桁撤去・架設は220tATCで施工
桁下ヤード内に横取り装置を設けて、既設桁及び新設桁を収納
次いで桁の撤去・架設である。撤去・架設とも基本は220t吊オールテレーンクレーン(以降、ATC)を使って施工し、交差点部などの直下で地組立ができない箇所のみ、桁の移動に多軸台車を活用している。撤去はだいたい1径間単位、架設は1ブロック約11mを2ないし3本つないだ形で施工している。架設もほぼ1径間単位としている。
今次現場の施工内容と施工範囲平面図
220tATCを用いての桁架設イメージ
撤去・架設と桁下ヤードをうまく活用している。桁下に横引き装置を備えた仮置き架台を設けており、桁をヤード内に収納し、その中で作業できる構造としているのが特徴だ。撤去した桁については、ATCで吊り下ろした後、そのまま横引き装置に預けてヤード内に収納し、内部で陸送できるサイズに切断した後、夜間に再び引き出し、ATCを用いてトレーラーに積込、搬出することを繰り返した。交差点部など間近に桁下ヤードの無い箇所については、ATCで桁を降ろした後、多軸台車に載せ、200m程度離れた桁下の仮置きヤードまで運んでいた(その後の工程は同じ)。
220tATCを用いた桁撤去と桁下への一時的な移送及び収納状況(井手迫瑞樹撮影)
架設については、撤去の逆パターンで、まず堺工場から陸送された桁ブロックを桁下ヤード内に搬入し、ヤード内で所定の延長に地組する工程をヤードがいっぱいになるまで行った後、順次横引きしてATCで吊り上げるという工程を繰り返した。架設についても交差点部など桁長の長い箇所については多軸台車で現場まで運び、ATCで吊り上げて架設する手法を採っている。
格納されている鋼桁(井手迫瑞樹撮影)
220tATCを用いての実際の桁架設(井手迫瑞樹撮影)
吊上げ・吊り降ろしについては、拡幅桁以外の本線桁と歩道に挟まれた極めて狭いヤードであるため、ATCのブーム長は約30m伸ばし、ブーム角は75°とほぼ立てた状態で運用しなければいけない箇所もあるなど、ここでも空間の狭さが施工の難易度を上げている。また架設の際は、仮設ベントを立てられない代わりに、既設鋼製橋脚をベント代わりの支点として利用するなど、ここでも合理的な施工に努めている。
桁の改良で特徴的な構造を有するのはなにわ筋を跨ぐ支間長73.2mの拡幅桁部分である。このスパンは直下の交差点への交通影響を考慮し、桁の架け替えではなく、部分的に流用することにした。改良前の同支間は、本線桁を支持しているP49およびP50の背面にある拡幅桁用の橋脚に支持されており、支間長は95.9mであった。この桁の支間長を本線桁と合わせるため、両本線橋脚より外側の桁を切断し、改めて73.2mの支間長として桁を流用することとした。そうすると「スパンが短くなるので、桁以外の死荷重(床版や舗装など)を載せても本線桁と同じ形状にならず、上に反るキャンバーが100mmほど残ってしまう」(元請のIHIインフラシステム)。
キャンバーが100mmほど残ってしまう
残ってしまう段差
なにわ筋を跨ぐ部分の桁は流用する/両本線橋脚より外側の桁を切断した(井手迫瑞樹撮影)
部分的流用部桁上面/横桁で本線桁と拡幅桁を繋ぐ/端部の仮設支持(井手迫瑞樹撮影)
そのため、橋桁を受けるために拡幅するP49およびP50の梁の高さをキャンバーに合わせて下げると共に、桁自体をジャッキで高さ調整することで、鋼床版の頂点部を本線桁と同じ高さに合わせる工夫を施している。当然のことながら両端部はキャンバー分、桁の高さが下がり隣接桁と高低差が発生するため、高さ調整用のSFRCを打設し、対応することを検討している。
高速本線は1車線規制 規制幅を減らすため490mm厚の防護柵を採用
既設RC床版との接続は孔明き鋼板ジベルを用いる
さて、桁架設の後は、本線桁の既設RC床版との接続である。
