塗膜剥離材を採用
重曹ブラストも
――まず、塗装から
廣畑 現在の塗装は過厚膜により、格点部やボルト部周辺の塗膜割れや発錆が顕著です。
1種ケレン相当、c―3系塗装による塗替えが必要です。関門橋は亜鉛溶射の上に塗装をしており、塗膜の劣化にも関わらず亜鉛溶射層はほとんど劣化していません。そのため塗膜剥離材で亜鉛溶射層の上の塗膜のほとんどを除去した上で、亜鉛溶射層を残しつつ、残った僅かな塗膜を除去できるよう、特殊な除去工法を施工しています。
過膜厚による塗膜の損傷状況(左)、ケーブルの発錆状況(右)
塗装の塗り替え(左)塗膜剥離剤の施工
――特殊な除去工法とは
廣畑 素地調整に重曹ブラスト工法を採用しています。ブラスト材に重曹を用いており、重曹を使用することで環境に対し無害であり、亜鉛溶射層を削ることなく、剥離剤で除去できずに残っている塗装のみを除去できます。
関門橋の損傷状況(左)と点検状況及び補修履歴(右)
重曹ブラスト(左) 関門橋の補修工程(右
関門橋の塗替履歴(左)と塗膜の劣化状況(右)
――主ケーブル防食対策は
廣畑 点検の結果、表面に点錆は生じていましたが、断面欠損や破断には至っていませんでした。しかし、内部の湿度は非常に高く、現在は腐食がさらに進行している可能性もあります。
現在は本四架橋で採用され、実績の多い送気システムなどの採用を決めており、送気試験および試験結果の検証を進めています。
外桁全支点に亀裂が発生
溶接・部材取替えで対応
――床組構造の疲労亀裂状況とその対策について
廣畑 現状は床組と補剛トラスの界面に線支承を設置していますが、同支承は、橋軸直角方向をそもそも固定しており、橋軸方向の移動についても錆などで機能しなくなっています。また、横桁下フランジに発生する回転変位の拘束が損傷に拍車をかけています。その結果、床組外桁支点部の補剛材は、ほぼ全支点に亀裂が発生しています。
対策としては線支承を全数取り替えると共に、亀裂が生じた部材を溶接あるいは部材取替えにより補修します。
床組構造の損傷