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仮桟橋構築、ICT活用の取組み、NATMによるトンネル掘削を見学

国土交通省兵庫国道事務所 洲本バイパスで学生を対象とした現場見学会を開催

公開日:2023.09.26

 国土交通省近畿地方整備局兵庫国道事務所は8月31日、整備を進めている一般国道28号洲本バイパスの現場見学会を開催した。明石工業高等専門学校の学生4人と同校都市システム工学科・鍋島康之教授、同事務所のインターシップ学生3人(うち、1人は明石高専生)が参加し、2現場の見学を行った。
 当日は、午前中に同事務所洲本維持出張所で、同省の仕事内容、洲本バイパスの事業概要、施工者による2工事の概要説明、および各現場における一連の施工過程をまとめた動画を視聴した。見学会では施工過程の一部しか見ることができない。動画は、特にトンネル工事で削孔、装薬、爆破、吹付け・鋼製支保工・ロックボルトなどの掘削支保工作業や覆工防水工作業といった、一連の過程を普段見ることができない視点で纏められており、トンネル工事全体のイメージが得やすいものとなっていた。午後には、宇山C地区改良他工事、炬口(たけのくち)トンネル南部工事の順で現場見学を実施した。


洲本維持出張所で、工事概要などの説明を聞いた。左写真後列右端が鍋島康之教授。
(左写真:兵庫国道事務所提供。注釈なき場合は以下、同/右写真:大柴功治撮影。以下=*)

各工程に説明が入れられ、施工過程がわかりやすい動画となっていた

 宇山C地区改良他工事(施工:株本建設工業)では仮桟橋構築とICTを活用した取組み、炬口トンネル南部工事(施工:前田建設工業)ではNATM工法による施工について説明があり、参加者は施工者からの説明に熱心に耳を傾けていた。また、「3Dレーザースキャナー活用による測量業務の効率化」や「覆工コンクリートの脱型時期」など、多くの質問がなされ、工事への学生の関心の高さが伺えた。鍋島康之教授は「高専生にとって現場に出ることは教育のなかでも重要になっているが、最近は教育課程がタイトになり、その機会が減少している。モノづくりに携わることになる学生が早くから現場の雰囲気をつかめることは意義がある」と評価した。

洲本バイパス 延長6.0kmのうち未開通区間は2.4km
 開通区間では交通量が約4割、事故件数が約5割減少

 洲本バイパスは、洲本市内の交通混雑の緩和および交通安全の確保、神戸淡路鳴門自動車道洲本ICへのアクセス強化などを目的として計画された延長6.0kmの2車線道路だ。終点側の洲本IC~宇山間(3.6km)は開通済みで、起点側の炬口~宇山間(2.4km)の整備が進められている。未開通区間の用地取得率は100%、事業進捗率約83%(2022年度末)で、構造物では(仮称)炬口トンネル(963m)と(仮称)陀仏川橋(64m)がある。


洲本バイパス計画図 ※拡大してご覧ください

 開通区間では、現道(旧国道28号)の交通量が約4割減少、事故件数も約5割減少するなどの整備効果が見られた。未開通区間と並行する国道28号は、死傷事故率が兵庫県平均の約1.6倍となっていることから、全線開通によるさらなる渋滞緩和と安全性向上が期待されている。

橋梁工事のための仮桟橋付替えを行う
 支持杭打設ではテーブルマシン式ダウンザホールハンマー工法を採用

 宇山C地区改良他工事は、(仮称)陀仏川橋施工のための仮桟橋設置工と土工部の改良工が主な工種となっている。現場では構築された仮残橋と、GPS情報を元にしたマシンガイダンス(機械制御システム)を搭載した3Dバックホウによる切土施工、3次元データによる現場管理を見学した。


3Dバックホウの説明を受ける参加者。運転席にも上った(撮影=*)

 仮桟橋設置工は、工程上、次期下部工工事で支障となる部分の撤去と、新たに下部工工事のための仮桟橋を構築するもの。構築する仮桟橋は2箇所で、合計延長は約90m、面積540㎡、鋼材は約300tを使用した。また、(仮称)炬口トンネルへのアクセスなどの土工事も実施する。なお、株本建設工業が本工事と別工事で構築した仮桟橋は、総延長195m、総面積1,536㎡、総重量735tとなっている。


仮桟橋工計画図 ※拡大してご覧ください/写真左側から手前の仮桟橋方向に(仮称)陀仏川橋が架かる予定(右写真撮影=*)

