です。大規模修繕事業は床版(高性能防水など)が111㌔で456億円、桁が37㌔で560億円となっています。また、盛土・切土の補修は13,820箇所で2,463億円、トンネルは46㌔です。
橋梁は、今年度大規模更新事業として待ったなしの床版の取替を8件(15橋、約26千㎡)を発注する予定です。内訳は中国道で6件(関西支社2件、中国支社4件)、沖縄道で2件です。桁架替えの発注予定はありません。大規模修繕事業では床版の高性能防水工を5件(59橋、3㌔、約30千㎡)発注する予定です。桁の補強予定はありません。
トンネルの大規模補修は1件で長崎道の日岳トンネル等で覆工コンクリートの補修を約20千㎡程度行います。
土工部の大規模補修は、沖縄道で1件、のり面補強(グラウンドアンカー約130本と排水機能向上のための盛土材置き換えを含んだ切盛土量約7,000立方㍍)を施工します。
――桁の取替えは今年度はやらないのですね
北田 RC中空床版橋を念頭にしています。中間支点の所に支保工を作って、それで(RC桁を撤去した上で)PC桁を架設しなければいけませんが、その工事の詳細を詰めなくてはいけないと考えています。そのため桁の架け替え着手には少し時間を要します。
「本質」は長耐久化
グレード下げは利用者が納得しない
――大規模更新・大規模修繕において、尤も困難な対策工の一つが床版関連だと思います。床版取替えや高性能床版防水工の施工には長時間かつ大規模な規制が必要になりますが、どのように考えていますか
北田 規制を連続的にできるよう詳細計画していくか、短時間施工が可能な技術を開発するか、解は2つに1つでしょう。高性能床版防水は新設の時ですら温度管理が厳しい中で施工しないとグレードⅡの品質は確保できません。また、(床版表面の)はつりをどのように仕上げるか、短時間で精度良く仕上げる技術開発が重要になってきます。
尤も、大規模更新・大規模修繕の本質は構造物をいかに長耐久化させるかでありますから、いかに規制が難しい個所といえども更新・補修のグレードを下げて施工するということはありえません。これは償還期間の延長をもって財源となす以上、利用者にも納得されないでしょう。
名神道や九州道など交通量が多いにもかかわらず、ダブルネットワークが未完成の路線については、その完成を待って、施工に着手するという判断も必要になるかもしれません。
高性能床版防水(イメージ写真)