終点側からの片押し方向で床版を撤去・架設
直下の市川の環境を配慮した養生を行う
床版の撤去・架設は、80tオールテレーンクレーンを使用し、終点(A2)→起点(P14)に片押しで施工している。施工が終点側からの片押しになったのは、起点側のみでしか工事車両の出入りの安全性が確保できなかったためだ。撤去は床版部は橋軸方向では約2m、橋軸直角方向では幅員の約半分(約4~5m)ごとにロードカッターで先行切断する。地覆・高欄部は先行して吊切り撤去せず、床版と一体化して切断した。その後、センターホールジャッキで既設床版と桁との縁を剥がし、クレーンで吊って、後方に待機しているトラックに搭載して撤去する。カッターは湿式のため、直下の市川にノロを含んだ水が流れ込まないように、足場を遮水シートで覆うと共に、シート内にたまった水を汲み上げて回収し、中性化処理している。
床版や地覆・高欄部の切断状況
既設床版撤去状況
遮水シート敷設状況
HSLスラブ 従来床版に比べ20%の軽量化を実現
MRデバイスを用いた遠隔臨場による工場検査を実施
床版撤去後、主桁上フランジ上面を3種ケレン相当で研掃し、腐食部分には防錆塗装(ここではローバルを採用)を施し、主桁上面にソールスポンジ型枠(トメルンダー)を設置する。同型枠はプレキャストPC床版との間の間詰モルタル打設時に用いるもの。
次いで、元請であるIHIインフラ建設の滋賀工場から運んできたプレキャストPC床版(HSLスラブ)を同じクレーンを使って架設する。
主桁上面の残コン撤去状況/同研掃状況/同トメルンダー設置状況
床版架設状況①
床版架設状況②
HSLスラブの1枚当たり重量は約8t、サイズは1.99×9.34mのフラットなパネルを用いた。床版厚は既設床版厚が240mm(桁上の最大厚)に対し、HSLスラブは同210mmと薄層化しつつ設計基準強度50N/mm2を確保し、軽量骨材を使用していることと併せて20%の軽量化を実現している。HSLスラブは品質を確保するため、①人口軽量骨材は、練混ぜ直前の含水率が2%以下であること、②単位容積質量が1.9t/m3以下(実際は1.8t/m3)であることを確認して製作している。
HSLスラブはIHIインフラ建設の滋賀工場で製作しているが、その際はMRデバイスを用いた遠隔臨場による工場検査を実施している。道路公社側と工場を双方向で結び、カメラ画像を事務所と共有することで遠隔立会を実現した。PC床版の配筋モデルを作成し、モデルとの重ね合わせ及びデジタルスケールを使用し測定結果の配筋帳票への自動転送を行う。兵庫県福崎町の公社管理事務所と滋賀県東近江市五箇荘にある滋賀工場の間を行き来することなく工場検査に立ち会えるため、立会に伴う時間的コストを大きく削減している。
HSLスラブ製作状況
工場検査は遠隔臨場で行った
床版撤去・架設は、1日に新設2~3パネル程度を架設していくことを繰り返していった。
PCケーブルによる縦締め構造を採用
東拓工業の蛇腹機構を用いたカップラーシースで接続
HSLスラブ同士の継手はPCケーブルによる縦締め構造を採用している。PCケーブルの挿入、グラウトの充填を確実に行うため、プレキャスト床版パネルのポリエチレンシース同士の継ぎ目はきちんと接続できるようにしなくてはならない。同現場では東拓工業のジャバラ機構を用いたカップラーシースを用いることで床版架設時のシースの接続を容易かつ確実にした。
蛇腹機構を用いたカップラーシースを用いる
慎重に床版架設
設置された床版の状況
こうして、プレキャストPC床版の架設を完了し、現場打床版の打設が完了した後、床版目地部のモルタルを打設して、PCケーブルを挿入して縦締め緊張する。次いでスタッドジベルを1つの孔につき2本、1パネルにつき16本溶植し、桁と床版の接合部に無収縮モルタルを打設し、最後にシース内にグラウトを充填して床版全体を一体化した。
PC床版連結部の目地モルタル打設状況/目地無収縮モルタル打設状況
縦締めPCケーブル緊張状況
グラウト注入および完了状況
スタッド溶接状況
その後は地覆や高欄・水切り部の配筋を行い、型枠を配置して現場打ちコンクリートを打設していく。また、端部とジョイント部の数か所は場所打ち部となっており、同部分だけはRC構造として施工した。
ジョイントは、クリテック工業のハイブリッドジョイント(ゴムと鋼板に複合ジョイント)を採用した。
支承はP14、P17、A2で金属溶射を施す
P14とA2について落橋防止ケーブルと横変位拘束構造を設置
その後、アスファルトシート系の床版防水工を施工(床版防水工は第4橋の一部も施工する)し、舗装は改質アスファルトⅡ型を1層(厚さ50mm)敷設して完了する。
床版取替完了後は、第6橋に上下線間の桁連結を行う。連結箇所は第6橋の中央分離帯部となる。将来の大規模修繕、更新工事や交通量が大きく減少した場合の対面通行への切り替えの際に第6橋上で交通切替を行うために、上下線の連結を行うもの。また、P14とA2について落橋防止ケーブルと横変位拘束構造(SEリミッター)を設置する耐震補強を施す。支承に関してはP14、P17、A2の支承がかなり腐食していることから金属溶射を施し、長期耐久性の向上を図る。
また塗替えを、下り線落橋防止装置取付部及び上り線第6橋の端部で行う。既設塗膜は鉛を含んでいるため、既設塗膜の撤去には湿式剥離材を採用している。
現在は下り線の床版取替工がほぼ完了した状況だ。
設計はパシフィックコンサルタンツ。元請はIHIインフラ建設。一次下請は廣内工業(床版取替・撤去一式など架設工)、平野組(舗装工)、主要二次下請はホープ(塗装、溶射、落橋防止装置設置、削孔)、サンカッティング(切断工)。