まず施工時の規制であるが、必要な作業のスペースを取って、高速本線は4車線のうち3車線を生かし、1車線だけを潰して固定規制を張って施工している。本線自体の車線を追い越し側に250mmずつシフトし、生じたスペースに規制帯のための仮設防護柵を置いた。仮設防護柵は、少しでも交通への負担を抑えるため、幅490mmと比較的薄いコンクリートブロック製(ケイコン製)を用いた。同防護柵は、少し背を高くすることで重さを稼ぐ構造としている。現場は床版張出し部を切断することで、本設の高欄がない状態であり、仮設防護柵には高欄と同じだけの強度を持たせている。
高速道路上の規制平面図および断面図
高速道路上の規制イメージ/プレキャストガードフェンス/規制概要図
車線運用ステップ図
仮設防護柵は幅490mmと比較的薄いコンクリートブロック製(ケイコン製)を用いた(井手迫瑞樹撮影)
床版切断状況
左写真を見るとわかるがギリギリのスペースでの作業を強いられた(井手迫瑞樹撮影)
こうした努力を行ってもなお、拡幅桁との接続を行うための施工に際して、既設切断位置と仮設防護柵の間は最も近接している箇所は90mmというギリギリのスペースでの作業を強いられた。
拡幅桁部は工程短縮およびRC橋脚への死荷重を軽減するため、鋼床版となっている。これと既設RC床版部を接合しなくてはならない。鋼桁部の鋼床版面は既設RC床版と同じ高さ位置に合わせているが、既設RC床版と鋼床版を接合するため、既設張り出し部を700mm切断し、さらに100mmほど端部を斫って、鉄筋を出しておく、RC床版と鋼床版の接続部はPBL鋼板(4~500mmピッチ)となっており、そのジベル部まで鉄筋が来るようエンクローズ溶接を行って伸ばし、橋軸方向にも配力筋を配置した上でコンクリートを打設し、既設RC床版と鋼床版を接続する。
桁切断状況
未切断の縦目地/切断後に端部鉄筋をはつり出した状況(井手迫瑞樹撮影)
RC床版と鋼床版の接続部(井手迫瑞樹撮影)
既設RC床版の端部はつりは、できる限りマイクロクラックが生じないようにコンクリートカッターとベビーチッパーを併用いて施工した。充填するコンクリートはビニロン繊維(クラレ製『RF-4000』)を混入した繊維補強コンクリート(36-18-20Hの早強コンクリート)を用いる。
現場打ちコンクリートの性状(井手迫瑞樹撮影)
(充填するコンクリートはビニロン繊維(クラレ製『RF-4000』)を混入した
繊維補強コンクリート(36-18-20Hの早強コンクリート)を用いる)
桁自体は横桁で接合されており、たわみ差は解消しているが、活荷重によって生じる小さなたわみに追従し、ひび割れ抑制を図るため採用したもの。床版厚は250mmで、スランプは筒先で18cm±2.0cmで打ち込み、十分に締固めを行う。但し、コンクリートの圧送は桁下からしか行えないため、鉛直15m、水平最大95mと100mを超える圧送距離となり、さらに夏場でのコンクリート打設を行うため、圧送管には養生マットと麻のシートを巻き、さらに散水することで圧送管ひいてはコンクリートの温度上昇を防いでいる。現場では打設工10人、左官工5人の体制を組み、3日間で300mの打設を完了させた。
鉛直15m、水平最大95mと、100mを超える圧送距離(井手迫瑞樹撮影)
間詰部の打設状況(井手迫瑞樹撮影)
床版打設後の養生状況
床版打設完了状況
床版防水工は既設RC床版の接続部、鋼床版ともグースアスファルトを用いている。
現在、その1工事は桁を架け終わり床版の接続工事が進んでいる。その2工事は橋面の舗装や高欄、桁の撤去を完了し、10月上旬から新設桁の地組を行い、11月から架設を行っていく予定だ。
その2工事の桁地組状況(井手迫瑞樹撮影)
元請はIHIインフラシステム。下請は河内橋梁、松和工業(撤去・架設工)・宇徳(自走多軸台車工)、コンクリートコーリング(既設床版・壁高欄撤去工)、平野クレーン工業(クレーン工)。近畿鉄筋コンクリート(壁高欄・2次床版工)。