西日本高速道路は路線3割が30年以上を経過しており、一番古い名神道の尼崎~栗東間は50年以上を経過しており、そうした既設構造物の補修補強、長寿命化は待ったなしの課題になりつつある。一方で新設事業は数少なくなってきており、人材の育成という点では従来の新設現場という技術の研さん現場が少なくなることを意味している。来年からの実施が予想される大規模更新・大規模修繕事業など本格的な保全時代を迎えるなかで、西日本高速道路がどのような人材育成、保全事業への取り組みを図ろうとしているのか、同社技術本部技術環境部次長(兼技術統括課長)の福永靖雄氏に聞いた。(井手迫瑞樹)
専門組織を支社と事務所に設置
技術計画課と保全計画課
――西日本高速の道路網の現状と本格的な保全時代を迎えつつある中でどのような組織、人材育成体制を整えていくかについてお答えください
福永 西日本高速道路管内は、全長は約3,427㌔に達しています。30年以上経過した路線が3割を超えており、名神高速道路の尼崎~栗東間が一昨年に開通から50年を経過しています。また、九州道や中国道も30~40年が経過しています。また、リニューアルを進めている関門橋も40年が経過した状況です。
点検や組織体制については、業務手順などシステムを見直すことを行っています。具体的には管理体制の強化として点検から補修の計画管理を行う専門組織を支社(技術計画課)と事務所(保全計画課)に作っています。そこで点検結果を判断して措置をきちんと行う流れを作っています。
――以前はどのような状況だったのですか
福永 以前は構造物の損傷に対し対処療法的に補修を実施していましたが、老朽化の進展や使用環境の変化等による変状や損傷に対応するため、点検から補修を計画的に実施するための専門組織を設置しました。
茨木市に技術研修センターを整備
――人材育成は
福永 茨木市に技術研修センターを整備しています。当センターには阪神・淡路大震災で損傷した橋脚など現地で発生した損傷を有する構造物の実物を置いており、それを使いながら点検や補修の研修を進めています。ここで技術の基礎を教えこんでいきます。
たとえば耐震の面でいいますと昭和55年道路橋示方書より古い基準で設計された橋脚、同様に平成7年以前、8年以降の橋脚の配筋を実物として示し、鉄筋の過密状況などを視覚的にわかるようにした模擬体も置いています。このように社員研修のカリキュラムは今年度から一新しています。
技術支援者を増やしていく
――現場での取り組みは
福永 当社は、平成17年の民営化直後より技術支援者制度というものを作っています。橋梁、土工、トンネル、舗装、環境、施設など各分野における第一人者といわれる人材を2~3人登録しており、業務で問題が起きた時に相談できるようにしています。その「技術支援者」が現地に行った時に若手技術者も同行させ、OJTも行っています。
――橋梁やトンネルなどの構造物の建設は新名神を筆頭にまだまだあるわけで、各2~3人程度の技術支援者ではタイトではないですか
福永 タイトです。そのため技術支援者とは別に次世代というか技術支援者候補生のめぼしも付けており、そうした技術者を育成する事で支援者を増やしていこうと考えています。