シースの素材がPC鋼材腐食の原因?
外ケーブル工法で補強
――最後にご自身が幹事長を務めるPC工学会の「既設ポストテンション橋のPCグラウト問題対応委員会」の進展状況について答えてください。
青木 現在、諸機関から収集した損傷事例について分析をかけて、傾向を調べています。年代にとらわれず様々な損傷が生じていることが分かってきています。
調査方法については先ほど示した漏洩磁束法や広帯域超音波法、衝撃弾性波法などについて紹介しています。
今後、PC桁の補修補強工法やPCグラウトの再注入工法などについて具体的な手法をまとめあげて、PC工学会として最終的なマニュアルを年度末までに作り上げる方針です。
――傾向や損傷事例についてもう少し具体的に述べてください。例えばノンブリーディング剤の使用前後では顕著な差があるか、など。
青木 (ノンブリーディング剤の使用の有無は)よくわかりません。確かにグラウトが入っていない個所も多く散見されますが、実際にその部分のPC鋼材を確認してみると錆びていない個所もありました。要は腐食因子が入ってこなければ錆びないわけです。
個人的な意見ですが、腐食の発生の有無を分けたのは、シース材が鋼製であるか、ポリエチレン(PE)製であるか、ではないかと考えています。PEシースはグラウト施工中に破けることもありませんし、腐食もしませんから外からの水や塩化物イオンなどの浸入もありません。
――腐食や破断したPC鋼材の補修補強方法はどのようなものを考えていますか。
青木 基本的に外ケーブルを設置して補修補強します。ノウハウはJR西日本やJR総研が有しているので、随時紹介していきます。
――外ケーブルによる補修補強は破断が確認された橋梁を対象にするのでしょうか、それともグラウト充填が確認できなかった橋梁全てを対象にするのでしょうか。
青木 安全を考慮すれば基本的に後者になると考えます。そのためにも委員会では基礎となるデータをきちんと作り、関係諸機関に示せるようにする方針です。
――長時間ありがとうございました。