「えっ、この場所にこんな製品が?」 「なるほど、このサイズ感でこの機能かぁ」
光海陸産業 新社長に樋口和男氏が就任 5年後に売上20億円超え目指す
道路・橋梁・環境などの用途にニッチかつオリジナル要素のある商材を供給している光海陸産業の社長に樋口和男社長が就任した。30年前に入社した後、創業者である故・松林功作前社長を支え、商品の開発、営業に携わってきた生え抜きである同氏は現在の売上高11億円を5年後の2028年度には20億円まで引き上げることを目指している。無電柱化事業における高度なセキュリティ対策として実績を伸ばしている『ステンレス製二重蓋』、首都高速道路などで1万㎡の実績を有する小面積用の超厚膜無溶剤系セラミックエポキシ樹脂塗料『Brushable-S』、同材料を中面積にも適用できるようにした『Brushable-M』、橋梁の排水施設の応急補修材として使用可能な新たな製品『鋼管エルボ応急補修材「インサートノズル」』、橋梁の新しい点検孔用マンホールとして提案している『D・FRP-PLEXUS』など、個々の商材についても詳しく聞いた。(井手迫瑞樹)
ニッチだが確実にニーズのある分野へ新技術を開発
「光海陸マインド」を徹底 【道路】、【橋梁】、【環境】にフォーカス
――光海陸産業の社長にこの7月に就任しました
樋口社長 入社以来、30年、現場と商材のアッセンブル、フィードバックを利用した技術開発、開発した商材の営業を行ってきました。先代の松林社長が亡くなられ、後を継がせていただいております。私は52歳ですが、当社は従業員の平均年齢も若く、最近も25歳の若い人材が入社してくれました。
私自身は専門家ではなく、現場やメーカーの方と折衝しながら学び、専門性を身に着けてきました。真摯な情熱や業際を跨る知識は、時に玄人の常識を超えていくことが出来ます。これを私は『光海陸マインド』と捉え、今後もその精神を生かしていきたいと考えています。
――『光海陸マインド』をもう少し表現してください
樋口 光海陸産業は、土木材料の探求・販売を約50年続けてきたコンパクトな会社です。
【道路】、【橋梁】、【環境】にフォーカスし、ニッチな部位の製品や、世の中の数多ある従来製品における課題を見極め、新しい技術開発に注力してきました。
先人の知恵と、現場で積み重ねてきた職織経験、そして新時代に敏感な若い感性を取り込み、光海陸フィルター=目利きの感性を、日々研鑽しております。
土木建材商社としての思い半分、小さいなメーカーとしての思い半分で、特にニッチ・すきまの製品を好み、「えっ、この場所にこんな製品が?」 「なるほど、このサイズ感でこの機能かぁ」と、驚きと気づきを、感じていただけるような製品ラインナップを目指しております。
全ての人たちが笑顔になれる、そのストーリーを意識し、日々業務に邁進しています。
現在の従業員は16人、その他、外部アドバイザーが5人程います。
超厚膜無溶剤系セラミックエポキシ樹脂塗料『Brushable-S』
中面積用途に改良した『Brushable-M』も上市
――個別の商材や技術をまず橋梁の防食分野から教えてください
樋口 首都高速道路などで実績を有する材料として超厚膜無溶剤系セラミックエポキシ樹脂塗料『Brushable-S』があります。
『Brushable-S』(以降「S」)は米ITW社の開発したBrushable- ceramicを橋梁防食用途にカスタマイズした製品です。Ceramicは船底の防食やソナーの保護塗料などで使われていたもので、エポキシ樹脂にセラミック粉末(セラミック粒子)が均一に分散することで、防食性能を発揮するものです。Ceramicをそのまま使うには、粘度の高さや作業時間の短さ(鋼橋の防食にそのまま使うと可使時間が短く、施工性がわるい(1㎡塗布に20分))がネックになり使えないため、都市高速のBランク補修に使うために刷毛塗りで1度に1,000μm塗布してもダレず、可使時間も気温25℃で最低50分を確保できるように調整したのがSです。2016年に試験施工を初めて行って以来、現在までに1万㎡(膜厚750μm換算)の実績を重ねています。施工対象は基本的に1個所10㎡以下の小面積となっています。
Brushable-S施工例(左:歩道橋部、右:スポットリフレ工法)
――Sを中面積用途に改良した『Brushable-M』(以降、「M」)も開発しましたね
樋口 Sを施工している中で発注者様や元請様などから、厚膜を省工程で作業できる防食工法として、中面積でもやってみないかと勧められ、共同開発したのがMです。
Mは、鋼製橋脚やランプ橋、交差点部など、規制が難しく、規制回数を減らすために省工程が求められる箇所で使うことを目的として開発しました。粘度をさらに調整することで、刷毛塗りだけでなくローラー塗りでも施工でき、可使時間も倍の100分に増やしました。1回で300μmの厚さを塗ることが出来、塗り重ねも養生や表面処理を必要とせず行うことが出来ます。ある都市高速では、Mを採用することで、従来の塗装では6~8層の施工が必要であった箇所が2回塗りで所定の防食が可能となり、従来に比べて規制回数を1/3~1/4に減らすことが出来ています。材工コストはさほど変わりませんが、規制にかかるコストや社会的負担を考えると総コストは大きく減らすことが出来ます。下地は2種ケレン以上(当然ブリストルブラスターも可)で施工可能です。
