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プレキャストリブとPC板を用いて工期短縮を図る

NEXCO中日本 新東名高速 敷地川橋 リブ付き張出床版を採用して拡幅を実施

公開日:2023.05.30

プレキャストリブは1日あたり平均8基を架設
 PC版は上り線240枚、下り線152枚を設置

 プレキャストリブは、端部を除く標準版サイズが橋軸方向0.38m×橋軸直角方向2.37m(重量830kg)で、ジオスター金谷工場で製作した。RC構造で、かぶり厚を満足しているため、すべて普通鉄筋としている。設置数は上り線120基、下り線76基となり、1日あたり平均8基(最大10基)を前述のクレーンを用いて架設していった。
 施工では既設壁高欄・床版撤去時と同様にクレーンの稼働に配慮する必要があったほか、縦横断勾配対応に慎重を期した。とくに横断勾配が上り線路肩側への3%の下り片勾配となっており、リブ1基に傾きが生じると全延長にわたり影響を与えることになる。そのため、架設ではチェーンブロックで吊りながら測量を行い、リブ先端の高さを確認しながら微調整をして所定位置に設置していった。設置後はアンカーボルトを固定し目地部に速硬モルタルを充填して、既設床版とプレキャストリブの接合を図った。



プレキャストリブの架設

 プレキャストリブ間に設置して床版底版として用いるPC板は、標準部橋軸方向1.11m×橋軸直角方向1.23m(下り線は1.25m)(重量240kg)のものを、1日に30~40枚を架設していき、上り線240枚、下り線152枚を設置している(製作はジオスター福岡工場)。施工は、リブの顎部に無収縮モルタルを敷き、リブ間に橋軸直角方向に2枚並べる形で設置したうえで、目地部にも無収縮モルタルを充填して、リブとの一体化を図った。



PC板の架設と無収縮モルタル充填(下左写真撮影=*)

プレキャストリブとPC板架設後(写真=*)

既設床版と張出床版の上縁鉄筋はエンクローズド溶接で接合
 上り線1,454本、下り線929本を3班で1日に約100本溶接

 床版上面の配筋では、はつり出した既設床版の鉄筋とリブ付き床版上の鉄筋をエンクローズド溶接で接合をしている。「供用路線と近接していて、はつり範囲が限定されていた」(NEXCO中日本)ことから、専用冶具で鉄筋を固定することにより極めて狭いスペースでの施工が可能な同溶接を用いることにしたのだ。新東名高速道路でも大代川橋(PC・鋼上部工)上り線工事(本工事と同様に浜松保全・サービスセンター管内の幅員拡幅工事)などで実績があることも採用理由のひとつになったという。
 本現場では同溶接のCB工法を採用して施工をしている。同工法は、セラミックス製の裏当て材を用いて半自動アーク溶接機で施工するもので、裏当て材が作業後に簡単に除去できるため外観検査が可能、接合部にコブができないためかぶり厚に影響を与えない、高速溶接が可能(溶接作業全体で圧接の2~3倍の高能率)といった特徴を有している。
 上縁側鉄筋は標準125mmピッチで配置されていて、上り線1,454本、下り線929本を1班2人体制であったのを3班に増やして1日あたり3班で約100本を溶接していった。数量が多く時間はかかったが、班を増やすことで順調に施工できたという。溶接工は、北陸ガス圧接、エヌダブルが担当した。



既設床版の鉄筋とリブ付き床版上の鉄筋はエンクローズド溶接で接合した(下左写真撮影=*)

上り線打設での水平圧送距離は最長40mに達する
 打ち継ぎ目処理ではコンクリート洗い出し表面処理剤「リタメイトCJ」を採用

 床版上面のコンクリートは、早強セメントに高性能AE減水剤と膨張剤(デンカパワーCSA タイプS)を添加し、強度36N/mm2、スランプ8cmで打設している。壁高欄も場所打ちで、高性能AE減水剤と膨張剤添加の普通セメント、強度30N/mm2、スランプ12cmで、床版打設が完了した箇所から配筋、型枠を行って施工していった。
 下り線は通行止めにした側道に打設箇所に応じてポンプ車を配置することができたが、上り線は側道との距離が離れていたことから橋梁下の上下線間の調整池際に配置せざるを得なかった。配管延長は、鉛直24m(ポンプ車ブーム)、水平最長40mに達した。そのため、コンクリートの品質を確保するために、試し練りの際に配管ロス率を見込んでスランプ値を設定したほか、当初は220tクレーン配置箇所(2箇所)からの打設計画であったが、配管延長を短くするためにP2橋脚下へのポンプ車設置に変更している。


水平圧送距離は最長40mに達した

 床版上面は1ロット約10m3で打設していったが、コンクリート厚が180mmと薄く鉄筋が2段で配筋されていたことに加え、下り線は本線側への下り勾配となっていたことから、打ち継ぎ目処理が課題となった。チッピングや(水が流れ出て本線に影響を与える恐れがある)ジェット水でのレイタンス除去が困難だったためだ。そこで、コンクリート洗い出し表面処理剤「リタメイトCJ」を採用して、打ち継ぎ目処理を行った。型枠に同表面処理剤を貼り付けて打設後に軽く水洗いをするだけでレイタンスを均一な深さで除去できる特徴を有していることがその採用理由となった。


打設作業

「リタメイトCJ」による打ち継ぎ目処理

打設完了後

足場はクイックデッキを約2,100㎡採用

 床版防水は高性能床版防水工法(グレードⅡ)を採用し、舗装は基層がFB13、表層が高機能舗装Ⅰ型となっている。
 足場は、日綜産業の先行床施工式フロア型システム吊足場「クイックデッキ」を約2,100㎡で採用した。調整地上の足場設置となるために吊点からの跳ね出しによる先行床施工が可能なこと、また足場上に作業足場を据え付けられる広い吊チェーン間隔(最大5m×5m)を実現し、段差や隙間がないことから採用している。


足場は「クイックデッキ」(日綜産業)を採用した

 元請は、熊谷組。一次下請けは、植松鈴木組(架設工)、小田鐵鋼(架設工、遮音壁工)、川崎技興(上部工一式、揚重工)、ガイアート(伸縮装置工、床版防水工、舗装工)、ナガポンエス(圧送工)、カナエ(排水装置工)、アウトウオーター(剥落防止対策工、表面保護工)、阿佐電機(受電設備工)。

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