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広島高速1号線の供用から37年経過区間

広島高速道路公社 鮎信橋など3橋を同公社で初の床版取替

公開日:2023.12.18

 広島高速道路公社は、供用から37年が経過した橋梁のうち、鮎信橋、法道寺大橋、須賀谷上橋の3橋についての床版取替を来年度にかけて進めている。今年度に取替工事を行っているのは鮎信橋である。3橋はいずれも山岳部に位置し、凍結防止剤を散布する頻度が高く、また床版防水が全面施工されていないこともあり、塩害による床版下面までの貫通クラック及びエフロレッセンスの析出や摺り磨き現象による床版上面の土砂化などが生じており、床版取替を行うものだ。今回は現場取材した鮎信橋を中心に報じる。(井手迫瑞樹)

既設床版厚は200mm 床版裏面にうき・剥離、貫通ひび割れも
 3橋合わせて2,400m2強の床版を取替え
 

 3橋はいずれも1986年に供用された連続鈑桁橋である。鮎信橋は橋長85mの2径間連続非合成4主鈑桁橋で取替面積は800㎡、法道寺大橋は橋長100mの3径間連続非合成4主鈑桁橋で取替面積は917㎡、須賀谷上橋は橋長75mの2径間連続非合成4主鈑桁橋で取替面積は707㎡となっている。


床版取替施工前の鮎信橋

 3橋とも昭和55年道路橋示方書に基づいて設計されている橋であり、既設床版厚は200mmしかない。床版防水は橋脚部を中心に20mの範囲には設置されているが全面を覆ってはおらず、また地覆立ち上がり部も設置されていない。
 高速1号線の橋梁については2011年から定期点検を始めており、鮎信橋は初回点検時に床版裏面のうきや剥離が発生していた。
 次いで行った2016年の定期点検では、床版の貫通ひび割れが見つかるなど損傷が進行しており、法道寺大橋や須賀谷上橋でも同様の損傷が見つかった。さらに2021年の定期点検では床版裏面の鉄筋露出が確認されると共に、上面の土砂化も発生したことから、3橋について床版取替を選択するに至った。

舗装厚は60→80mmと厚くなるも桁や下部工の補強は不要
 来年度施工する2橋はエルスジョイントを採用予定

 さて、今年度床版取替を行うのは鮎信橋である。鮎信橋の幅員は9,400mmで、今回は全幅×橋軸方向1,650mmのプレキャストPC床版パネルを42枚用いて、床版を取替える。新設するPC床版の厚さは220mmであり、舗装厚は既設60mmに対し床版取替後は基層、表層とも40mmの合計80mmとした。舗装部を含めた床版重量は取替前に対し1割以上重くなるが、詳細設計の結果、桁や下部工の補強は不要と判断した。継手はオーソドックスなループ継手を採用し、両端部は615mmの部分現場打ちRC床版(床版厚は310mm)とした。


鮎信橋の上PC床版割付図と床版撤去・架設図

 なお来年度に施工する2橋は、いずれも継手部に極東興和と日鉄エンジニアリングが共同開発したエルスジョイントを用いる予定だ。

 エポキシ樹脂塗装鉄筋(安治川鉄工製)は継手部や現場打ちRC床版部および壁高欄部などに用い、その他は裸鉄筋を使っている。

 施工はまず、舗装切削を行った後、鋼製高欄を撤去し地覆部(ワイヤーソー)、床版部(ロードカッター)を切断し、床版と地覆を一体(半断面)で吊り撤去した。


既設床版撤去状況

 さらに120tオールテレーンクレーンを据付け、午後にセンターホールジャッキで新設パネル4枚分の既設床版を剥がして半断面ずつクレーンで吊り上げ撤去し、背後に待機したトレーラーに載せ、場外へ搬出した。既設床版撤去後は、桁上フランジ上面の残コン撤去、ケレン、面取り、有機ジンクリッチ塗装を施し、スポンジ型枠(トメルンダー)を配置した。翌日の午前中、搬入した4枚の新設床版パネルを設置、2日に1回スタッド溶植を行い、床版と桁の接合部に無収縮モルタルを打設し、一体化した。A2からA1の片押しでこうした工程を繰り返していった。

運ばれてきたプレキャストPC床版


クレーンで吊り上げて設置

 間詰部(1個所350mm)は41箇所あるが、これは3回に分けて打設した。打設時に用いるコンクリートはプレキャストPC床版と同じ50N/㎟の圧縮強度を有し、スランプ12cmの膨張剤入り早強セメントを用いた。さらにスタッド孔の間詰材、端部の場所打ちコンクリート部も同様のコンクリートを用いて打設している。打設後はアクアマット(早川ゴム製)を用いて湿潤養生を行った。また、端部のジョイントはクリテック工業製を使用した。


高欄の施工状況①(配筋→型枠設置→コンクリート打設)

高欄の施工状況②(コンクリート打設完了状況→含浸材塗布状況)

 引き続いて、床版防水(NEXCO仕様のGⅡ)を施工し、舗装を敷設して完成となるが、床版防水はニチレキのHQハイブレンAU工法、舗装は基層にポリマー改質アスファルトⅢ型-W(13)、表層にポリマー改質アスファルトH型(13)を用いて施工している。


床版防水施工状況①(防水前の研掃→プライマー塗布、防水材の吹付)

床版防水材施工状況②(端部保護材施工状況→舗装接着剤塗布状況)

対面通行期間の短縮が必須条件
 作業者の熱中症対策には万全を期した

 間接的ではあるが、施工上苦労したのが規制およびう回路の運用だ。
 規制延長は2.1kmにおよび施工期間中は取り替える上り線側を閉鎖し、下り線側を対面供用している。NEXCOに比べて幅員が狭いため、「対面通行期間を1日でも短くしなければならない」(広島高速道路公社)。また、広島で開催されたG7サミットの期間中は施工できず、さらには雪氷期間までの対面通行規制解除が求められているため、「現場としてはかなりのプレッシャーを感じる中での施工となっている」(元請の極東興和)。

 現場は6月7日から規制を開始し、9月末までに壁高欄工が完了し、それから防水工や舗装工を行う「10月末までの対面通行規制解除はかなりタイト」(同)であった。

舗装施工状況

 現場はかなりの暑さであり、塩分や水分の適時補給や休憩時間の確保は絶対条件であり、元請側から物資を供給することで作業員が積極的に塩分や水分を補給して熱中症にかからないよう配慮していた。
 8月末からは11月までの期間は、床版下で2,830㎡の鋼桁塗替えを行ったが、密閉された空間での塗装塗替え作業は、さらに過酷な状況であったため、作業員の熱中症対策にはさらに万全を期した。なお、塗膜除去および素地調整は塗膜剥離剤+ブラストで施工した。


完成状況

 設計は西日本高速道路エンジニアリング中国。製作・施工元請は極東興和。一次下請は北部組、栗栖工業、ガイアート、司産業、岡部、長崎塗装店、ヤマダ、昇栄通信工業、主要二次下請はコンクリートコーリングなど。

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