日本最大級の制震ダンパーを採用 主塔部・端部に配置
NEXCO中日本豊田保全 名港西大橋Ⅰ期線の耐震補強に着手
中日本高速道路株式会社
名古屋支社
豊田保全・サービスセンター所長
浦 敦 氏
中日本高速道路名古屋支社豊田保全・サービスセンターは、同社管内でも指折りの交通量を有する東名、伊勢湾岸道などを管理している。伊勢湾岸道は開通後7~8万台で推移、東名も新東名開通後は4万台が遷移し、7万台まで減少したものの、依然として重交通路線であることは変わりなく、厳しい状況下での保全が要求される。今回はそうした課題や名港西大橋Ⅰ期線の大規模耐震補強、伊勢湾岸道での大型鋼製ジョイントの取替、補修、東名管内における1本ローラー支承の取替などの話題について浦敦所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
東名 新東名開通後は約7万台まで減少
4万台が移行 伊勢湾岸道は7~8万台で推移
――事務所管内の地勢的特徴と道路網の現状からお答えください
浦所長 当事務所は、愛知県南東部の豊川市から西部の飛島村に至る範囲の東名高速道路豊川IC~豊田IC間42.6㌔、今年2月に新規開通した新東名高速道路新城IC~豊田東JCT間43.1㌔、伊勢湾岸自動車道豊田東JCT~飛島IC間38.8㌔を主に管理しています。
供用年数は、東名高速道路が47年、伊勢湾岸自動車道が11~18年(飛島IC~名港中央IC間Ⅰ期線2.9㌔が31年)を経過しています。そのほか05年に開通した東海環状自動車道の一部豊田松平IC~豊田東JCT間2.3㌔、11年に開通した名古屋第二環状自動車道の一部名古屋南JCT~有松IC間3.6㌔も所掌しています。
東名高速道路は三河丘陵の南端を通過することから切盛の土工構造が9割以上、伊勢湾岸自動車道は尾張丘陵から濃尾平野の市街化が進んだ平野部を通過しており、高架橋構造が88%を占めています。
――新東名の開通によって東名高速の交通量はどのように変化しましたか
浦 新東名開通以前、最大交通量は、東名道の岡崎IC~豊田JCT間で11万台に達していました。しかし、開通後は7万台ほどに減少しており、4万台強が新東名に転移した状況です。
伊勢湾岸自動車道は7~8万台で推移しています。大型車混入率も東名高速道路および伊勢湾岸自動車道は3~4割に達しています。
構造物比率は48% 東名は9割が土工
新東名は53%が構造物 伊勢湾岸道は9割が高架
――管内の橋梁・トンネルの内訳は
浦 管内全体に占める構造物比率は48%です。
橋梁は鋼橋が123橋、RC橋が31橋、PC橋が61橋となっています。
東名高速道路が59橋、伊勢湾岸自動車道が115橋、東海環状自動車道が2橋、名古屋第二環状自動車道が3橋、新東名高速道路が36で合計215橋、総延長75.189㌔を占めます。
トンネルは東海環状自動車道で1本0.3㌔、新東名高速道路で16本13.9㌔となっています。ほか、名古屋第二環状自動車道に2㌔の掘割構造を有します。
路線的な特徴を申し上げますと東名高速道路は、三河丘陵の南端を走っており、土工部が9割超を占めます。逆に新東名は山側を走っており、構造物比率は53%(トンネルが32%、橋梁が21%)に達しています。伊勢湾岸道は尾張丘陵から濃尾平野の市街地の多い区間を通過しておりますので、高架構造が9割に達します。
構造物比率およびトンネル・橋梁の工種別延長(NEXCO中日本資料提供、以下注釈ない限り同じ)
――点検を進めてみての管内各路線の劣化状況は
浦 管内の大型車混入率は3~4割程度という状況です。東名高速道路は、供用年数が長期にわたるため、桁端部や張出床版端部の変状が多く生じていますが、これはどちらかというと、剥落などが多くなっています。塩害やASRによる著しい損傷は見受けられません。ただし、凍結防止剤の影響による劣化はあるほか、伊勢湾岸道では飛来塩分による劣化が散見され、鉄筋の腐食や鋼橋の塗膜劣化、発錆が生じています。また、鋼製支承についても錆などが生じています。これらの対応としては、水を止めるのはもちろん剥落対策を行っています。当社は笹子の事故があってから安全性向上3カ年計画を行いましたが、(標識柱や照明柱、トンネルのファン設備など)第三者への被害が懸念される道路付属物の対策は昨年度までにほぼ完了しました。
交通量の関係では、伊勢湾岸道が繋がって、東名・名神主体の交通量がだいぶシフトして交通量が伸びています。そのため伊勢湾岸道にある大型のマウラージョイントで疲労損傷が出て、場所によってはバタつくという現象が起きています。そのため、昨年の6月に大型の鋼製フィンガージョイントへの交換を初めて行いました。今後も損傷の目立っている箇所から順番に行っていくことを続けていきます。
昨年及び今年6月のジョイント取替の際は、3車線を疑似的に4車線に広げて、全幅を2回に分けて、2車線を流しながら半分を昼夜連続規制で施工する形で取り替えています。
マウラー、鋼製フィンガー両ジョイントで亀裂損傷
予想を超える交通量及び大型車混入率
――マウラージョイントはどのような損傷状況であったのですか
浦 マウラージョイントは1996~2004年まで多く採用されました。ミドルビームの本数を増やすことにより大きな伸縮量にも対応可能な構造です。しかし08年に伊勢湾岸道で最初の損傷が確認されました。これはいわゆる旧型と呼ばれるタイプでミドルビームとサポートビームをすみ肉溶接で接合していましたがその部分で亀裂が生じていました。また、疲労耐久性向上を意図し、ミドルビームとサポートビームを完全溶け込み溶接で接合したいわゆる新型タイプも設置していましたが、12年には同タイプでも亀裂が見つかりました。今度は溶接部ではなく、その周縁部で亀裂損傷が起こっていたものです。
同区間の交通量は8~9万台であり、大型車混入率は36%にも達します。そのため、すみ肉溶接で施工していた旧型はもちろん、新型の場合は溶接部を強くしましたがより弱い個所へ疲労が転移し、こうした現象を起こしたものと考えられます。
この事態を受けて、12年に支社で検討会を発足させ、対応を議論した結果、疲労損傷履歴のあるマウラージョイント12基を含め、47基全数を順次、鋼製フィンガージョイントに取り替えていくことにしました。昨年度の4基に引き続き、今年度も6基で取り替えました。
マウラージョイントの損傷状況(予想を超える激しい交通量、通過重量がこうした事態を起こしたと考えられる)
ただし、最近では鋼製フィンガージョイントでも疲労損傷が生じています。
――どこで起きているのですか。また対策はどのように行いますか
浦 伊勢湾岸道の生駒高架橋で2014年3月に一部の歯が欠損している損傷を確認しました。同日中にアスファルト補修材を充填する応急補修を行い、1ヶ月後には鋼板による短期的な補修対策を施工した上で、15年に取替えました。当時、疲労照査されていない同種のリスクがある鋼製フィンガージョイントは管内に他に16基あり、14年に全数の詳細調査を行った結果2基に軽微な疲労亀裂が確認されました。亀裂箇所については補修を行うとともに、同種構造の箇所については今後疲労耐久性向上策を行っていきます。
鋼製フィンガージョイントの疲労損傷および対策