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断面交通量は約21,000台で、大型車混入率は約4割

NEXCO中日本 中央道岩の沢橋(上り線) R=300、縦横断勾配5%、斜角も変化する現場で床版取替

公開日:2023.09.19

 NEXCO中日本名古屋支社が所管する中央道岩の沢橋(上り線)で半断面施工による床版取替が行われている。半断面施工にしたのは対象橋梁の約500m離れた場所に給油施設が設置されている阿智PAがあり、全断面取替を行うと、規制の関係上、同PAが使用できなくなるためだ。施工条件も厳しい。曲線半径は300mと厳しく、斜角も81~99°と変化する。さらに縦横断勾配も5%前後ある。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

概要図


曲線半径は300mと厳しく、斜角も81~99°と変化する。さらに縦横断勾配も5%前後ある

既存RC床版厚は280mm 25年前に50mm増厚
 エフロレッセンスは増厚後も床版全体にわたって析出

使用・損傷状況
 同橋は1975年に供用された橋長96.3m、幅員11.77~11.90mの鋼3径間連続非合成鈑桁橋(4主桁)である。1972年道路橋示方書に基づき設計された。既存RC床版厚は280mmである。建設時床版厚は230mmであるが、98年に50mm床版増厚を施したもの。建設時床版は防水工を施しておらず、凍結防止剤を散布していた。増厚時は界面にひび割れ補修や新旧コンクリートの付着性能を高めるための接着剤は塗布していない。そのため、一部の箇所で界面近傍に水平ひび割れが生じていた。取替え前の路面状況は、「ひび割れから水が入って凍結融解し、土砂化して床版だけでなく舗装にも損傷が生じ、路面はパッチングだらけで小補修を繰り返していた」(NEXCO中日本)。下り線の調査結果であるが、内在塩分量は、床版の鉄筋近傍値が0.2kg/m3、下部工の鉄筋近傍値が1.3kg/m3である。しかしエフロレッセンスは増厚後も床版全体にわたって出ており、塩分は抜けていた可能性がある。

 同橋の断面交通量は約21,000台で、大型車混入率は約4割に達していることから累積疲労損傷の可能性もあった。こうしたことから床版取替が必要と判断した。床版取替面積は上り線全体で約1,100㎡となっている。


走行中の大型車

供用車線側の車線幅を本設と同じ3.5m確保できるように新設床版の幅を決定
 高欄の間詰部を先行架設側に105mmずらし、鉄筋の擦過損傷を防ぐ

床版の設計・計画
 さて、新設床版厚(床版支間)は基本、220mmである。既設床版はハンチ厚で横断勾配を調整している構造であったため、新設床版でも同様にハンチ厚で横断勾配を考慮した床版形状となっている。標準版のハンチ厚は配置場所に合わせて4タイプ用意している。
床版の撤去・架設は半断面換算で90パネルとした。撤去パネル一枚当たりのサイズは橋軸方向2,000mm×橋軸直角方向6,000mmで重量は平均約10t(壁高欄込みの重量)、新設パネル1枚当たりのサイズは橋軸方向1,850mm×橋軸直角方向5,500~6,500mmで重さは平均9t(壁高欄込みの重量)である。

 岩の沢橋はR300の曲線橋であり、一般車の走行安全性の向上が課題であった。詳細設計の段階で、供用車線側の車線幅を本設と同じ3.5m確保できるように新設床版の幅を決定することで、一般車の走行安全性向上を図った。「幅員は12mなので十分余裕がある。先行して取り替える新設床版と既設床版の間は少なくとも100mmの離隔を確保し、(床版回転時などの)施工性を確保した」(同)。


新設床版と既設床版の間は少なくとも100mmの離隔を確保

 既設床版撤去は半断面のため壁高欄ごと切断撤去し、新設床版はプレキャストRC壁高欄を仮留めした形で一体に架設していく。仮留めした壁高欄は接続部を床版と同じ箇所にすると架設時に床版部の鉄筋が先行架設した壁高欄に当たり擦過損傷を招く可能性がある。そのため高欄の間詰部を先行架設側に105mm(床版間詰部210mmの半分)ずらすことによってそうした損傷を招かないように配慮した。


高欄の間詰部を先行架設側に105mm(床版間詰部210mmの半分)ずらす

 床版の撤去・架設は門型床版架設機(ハイウェイストライダー)を用いたA1→A2方向への片押し施工とした。ハイウェイストライダーは約40t弱の重量であり、長手方向(橋軸方向)は全長約25m、脚幅は半断面のため4m弱で使用した(6点支持)。架設機の脚の位置は主桁直上では必ずしもなく、進行方向から見て右側の3本は既設床版上の厚いハンチ部におき、左側の3本は同橋梁特有の左右に長い厚みのある地覆部に置くことで反力(とりわけ受替え時の反力)に耐えられるようにしている。架設機のレベリング確保は油圧シリンダーを使って手動で微調整すると共に、サンドルを挿入して調整し、縦横断方向に対して水平になるようにした。移動は既設床版上に敷くレールで行っている。

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