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三井造船鉄構エンジニアリング(現:株式会社三井E&S鉄構エンジニアリング)が応急・本復旧とも製作・施工

NEXCO西日本九州支社 大分道・並柳橋の復旧工事の軌跡

公開日:2017.12.16

驚異的な応急復旧のスピード施工
 地震後約1ヵ月の5月9日には対面規制で開放

 先の熊本地震で、大きな損傷を受けた長大橋に大分自動車道の並柳橋がある。鋼トラス構造を含む橋長約424mの同橋も大きく損傷を受けた。それでもNEXCO西日本および同グループ会社、三井造船鉄構エンジニアリング(現:株式会社三井E&S鉄構エンジニアリング)をはじめとした民間各社の尽力により発災から1か月も経たない5月9日には2車線開放し、現在本復旧・耐震補強工事を進めている。その現場を取材した。

桁が縦断の高い方向へ移動
 損傷部位はトラスと鈑桁の架け違い部や橋台部など

 同橋は橋長422.4m、幅員10.7mの鋼4径間連続鈑桁+鋼4径間連続トラス橋である。橋脚は高さ51m(P6橋脚 最大)に達するフレキシブル橋脚であり、縦断勾配が相当にきつい橋だ。今回の地震では、桁が縦断の高い方向へ移動していた。損傷部位は、トラスと連続鈑桁の架け違い部に位置するP4部で支承の破壊(トラス、鈑桁両方、セットボルトなどは吹っ飛んでいた)と主桁(トラス桁側)の屈曲、A1橋台側で支承の損傷と主桁の横ズレなどが発生していた。
 応急復旧では早期に交通を通すため、基本的に損傷した部分はジャッキで上げてサンドルを組んで損傷した支承の代わりとし、桁が屈曲しているところは、コンクリートで巻きたてる形で仮復旧し、変位拘束構造によるレベル1地震動に対する耐震性能の確保を図っている。また、鋼鈑桁がA2橋台方向に82mmもずれていたことから、A1橋台方向への桁移動を実施し、正常な位置に戻し、5月9日に対面通行での暫定供用にこぎつけた。

応急復旧時はすべて桁上から施工

 高所ということで極力夜間作業は避けたかったが、5月9日開放という目標のため夜間施工も多少行ったという。現在は横に仮桟橋を構築している(後述)が、応急復旧時は足場の構築も含めて、全て桁上から施工したという。中でも4月29日に起きた余震は大きく、当時はまさにサンドルで桁を仮支持する時で、作業員は非常に怖い思いをしたということだ。


上下線の応急復旧内容(NEXCO西日本提供資料より)

応急復旧対策
 上り線の方が下り線よりも若干損傷が大きかったため、まずは損傷の少ない下り線に傾注して応急復旧工事を施した。


地震の影響で開いていたA1伸縮部とその応急復旧
(NEXCO西日本、三井造船鉄構エンジニアリング(現:株式会社三井E&S鉄構エンジニアリング)提供、以下注釈なきは同)


A1鈑桁部の損傷状況及び補修施工状況

同部の補修完了状況

部材の調達が難しい
 じゃあ現場に工場を構築しよう

 応急復旧時は、「部材の調達が非常に難しかった」(三井造船鉄構エンジニアリング(現:株式会社三井E&S鉄構エンジニアリング))という。そのため設計者と工場で部材製作に従事する技術者、実際の架設を行う施工技術者が現場に集結し、図面を現場に即して描き、工場の製作設備を一部運送し、現場で加工して製作するということも行った。具体的には高速道路上に仮の工場を構築して、手持ちの材料を現場に合うように加工した。復旧のため必要な人数は最大で70人に達したが、充足させるため「九州だけでなく関東からも応援を呼んだ」(同)。応急復旧時に技術的に苦労した点は、「方針決定と現場施工をほぼ並行しなくてはいけなかった」(同)点。例えば湾曲した鈑桁の端部を巻き立てコンクリートによって補修することについて「桁を切断するのでは無く、端部をコンクリートで巻き立てて剛度やねじり耐力を高めるとともに新たな支点を設ける」(同)イメージはできていた。


P4鈑桁部の損傷状況と鈑桁端部のコンクリート巻き立て状況

ギリギリのジャッジは福永部長が判断
 元請にかかるプレッシャーを低減

 しかし実際の施工は人の手配、物資の調達共に綱渡りだった。まずレベル1の余震に耐えられる変位制限が必要であったため、その点を考慮しながら進め、下部に型枠を配置して床版に注入口を開けて上からコンクリートを流し込みコンクリートの横梁で4主桁を一体化して新たな支点を造り、H鋼のサンドル+高さ調整用ジャッキで仮支承を設けた。「下り線だけでも早く開放したいというNEXCOの方針があったため技術的にじっくりと考える暇がなかった」(同)というのが実情だったが、ギリギリの選択は福永靖雄・九州支社保全サービス事業部長(当時)が現場を視察して判断したため、元請けにかかるプレッシャーは大きく軽減されたようだ。


施工が完了した鈑桁部の対策工(右写真は井手迫瑞樹撮影)

A2上沓は鋳鉄から厚板へ

 トラス桁で一番損傷が大きかったのは支承の上沓部の亀裂だ。ごつい鋳鉄製の支承であるため同じものを製作しようとすると、最短でも3か月かかり応急復旧には間に合わない。そのためA2では厚板を溶接して亀裂が生じた上沓の代わりとした。これにより製作期間を1か月に短縮した。またP4ではリブ付H鋼で仮支承を設置している。上り線の応急復旧も6月末に完了、地震後2か月半で仮復旧であるが4車線供用を実現している。


トラス桁A2部の支承損傷状況と上沓撤去状況

施工完了状況(右写真は井手迫瑞樹撮影、その後の本復旧・耐震補強ではこの部分は切断する)

トラス桁P4部の支承損傷状況と撤去状況

施工完了状況(その後の本復旧・耐震補強ではこの部分は切断する)

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