Brushable-M工法施工例
ローラー塗りでも施工でき、可使時間も倍の100分に増やした(左、中)、省工程のため規制回数を減らすことが出来る(右)
――S、Mともに施工性が良いのは分かりましたが、防食性能は従来塗装系と比べて、どの程度期待できるのですか
樋口 複合サイクル試験や、実物暴露試験を行っており、ふっ素樹脂トップコート仕様の重防食塗装と同様の防食性能を確保しています。
鋼管エルボ応急補修材『インサートノズル』 15分程度で施工完了
GFRP製点検用マンホール『D・FRP-PLEXUS』 軽く、開けやすく、腐食しない
――橋梁分野で他に展開している商材は
樋口 鋼管エルボ応急補修材『インサートノズル』、GFRP製マンホール『D・FRP-PLEXUS』(以下、「プレクサス」)があります。
インサートノズルは、橋梁排水桝の下に設置された鋼管エルボ管は、融雪剤の影響などにより腐食によって穴があいた鋼管エルボ管を、短時間の交通規制で補修する応急補修材です。具体的には本線上からGFRP製の定着部と固定したダクトホースを排水桝を通して挿入し、損傷した隅角部を通過する形で健全部まで伸ばすことにより、漏水によるこれ以上の損傷を防ぐ製品です。GFRP製の定着部には磁石を仕込んでおり、これが鋼製排水桝の底部に満遍なく付着して定着することにより、水は全てダクトホースを経由して排水するようになり、破損した部分からの漏水が起きなくなります。既製品での組み合わせを前提として、創意工夫により開発したため、開発コストを抑えることが出来ています。また、挿入しやすいようにインサートノズルの先端形状なども工夫しており、15分程度で施工を完了することが出来ます。
インサートノズル概要図と挿入状況
損傷状況と補修完了状況
インサートノズルはあくまで応急対策のための製品であり、恒久的な対策までのつなぎとして位置付けています。ただし、定着部がGFRP製で丈夫なため、恒久対策のため取り外した後も、別の応急対策が必要な現場に流用することが可能です。
プレクサスは、橋脚や桁などに設置される点検用マンホールについて、従来の鋼製からGFRP製のマンホール蓋にすることを提案したものです。鋼製は重く、開けにくく、さらに鋼製ですので錆びやすいという欠点がありましたが、プレクサスは受枠およびマンホールをGFRP製にすることで、軽く、開けやすく、腐食しません。受枠と接する下地は、Sを塗布しており、さらに構造用接着剤としてITW社のPLEXUSを用いており、設置部の防食性や付着強度についても万全の注意を払っています。
紫外線劣化対策としてはFRP用のゲルコートを用いており、定期的なメンテナンスを施せば50年以上の耐久性を確保できます。
GFRP製マンホール『D・FRP-PLEXUS』
D・FRP-PLEXUS 概要図
無電柱化事業向けにステンレス製内蓋を用いた二重蓋方式を展開
。NETISにも登録済み(QS-160001-A)
――橋梁以外の土木用製品は
樋口 現在、全国で進められている無電柱化事業において、高度なセキュリティを確保するために、ステンレス製内蓋を用いた二重蓋方式を約15年前から展開しています。
通常のマンホール蓋については、バールでこじ開けられてしまう危険性があるため、既成のマンホール蓋に錠前を設置しなくてはいけませんが、そのためには受枠とマンホール蓋セットでの交換が必要になり、道路規制の確保の難しさやコストが高いなどの課題がありました。
ステンレス製内蓋を用いた二重蓋方式 NETISにも登録済み(QS-160001-A)
当社では、既成のマンホール蓋の内側に、ステンレス製のシリンダー錠を使用した内蓋を付けることを提案しています。これは重量が軽く持ち運びが楽で、設置も難しくなく、オールステンレス製で錆びにくく、プレス加工により製品の寸法精度が良いという利点があります。また、本体、及びシリンダー錠が地表に露出しないためセキュリティが向上し、破損の恐れも少なくなり長期に渡りメンテナンスが不要となります。加えて、締め忘れ防止機能がついているので施工管理も安心できます。
対ピッキング性能や耐疲労性も確認しています。NETISにも登録済み(QS-160001-A)で、今後も幅広く展開していく方針です。
――最後に中期的な経営目標について
樋口 昨年度(2022年度)は11億円であった売り上げを5年後の2028年度には20億円越えまで押し上げてきたいと考えています。現状の商材展開や売り上げの推移を考慮すると、達成可能な数字と考えています。今後も感謝の気持ちとともにユーザーニーズに応じてかつニッチで満足される思いありが持てるハイブリッドな商材をたくさん展開していきたいと考えております。
――ありがとうございました