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伊良部大橋などで培った塩害・ひび割れ対策を援用

沖縄県中部土木事務所 泡瀬人工島連絡橋下部工が終盤

公開日:2019.03.16

 沖縄県中部土木事務所は、沖縄市の泡瀬干潟内に建設を進める泡瀬人工島に繋がる連絡橋の建設を進めている。同橋は橋長810m、幅員22.5~23.5mの上下4車線のPC橋であり、伊良部大橋開通以降では最大規模の橋梁だ。伊良部大橋で培った塩害対策技術をふんだんに使っている。現場を取材した。


橋梁概要①

 同橋は、泡瀬干潟の一部に建設されている人工島に連絡するための海上架橋だ。同埋立地は95haにおよび、その中にはスポーツ設備や人工海浜、ホテルなど様々な施設が作られる予定で、埋立は佳境を迎えている。同埋立事業に関しては、自然豊かな泡瀬地区の一部にかかることから反対運動も盛んで、その意見も反映して2007年、当時の沖縄市長の時に「第一区域(現埋立地)は推進、第2区域の現行計画の推進は困難」と表明したこともあり、面積は半分程度に縮小された。東海岸の振興という視点からの計画の有用性と自然保護の折衷が垣間見え、沖縄の政治の複雑さを物語る一例と言える。


橋梁概要②

 泡瀬干潟では希少動物が存在するが、中でもトカゲハゼ(産卵期は4~7月)などがおり、3月末の工期(海中工事)は絶対に延長できない。そのため、筆者が現場に入った2月17日は急ピッチで下部工の工事が進められていた。風雨に対してもブルーシートで養生しコンクリートの打設が行われていた。

 同橋は、本島側の6径間が6径間連続ポステン中空床版桁(142.75m)、人工島側の12径間が12径間連続PC連続箱桁橋(667.25m)となっている。オールPC形式で箱桁部はプレキャストブロックをカンチレバーで架設、中空床版部は架設桁架設を予定している。箱桁部は景観を考慮し、支間長はほぼ60m刻みとなっており、桁高は最大で3500mm程度に達する。基礎は比較的岩質がよく、中央部のP10~P13の4基は直接基礎を採用している。そのほかの橋脚・橋台についてはφ1,100の鋼管杭を橋台部で16~28本、P1~P6で40~50本、P7~P9、P14~P18で54~70本設置する鋼管杭基礎を予定しており、施工についてはバイブロハンマーで建て込み後、油圧ハンマーで打ち込んでいる。島尻泥岩層であるため打ち込みにそれほど苦労せず、伊良部大橋のような円弧リブは必要ない様だ。杭基礎の深さは浅いところで9mから深いところでも16mで「傾向としては高止まり」(中部土木事務所)となっている。
 杭打ち後は矢板で締めきり、ドライにしたのち、底面コンクリートに次いで配筋を行い、フーチングを打設、橋脚の配筋とステップを踏んでいく。特に同橋は上下4車線あるため、箱桁部の橋脚は2柱式であり、フーチング規模も橋軸15~18.7m×橋軸直角21.5~27m×高さ2.5~3.5mと大きくなっている。フーチングの配筋は土中部であることから普通鉄筋を使い、最大3.5mを1ロットでフライアッシュ(以降、FA)を混入した(詳細後述)コンクリートを打設する。橋脚については同4.5×8.5×9m(高さは最大)であり、エポキシ樹脂塗装鉄筋を用いて2ロットで同コンクリートを打設する。打設量は最大で1,600㎡程度に達するが、「打設時期は12月であり、仮締切内であるため外部環境にも影響されにくく、FAを用いた温度抑制で事足りる」(同)としている。


フーチングの打設状況(遠景)①

フーチングの打設状況(遠景)②/フーチングの打設状況(近景)①

フーチングの打設状況(近景)②

 なお、複数の現場(P10、P11、P12、P13、P17)では、鉄筋組立を容易に行うためにプレート定着型せん断補強鉄筋『Head-bar』を採用した。橋脚における鉄筋加工や組立て作業の省力化、工期短縮による建設現場の採算性向上を目的としたもの。矩形または円形のプレートを鉄筋端部に摩擦接合したせん断補強鉄筋の機械式鉄筋定着工法。両端半円形フック鉄筋では施工が難しい個所でも定着されたプレートがしっかりと主鉄筋を拘束するため、配筋作業が省力化できる。同鉄筋を用いることでせん断補強筋の鉄筋量も減らすことが可能だ。


プレート定着型せん断補強鉄筋『Head-bar』(中央部)

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