 仮桟橋の支持杭打設では、テーブルマシン式ダウンザホールハンマー工法を採用した。施工箇所が川岸の傾斜地であり、硬岩を含む地質となっていたためだ。
 施工は、支持杭となるH鋼を打込むためのH鋼の架台を構築し、架台上にテーブルマシンを設置する。ダウンザホールハンマーは圧縮空気の振動で岩を叩き、テーブルマシンでダウンザホールハンマーを固定および回転させながら削孔していった。


架台上に設置されたテーブルマシン

ダウンザホールハンマーによる削孔

 掘削後には支持杭の建込みを行い、バイブロハンマーで支持層まで打設した。支持杭の最大杭長は20mで、平均15mであった。H鋼は長さ12m以上の運搬ができなかったので、建込み時にボルトで接合をしている。施工にあたっては、「2方向から計測を行い、支持杭の鉛直精度の確保に務めた」(株本建設工業)という。


支持杭の建込み(左)・ボルト接合(中央)・打設(右)

 支持杭打設後は橋脚部に強度確保のために水平材とブレスを設置し、主桁と覆工板を架設していった。ハンマー吊込みや主桁架設などでは、65t吊テレスコクレーンを用いた。仮桟橋の上空約24mには高圧線が架かっており、離隔4mを確保する必要があったことから、施工状況に応じてブームを任意の長さに変えられるクレーンを採用する必要があったためである。1スパン7~10mで構築していき、付替え仮桟橋は約2カ月半で施工を完了した。


補強材(左)・主桁(中央)・覆工板(右)の設置(撮影=*)

上空約24mに架かる高圧線/仮桟橋の橋脚部(撮影=*)

完成した仮桟橋

 仮桟橋はH鋼を中心にC型鋼材、アングル材を組み合わせて構築していったが、既設仮桟橋の陀仏川渡河部には、プレガーター橋(20m/ヒロセ製)を採用している。


渡河部にはプレガーター橋を採用(撮影=*)

マシンガイダンスを搭載した3Dバックホウで手戻りなく施工
 3Dレーザースキャナーで点群情報を取得 3Dモデリングで現場管理

 改良工は、主に掘削工(切土)17,790m3と法面工419㎡となる。


宇山C地区標準断面図 ※拡大してご覧ください/掘削工が進められている(右写真撮影=*)

 掘削工ではi-Constructionの取組みとして、3Dバックホウでの施工を行っている。GPS情報と重機内の端末に取り込んだ3次元設計データを連動させることにより、重機やバケットの位置を正確に把握し、切出し位置、角度、高さを立体でモニターに表示して、オペレーターにナビゲーションを行うというものだ。具体的には、バケットの先をあと1m掘削、右側2mまで掘削という施工情報がすべてガイド表示されている。GPSの誤差はバケット位置で1~2cmとわずかである。


左写真右端の突出した棒がGPS受信機/運転席のモニターに掘削情報が表示される(撮影=*)

 このマシンガイダンスにより、丁張の必要がなくなるとともに、熟練していないオペレーターでも熟練工と同レベルの掘削が可能となる。「掘削スピードは従来とほぼ変わらないが、正確な掘削ができて手戻りがないので、施工効率の向上が図れている」(株本建設工業)。

 現場見学会では、本工事でのCIMの取組みの説明も行われた。測量で3Dレーザースキャナーを使用して点群情報を取得し、事前に作成した3次元設計データと重ねることで現場の3Dモデリングを作成。それを施工時のシミュレーションや情報共有、課題解決など、さまざまな現場管理に活用した。また、完工した別工事では出来形管理にも利用している。


現場事務所での3DレーザースキャナーとCIMの取組みの説明(撮影=*)

3次元設計データ/点群情報に色彩情報を付与した状態/3次元設計データと重ねあわせた3Dモデリング

 本現場の施工面積は約30,000㎡で、それを10箇所に分割して点群情報を取得。その取得に要した日数は2日で、従来の測量方法と比較すると半分以下に削減できたという。前述の現場管理での活用を含め、CIM導入で大幅な効率化が図れている。
 宇山C地区改良他工事の一次下請けは、中村建設(道路土工)、松本伊(仮桟橋工)、日特建設(法面工)、入谷緑化土木(排水構造物工)、森長組(舗装工)など。

▼次ページ:炬口トンネル南部工事(施工:前田建設工業)

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