床版増厚が再損傷した事例も
接着力不足による界面剥離やマクロセル腐食
――疲労による損傷は
北田 無いわけではありませんが、橋全体を取り換えなくてはいけないという個所は出てきていないと考えています。鋼床版など疲労による損傷がクリィティカルに供用性への影響を当たる個所については対応を終えている状況です。鋼橋ですと、一部床版架替をした御幸橋は供用年次が昭和44年と古く、少数主桁の合成桁でありなおかつRC床版が薄い(昭和39年道路橋示方書に基づいた設計)こともあり、疲労損傷が生じたと考えています。西名阪道には同時期に施工した床版が残っており、健全度について注視していかなくてならないと考えています。実際には床版を増厚することにより対応しています。
過去の桁架替え事例(沖縄道)
――しかし過去の床版増厚においては界面剥離やマクロセル腐食を引き起こして再損傷を生じている橋梁もありますね
北田 そうした床版については対応が必要です。層間剥離は、既設部分の研掃が不十分であったことや、現在のように界面に接着剤を塗っていなかったこと、床版防水も現在の基準でいうグレードⅠ止まりであったことから界面を剥離させ、摺磨作用により、上の増厚した床版を砂利化させていると考えられます。
床版の損傷状況
加えて一部の現場では、増し打ちしたコンクリートと母材コンクリート間の塩化物イオン量の差によりマクロセル腐食を生じせしめたことが、損傷を引き起こしたと考えています。阪和道の和歌山~阪南間では過去に松島高架橋付近でRC中空床版橋を半ばまでWJではつり、既設桁の界面にシラン系含浸材を塗布してマクロセル腐食電流を絶縁化した上で部分打ち替えしています。
橋梁の損傷度グレードⅣ以上は5%
トンネル30年経過は16%
――橋梁はグレードⅣ(変状が著しい個所)およびⅤ(深刻な変状が発生している箇所について大規模更新・大規模修繕していくわけですが、どのくらいが該当しますか
北田 当社の橋梁総資産に占める割合は、Ⅳ以上は5%程度です。
――トンネルは
北田 供用後30年が経過したトンネルの割合は16%程です。平成9年10月にインバートの施工基準が変わって、風化し易い岩やCⅡパターンのものにインバートをつけるようになりました。風化し易いのでインバートを着けておけばよかったのに、当時の基準では設置していなかった個所が変成を受けて損傷しやすくなっており、覆工などに損傷が出ています。
――在来矢板で損傷が出ている傾向ですか
北田 必ずしもそうではなく、NATMで損傷が出ていないかというと一概にそうとは言えません。昭和56年にNATMの暫定設計施工指針ができて、工法的には取り入れられましたが、それから平成9年までのNATM施工のトンネルにおいてもCⅡで必ずしもインバートが設置されておりません。在来工法では、覆工の健全度を見ていればそこに応力がかかっているかどうか判断できます。
NATMも覆工の間のせりの変形、変状や応力クラックが生じているか否かで判断します。暗い中で通行を阻害させないように点検するため、100㌔走行で0.2㍉以上のクラックを測定する車載システムを作り上げました。
100㌔走行で0.2㍉以上のクラックを測定する車載システム