大規模更新・大規模修繕の優先順位
ランクIV、Vを優先
――NEXCO3社共同の大規模更新・大規模修繕のフレームワーク発表を受けて、NEXCO総研が担うガイドラインについて、まず規模として多くを占める橋梁構造物の更新、修繕、取り替え、補強、補修の優先順位をどのようにつけていくか答えてください。
青木 NEXCOは現在、構造物の健全度をⅠ~Ⅴまで5段階にランク付けしています。ⅣやⅤに査定される損傷が著しいものは当然、優先順位が上になります。問題は非常に数の多いランクⅢの構造物の優先順位をどのようにつけるかです。
――どのように優先順位を定めるのですか
青木 こうした構造物の優先順位付けは、1つに技術的要件、もう一つは周囲の交通網の整備状況によると思います。後者はたとえば東名の床版を取り換えたり修繕する時期は、新東名道が開通して代替路線が確保できてからにしましょう――などという判断材料であり、これは事業各社(西、中、東)の管掌に属します。
総研では、前者の純技術的な内容に特化し、(ランクⅢの)損傷状況のさらなる細分化や施工個所の難易度から判断する試み、床版など特定構造の優先順位を上げる想定など様々なケースを考慮していきます。
床版の取り換え 桁の架替え
1車線規制のみで床版を取り換え
漏水しても損傷しない縦目地構造を開発
――大規模更新は全て橋梁上部工を想定しています。そのうち、金額ベースで床版の取り換えが9割、桁の取り換えが1割を占めます。供用中の路線の工事であるため、その交換には高い難易度が要求されますが、標準工法などは考えておられますか。
青木 床版取り換えが必要な延長は230㌔、橋数に換算すると2,000橋あまりに及びます。桁の取り換えは同10㌔200橋あまりです。種類は床版についてはRC床版が損傷しており、これをプレキャスト(PCa)PC床版に取り替えます。桁は基本的にRC桁(特に中空床版形式)が損傷しており、これをPC桁に架け替えます。
床版については、NEXCO全体ですでに30橋程の取り換え事例があります。技術的には確立していますが、床版全幅を取り換えるため、上下線いずれかを全面通行止めしなくてはならないという課題があり、施工中の渋滞や不便が生じていました。そのため1車線のみの規制で取り換えができる技術を開発中です。
――具体的には
青木 PCaPC床版ブロックを1車線幅に小割して規制を最小限にする手法です。
――その場合、膨大な縦目地という新たな弱点が生じますが、継手構造や防水工の継目などの対策をどのように行いますか。
青木 そうした課題に対応するため、縦目地部分は水が漏れても問題が生じない素材で対応します。現在は実験中で、来年の7月には要領化する予定です。
――桁の架け替えは、そもそもどのような路線を想定していますか。
青木 沖縄道や中国道、阪和道や東北道の一部など、RC桁内の内在塩分濃度が極めて高い個所が対象になります。現状でも沖縄道ではRC中空床版橋の架け替えを進めています。基本的にPCa製のPC桁によって架け替えます。
――桁重量を考慮して鋼桁による架け替えは選択肢に入りませんか。
青木 現場でのキャンバー調整などの手間を考慮すると、架け替えに鋼桁を用いるのは難しいと考えています。