LMFC(ラテックス改質速硬コンクリート)を採用
北海道開発局 山水橋のコンクリート舗装を伴う補修とその経過状況
当サイトでは、東日本高速道路のJ-THIFCOMを用いた床版の上面補修、新屋橋での橋梁のコンクリート舗装の事例を先だって紹介した。今回は、2017年夏(7、8月)に国土交通省北海道開発局札幌開発建設部千歳道路事務所が所管する山水橋(北海道恵庭市盤尻、昭和41年供用)で施工した橋梁のコンクリート舗装を伴う補修とその経過状況について現場取材した。(井手迫瑞樹)
同橋は国道453号と道道117号恵庭岳公園線が結節するラルマナイ川渡河部に架かる橋長48m、有効幅員6.5m(全幅7.7m)の単純合成鈑桁(3主桁)×2連の橋梁である。設計道示は上部が昭和39年鋼道路橋設計示方書および同製作示方書、下部が昭和33年のコンクリート標準示方書に基づいて北海道庁が建設し、1994年に国道に昇格した経緯を有する。床版厚は170mmで、床版支間は2,600mmとなっている。もともとコンクリート舗装でありその厚さは50mmあった。
山水橋位置/山水橋諸元(北海道開発局提供、以下注釈なきは同)
山水橋側面図および断面図
2002年に伸縮装置を全箇所で止水型の鋼製ジョイントに交換し、06年に鋼製高欄を取替え、09年には沓座モルタル補修や下部の断面修復、11~13年に舗装のパッチ補修を行っている。それでもP1-A2間で部分的に漏水している個所が多く見られた。一方A1-P1はほとんど補修の必要が見られなかった。
これには推定できる理由がある。1つは当時の施工上の瑕疵である。「特にP1-A2側にはRC床版下面部においてジャンカが多く見られ、漏水もジャンカを有する部分で顕著であったことから初期欠陥や施工不良である可能性が高い」(千歳道路事務所)と見ている。
施工前の路面および床版下面(P1-A2間の損傷が大きい)
2つ目は凍結防止剤の(1回あたり)散布量が20g/m2と多く塩害による損傷を招きやすいことだ。今回も補修工事までに床版のコアを抜いて調査した結果、鉄筋近傍において最大で10kg/m3の塩化物イオン量が確認された。
最後は勾配と伸縮装置の影響である。縦断勾配はA2→A1側に2%の下り勾配がある。さらにP1のジョイントは損傷していた。その結果、P1-A2径間には塩分を含んだ水が供給されたものの、A1-P1径間は水が流れず、損傷を免れたものと推定できる。
舗装を剥いでみると、特にパッチ部においては床版の土砂化が進行していた。塩化物イオン量は上端筋ではなく下端筋近傍で高く、鉄筋が腐食していたことから上側は水が抜け、比較的コンクリートが健全な下端筋近傍に塩分が溜まり、鉄筋腐食を招いたものとも推定できる。そのため、補修はP1-A2間のみで行った。
補修に使用した材料はLMFC(ラテックス改質速硬コンクリート)である。LMFCは、SBR(スチレンブタジエンゴム)ラテックスをベースにしている混和剤を混入したコンクリートで、通常のコンクリートと比較して、付着性、耐摩耗性、乾燥収縮の低減、耐物質透過性に優れる。特に乾燥収縮はゴムによるフィルム効果が機能して内部水分の散逸を減少させ、コンクリートの密実化を促し、耐物質透過性の点では。コンクリート内部の空隙を固形ゴムによって充填し、水や塩分の透過を阻止する機能を有している。
現場は「明らかに床版下まで水が浸透し、浮き、錆も出ていた。損傷の原因は水(凍害含む)や塩分ということははっきりしており、上からの水の浸透を抑えないと、補修しても再度損傷が起きる可能性があった」(千歳道路事務所)。そのため、防水性に優れた材料による補修が必要となった。
こうした場合、基本はアスファルト防水+通常のアスファルト舗装である。今回LMFCを使った理由は同橋が「合成桁であった」(同)、ことと床版厚が薄くなることだ。構造上の特徴や床版の疲労耐久性を考えると220mmのコンクリートを50mm削り、舗装に打ち換えることは不安があった。そのため、コンクリート舗装でありながら材齢6時間で35N/mm2、28日で60~70N/mm2という圧縮強度を確保でき、さらに乾燥収縮も少なく、密実性に優れているLMFCを採用することにした。
LMFCと他コンクリートとの曲げおよび圧縮強度、乾燥収縮、水分散逸量の違い