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多くの橋脚で回転杭工法を採用

国交省岐阜国道 東海環状自動車道の養老IC~岐阜・三重県境9kmの下部工が終盤 

公開日:2023.12.18

 国土交通省中部地方整備局岐阜国道事務所と中日本高速道路名古屋支社岐阜工事事務所が工事を進めている、東海環状自動車道の岐阜県西南部の工事が佳境を迎えている。岐阜県西部における東海環状自動車道は大野神戸(ごうど)IC~養老ICまでが暫定2車線で供用されており、現在は山県IC~大野神戸IC間18.5kmと養老IC~岐阜・三重県境9kmの暫定2車線整備を進めている。山県IC~大野神戸IC間は2024年度、養老IC~岐阜・三重県境を経て(仮称)北勢IC間は2026年度の開通を目指し工事を進めている。とりわけ養老IC以南の水田地帯は、地下水位が高い軟弱地盤であり、養老山地山麓による被圧水頭が実にGL+4mに達する地域である。こうした状況から通常の杭基礎では施工が難しく、多くの橋脚で回転杭工法を採用している。採用基数は106基、杭径別ではφ1,000mmを16基436本、φ1,200mmを74基899本で施工している。また、先行して上部工を施工している津屋川橋鋼上部工では、陸上部鋼床版箱桁としては国内最長の658mを送り出す工事も行っている。その現場を取材した(井手迫瑞樹)

全106基中87基の施工が完了する予定

 記者が取材したのは、養老IC~県境付近の9kmの区間である。橋梁下部工は基礎がほぼ完了し、橋脚工事も進んでおり、今年度末までに全106基中87基の施工が完了する予定だ。一方、地盤改良工は現在、最盛期を迎えているが、盛土に着手していない箇所もあり、今後急ピッチで施工を進めていく。


林立する下部工

N値が1未満のごく軟弱な粘性土が約30mと厚く堆積
 低振動、低騒音、無排土施工で環境への負荷が少ない回転杭工法を採用

 現場は、濃尾平野西方の養老山地の山麓に位置し、土地利用としては水田が広がる平坦な地形である。津屋川や稲作のための水路も幾条にも伝っている。地下水が豊富なゆえに、地下水位はGL-1.0m以浅に測定されているので極めて高い。さらには滞水層であるAts層、G1g層で地下水が被圧状態であることが確認されている。とりわけ基礎の支持層であるGL-30m以深にあるG1g層の被圧水頭は実にGL+4mに達する。しかし、支持層までは、N値が1未満のごく軟弱な粘性土が約30mと厚く堆積しているため、同層を支持層とせざるを得ない。

 施工には、こうした被圧地下水と軟弱地盤下の橋脚基礎工に実績を有する回転杭工法を採用した。回転杭工法は、先端に回転貫入を容易にする翼形状を設けており、この翼が大きな先端支持力を得る役割を果たしている。低振動、低騒音、無排土施工で環境への負荷が少ない基礎杭である。一方で、場所打ち杭や鋼管ソイルセメント杭などのセメント・コンクリートを用いる杭基礎工法は、被圧地下水への適用性や濁水の地下水への流出が懸念され、更に土砂搬出ダンプの走行による水田環境への影響が出る可能性があった。

 施工は杭長を約10~12mごとに分割して貫入し、継手は全周溶接構造とした。杭長20m後半から30m前半が主だが、40m台のものも少なからずあり、最長は55.0m((仮称)大跡高架橋P28橋脚)に達している。

 基礎の施工方法は、ほぼオールケーシングと同じやり方だ。場所打ち杭と比べると、鉄筋かごがない分、施工スペースをコンパクトにできる。
 回転圧入のストロークは1回750mm程度で、30m程度の杭長であれば半日ほどで1本の施工が完了する。
 施工上、留意する点は杭芯位置の的確な測量と、施工時の立て起こしの確認をきちんと行うこと。また支持層への貫入及び杭打止め深度の確認は特に重要であり、「本施工の最初の杭(1本目)を試験杭とし、当該地盤における回転杭施工時の取得データと設計時のボーリングデータと比較・照合し、この2つのデータが相関関係であることを確認し試験杭以降の管理指標とした」(TSUCHIYA(東海環状北小倉南高架橋下部工事の元請)。具体的には「地盤性状を評価し、一定の地盤特性が確認されれば、支持層として判断する」(同)もの。回転杭工法にはJFEスチールのつばさ杭と日本製鉄のNSエコパイルがあり、前者は先端が2枚刃でありK値(トルクと貫入量の比によって算出される硬さ指標でいわゆるN値との相関性がある)、後者は先端がらせん状でありトルク値でそれぞれ管理しているが、「当該現場ではエコパイルを使用したが、その違いは施工に影響を与えるものではないため、どちらを選定するかは、現場ごとに判断している」(同)ということである。

 さて、今回施工したTSUCHIYAの現場は、現道に一部がかぶる箇所に橋脚を建設しなくてはいけなかったため、道路の切り回しから始める必要があった。切り回し後は、回転杭を施工した後、床堀から土留仮締切工、杭頭処理を行った。次いで、橋脚躯体工の施工に着手し、現在はフーチング及び柱まで構築し、今後は梁の施工を行う予定だ。台風や大雨などが生じた後は、湧水が生じ、コンクリート打設などの施工が一時的にできなくなる可能性があるが、「排水ポンプなどを設置しているし、そうした状況も考慮に入れて体制を組んでいるため、今のところ目立った工期の遅れはない」(岐阜国道事務所)ということだ。
 橋脚の施工に関しては、「マスコンクリートに該当するため、ひび割れ抑制対策の必要性の有無を温度応力解析にて行った。当現場においては、解析結果に基づきコンクリート打設後の養生方法(シート保温)及び養生期間にて対応した」(TSUCHIYA)。また、「当地域では近場の生コンプラントが限られているため現場同士のコンクリート打設日の調整が必要となるなどの側面があった。」(同)ということだ。

 同地では一部で盛土区間もあるが、それらはプレロードして沈下が収まった時点で、内側はペーパードレーン工法、外側は深層混合処理を施し、盛土施工を行っている。


回転杭に用いる鋼管

回転杭の施工状況(再掲)


東海環状北小倉南高架橋下部工事の施工状況

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