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NEXCO西日本 片側通行規制下での工事を想定

道谷第二橋 半断面床版取替工法を試験的に初採用

公開日:2016.09.16

 西日本高速道路は8月26日、中国自動車道の鹿野IC~徳地IC間に位置する道谷第二橋上り線の床版取替工事を公開した。施工は、上り線を全面通行止め、下り線を対面通行規制とした上で行っているが、今後のIC付近、PA付近や名神高速道路などの重交通路線での床版取替を想定し、NEXCO総研とピーエス三菱が共同開発した半断面床版取替工法を試行的に採用している。1期施工(追い越し車線側)は5月上旬~7月中旬にかけての施工が完了しており、現在は2期施工(走行車線側)が施工中だ。2期施工は7月中旬から開始し、10月下旬には完了する予定。その詳細を取材した。(井手迫瑞樹)

床版防水は未設置、凍結防止剤による塩害
 1980平方㍍を取替

 同橋は、昭和55年10月17日に供用した橋長115㍍の鋼3径間連続非合成鈑桁橋である。既設床版はRC構造で設計床版厚は210㍉、実測も同様であった。橋梁の曲線半径は605㍍、縦断勾配は3.193%、横断勾配は4.019~5.000%という条件下にある。供用から現在に至るまで床版防水は敷設しておらず、下面の被りコンクリート部分の剥離が顕著にみられ、鉄筋の腐食膨張も進んでいた。凍結防止剤を多量に散布する箇所であり、今後の損傷悪化も否めないことから、今回当該箇所1,980平方㍍の床版および両側高欄を、プレキャスト(PCa)PC床版(床版厚は250㍉)に取り替えることにした。パネル枚数は片側57枚×2車線。ハンチ部は+50㍉。壁高欄高さは約1㍍。


橋梁概要と施工概要

施工手順

今次現場での床版割付

半断面床版取替工法イメージ

 半断面床版取替工法を取り入れたのは、今後の重交通路線やIC、PA付近などの床版取替を考慮し、試験施工として採用したものである。NEXCO西日本が所管する高架橋の中には通過交通量10万台を超える路線がある。理想的には九州道向佐野橋での床版取替事例のように上下方向いずれか一方を完全に通行止めして施工することが望ましい。しかし、供用中の他方は対面通行となるためドライバーに負担がかかることや、一般道もしくは鉄道など他手段への輸送力の振り替えが必要になるなど事前の準備に非常な労力を有する。

片側通行規制下での施工が可能
 安全面、縦目地の発生の克服が必要

 半断面床版取替工法は、その名称が示す通り、当該方向への通行を半分生かしながら、もう半分を撤去・取替可能にした工法である。工法の特性上、交通への負担は最小限に抑えることができる。その一方で供用車線が隣にあるため、安全面に細心の注意を図らなければいけないことや、構造上縦目地という弱点を生じてしまうというデメリットを解消しなければいけない。
 元請のピーエス三菱はこうした課題に対処するため、①専用架設(撤去)装置(機械)の活用、②縦目地部の精度を確保できる型枠の活用と腐食を生じない非金属製ガイドキーの採用およびポストテンション方式横締めPC鋼より線による縦目地部へのプレストレスの導入などで対応している。

施工を考えた仕様を徹底
 縦目地部における精度の高い型枠の製作と設置の工夫

 大規模更新事業は既設床版の取替であり、PCaPC床版の製作形状に標準というものはない。箇所ごとの一期一会である。複雑な線形にPCaを使うということで、寸法確認した上でそこにしか嵌らない版を作る必要がある。そのため「時間をかけて現場を事前測量し、形状を決めた」(ピーエス三菱)。その上で精度の高い鋼製の型枠を用いて(鋼製型枠をメスオス的な2つに分け、縦目地部分の接合部の形状を合わせたもの)製作し、工場内で仮組み検査をした上で出荷している。製作部材縦目地部の精度は高く、かつ単体毎に製作する場合と比べ製作期間を約半分に短縮できる。また、パネル内部にはφ15.2㍉PC鋼より線を12本(上下段6本×2、125~450㍉ピッチ、ジベルや横締めPC鋼材との干渉を避けるために調整)配置し、プレテンション方式にてプレストレスを与えている。打継ぎ目を無くすため地覆・高欄の一部もPCaPC床版と同時に製作している。なお、コンクリートは(間詰め部も含め)中国自動車道の凍結防止剤散布を鑑みて、遮塩効果の高い高炉スラグ微粉末(比表面積6,000平方㌢/㌘)をセメントと50%置換したものを採用した。鉄筋は、壁高欄の立ち上がり部、床版間詰め部の最外縁鉄筋などでエポキシ樹脂塗装鉄筋(安治川鉄工製)を使っている。


鉄筋組立状況/床版製作状況

プレストレスの導入・コンクリート打設/削り出し型枠の脱型

水中養生/工場での仮組

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