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パントレなどを用いて約1万平方㍍を施工

堺市大浜高架橋塗替 塗膜剥離剤を採用

公開日:2016.04.01

 堺市は、主要地方道大阪臨海線(府道29号)の大浜高架橋(堺市堺区)のP17~P22間の鋼桁および鋼製橋脚について、塗膜の劣化が比較的進んでいたことから、塗り替え工事を行っている。対象面積は約1万平方㍍。既設塗膜については、鉛等有害物質を含有していたことから作業者の安全を考慮して塗膜剥離剤による塗膜除去を行っている。また、除去した塗膜は特別管理産業廃棄物として取り扱い、無害化処理した上で埋め立て処分している。各発注機関では、2014年5月30日に厚労省および国交省から出た「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落としにおける労働者の健康障害防止について」文書が出て以来、鉛等有害物質を除去する際の対応について苦慮しているが、そのケーススタディとして堺市の鋼橋塗膜除去塗替え工事現場を報告する。(井手迫瑞樹)

既設塗膜に鉛やジクロロメタンを含有
 作業効率の良さ、環境負荷の少なさからパントレを採用

 同橋のP17~P22間の桁は1988年に架設され、大阪府鳳土木事務所が管理してきた。架設から約30年であるがその間塗り替えは一度もなく、今回が初の塗り替えとなる。そのため既設塗膜は一般部で160~200µmと比較的薄く、添接部も平均で200~350µm(但し一部で400µm強)となっている。下地は「有機ジンクと無機ジンクが混在している可能性がある」(堺市)。
 塗り替えに際し、堺市で塗膜成分を調査した結果、鉛やジクロロメタンなど有害物質を含んでいることが確認されたため、作業者の安全を考慮して湿式環境下での施工、即ち塗膜剥離剤を採用することを決定した。塗膜剥離剤は水系の剥離剤の中から「パントレ」を選択した。これは他の剥離剤(1種類)と現場で試験施工を行い、比較検討した結果「剥離力については有意差がなかったものの、パントレの方が、若干作業効率が良く、環境負荷も少なかったことから今回の現場では全面的に採用した」(堺市)としている。


材料比較表(堺市提供、写真以外は以下同じ)

 塗膜除去は、3人の塗膜剥離剤塗布(スプレー工)、20人の掻き出し工(スクレーパー等で施工)、20人の電動工具による処理工(ディスクサンダーなどを使用)により進められている。具体的には既設塗膜表面に剥離剤をスプレー塗布し、24時間ないし低温環境時は48時間養生した後、膨潤した塗膜をスクレーパー等で掻き出し、残存塗膜や浮き錆などはディスクサンダーなどの電動工具で除去している。ブラストは行わず2種ケレン相当で塗り替える方針。1日当たりの塗膜除去面積は「約200~250平方㍍」(同)となっている。なお塗膜剥離剤の塗布は基本的に1回だが、添接部や隅角部など厚膜な箇所については2回塗りした上で養生し掻き出しを行っている。


スプレーによる塗膜剥離剤塗布工/スクレーパーで掻き出し

除去後の下地、隅角部や添接部、一部無機ジンクリッチの使用可能性のある個所では
残存塗料を電動工具などで処理する

ガス化改質溶融方式を採用

 除去後の既設塗膜は鉛やジクロロメタンを含有しているため、特別管理産業廃棄物として扱い、ガス化改質溶融方式によって無害化処理する。具体的には1600~2000℃の温度で溶融し比重の異なる鉛等を分離、さらにジクロロメタンなどについては1200℃の熱分解ガスによって無害化処理した上で後工程でクリーンなガスに精製し、発電用の燃料して使用する。一方、鉛等は再資源化する。埋め立て処理を伴わないという点では非常に環境に優しい処理方法を採用している。


ガス化改質溶融方式によって無害化処理

外部への拡散を防ぐために内外を峻別

 施工に際しては、作業者の安全確保と外部への有害物質の拡散を防ぐため、使い捨ての高密度ポリエチレン製防護服(タイベック)で全身を覆い、なおかつ特殊防毒マスク、作業用レンズを用いて施工している。電動工具施工時はさらに高性能な防毒マスクを着用して施工する。施工後は防護服を現場内で脱ぎ棄てて管理し、靴も現場内外を区別して着用し、外部への有害物質の拡散を防いでいる。
 塗膜剥離作業については、4月一杯で完了する予定。塗装工事は7月上旬には完了する見込みだ。
 元請は木下・利晃・隆栄JV。(2016年4月1日掲載)

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