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剥落防止工では「BMシート工法」を用いる

高知県大月町 柏島橋修繕工事 コンクリート表面含浸工で「アイゾールEX」を採用

公開日:2023.08.30

 高知県大月町は、同県最西端に位置する柏島と本土側を結ぶ町道渡場線・柏島橋の修繕工事をこのほど完了した。海上部に架かることから塩害によるコンクリートの損傷が進行しており、断面修復工および表面保護工、剥落防止工などを行ったもの。断面修復工では内在塩分を吸着して防錆環境を実現する「SSI工法」を、表面保護工では塗膜と含侵の機能を併せ持つ高分子系浸透性防水材「アイゾールEX」を、剥落防止工では強度に優れた玄武岩を主材としたメッシュ素材を用いる「BMシート工法」をそれぞれ採用している。その現場を取材した。

透明度の高い海に架かる1967年に供用された橋長99mの橋梁
 塩化物イオン濃度は最大8.81kg/m3に達し、劣化損傷が進行

 柏島は、「東京から最も遠い地域と言われる四国西南地域の中でも、さらに西南端に位置する島」(大月町)だ。高知市や松山市から車で約3時間かかるが、「船が宙に浮いて見える」ほど透明度の高い海としてメディアやSNSで取り上げられ、多くの観光客が訪れる注目の観光スポットとなっている。同島は、1993年に供用され高知県が管理する新柏島大橋(橋長120m、2径間連続箱桁ラーメン橋)と柏島橋の2橋で結ばれている。今回工事を行ったのは、主に生活道路として利用されている柏島橋だ。


透明度の高い美しい海に架かる柏島橋(手前)。奥側が新柏島大橋(高知県大月町提供。以下、同)

手前が柏島側/橋梁一般図(※拡大してご覧ください)

 同橋は、昭和39年鉄筋コンクリート道路橋示方書に基づき設計され、1967年に供用された、橋長99m、全幅5.2m(有効幅員4.5m)の3径間単純PCポストテンション方式T桁橋(3主桁/支間長は等支間の33m)。下部工は半重力式橋台(直接基礎)、壁式橋脚(ケーソン基礎)となっている。
 海上部に架橋され、橋脚高が2.3m(P1)と低く、荒天時には海水がかかるとともに、飛来塩分の影響を大きく受けることから塩害による損傷が発生していた。桁下面と床版下面ではひび割れ、鉄筋腐食による剥落、地覆とコンクリート製防護柵では鉄筋露出、剥落、下部工ではひび割れ、鉄筋露出、支承部の腐食が主な損傷である。定期点検の判定区分はⅢとなっている。


損傷状況。桁側面/床版下面と桁下面

地覆/コンクリート防護柵

支承/下部工

 設計時の調査では主桁コンクリートの圧縮強度が55.9N/mm2以上であったことから、コンクリート自体は健全性を保っていると考えられたが、鉄筋のかぶり厚がハンチ部や中間横桁で2~5mmとなっているなど、多くの箇所で確保されていなかった。
 塩化物イオン濃度も表面から0~20mmの深さで最大8.81kg/m3、20~40mmで同7.63kg/m3、40~60mmでも同3.06 kg/m3に達し(いずれもG1桁内側部)、発錆限界濃度1.2kg/m3を大きく超えていた。そのため、さらなる損傷の進展が予想されることから、修繕工事を行うことにした。本工事の対象箇所は足場を設置して修繕できる桁下や床版下面、桁および地覆側面などで、橋面、下部工、コンクリート製防護柵などは来年度以降に実施していく予定だ。


補修一般図

断面修復工は主桁、張出床版下面、地覆水切り部の劣化部84㎡で施工
 PC鋼材定着部近傍では鉄筋の裏側まではつれず「SSI工法」を採用

 施工はまず、3月上旬からの足場設置後、断面修復箇所のカッター入れと、表面含浸工箇所に対してサンダーによるケレンを行った。表面含浸工では高分子系浸透性防水材「アイゾールEX」を塗布するが、その付着力を確保するために表面脆弱層の除去を行う必要があったためだ。ただ、対象箇所が桁外周および床版下面の全面、地覆側面の約1,400㎡に達しており、そのすべてのケレンをしなければならず、約14日と時間のかかる作業となった。カッター入れとケレンを先行したのは、「粉塵が出る作業を観光客が増える時期の前に完了させたかった」(一次下請けの三谷組)ためである。


断面修復箇所のカッター入れ(左)/サンダーによるケレン面積は約1,400㎡に達した(中央・右)

 断面修復は、主桁、張出床版下面、地覆水切り部の劣化部84㎡で施工している。塩分が60mmの深さまで浸透しているため、はつり厚は60mm以上とする設計だったが、張出床版下面と地覆水切り部の施工で課題が発生した。
 同箇所には横締めPC鋼材定着部が700~800mm間隔で設置されていて、定着部近傍は15mm程度しかはつれない状態となっていたのだ(それ以上はつると定着部を損傷させる恐れがある)。そのため、同箇所のはつり厚は15mmとせざるを得なかったが、それではかぶり厚が15mm以上ある鉄筋の裏側まではつることができないうえに塩分も残った状態となり、断面修復をしても再劣化し、剥落が発生する危険性が想定された。


断面修復工施工計画図/PC鋼材定着部近傍の断面修復

PC鋼材定着部近傍の断面修復箇所

同箇所のはつり後

 そこで断面修復工での塩害対策として、内在塩分を吸着して防錆環境を実現する「SSI工法」を採用することにした。定着部近傍以外のはつり厚は60mmとしたが、内在塩分を完全に除去できない可能性も考慮して再劣化を防ぐために、断面修復箇所すべてで同工法を用いている。
 同工法は、正に帯電させた層状構造を有する塩分吸着剤により塩化物イオン(Cl)を吸着し、予め保持していた亜硝酸イオンを放出することにより、長期的な鉄筋防錆効果を実現できるもの。塩分吸着材を含む補修材は、コンクリート躯体と同質のポリマーセメント系をベースにしているので、鉄筋や下地に対する付着耐久性に優れていることも特徴だ。塩分量から適切な防錆環境実現のための塗布厚を設定していくが、本現場では塩分量が多く、定着部近傍は15mmのはつりとしたことから、同工法の最大塗布厚である5mmで施工した。
 防錆材塗布後は、SSI工法に準拠した遮塩性ポリマーセメントモルタルを充填している。



SSI工法の施工

左官工法によるモルタル充填

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