オー・ジー、極東メタリコンと共同 1.0kg/m2を塗布した場合、理論上25,000mg/m2の塩分を吸着可能
大伸化学 鋼構造物用造膜型塩分低減剤『ソルトリッパーFM』を開発
大伸化学とオー・ジー、極東メタリコンは、錆や腐食、断面欠損の原因となる塩分が付着あるいは浸透した橋梁など鋼構造物において、その表面にペースト状の水系エマルジョンを塗布し、養生後に剥がすもしくは仕上げブラストを行うことによって、塩分を低減可能な鋼構造物用造膜型塩分低減剤『ソルトリッパーFM』を開発した。同塗料は「1.0kg/m2を塗布した場合、理論上25,000mg/m2の塩分を吸着可能」(大伸化学)としている。3社は、塩分環境が厳しい鋼橋など鋼構造物において、水洗いによる塩分除去が難しい箇所における塩分低減手法として積極的に提案していく。(井手迫瑞樹)
ソルトリッパーFMの施工状況
塗膜のダレを起こさないように増粘剤を付与し、膜形成を強固に
塩分を60~95%低減
鋼橋などの塗替え工事においては、塩分環境が厳しい箇所の場合、素地調整後も鋼道路橋防食便覧の規格値である50mg/m2を大きく超える箇所が散見される。そうした箇所においては、水洗いなどを施して規格値以下にしたり、塩害に強い下地塗料などを塗布している。しかし、水洗いは養生面で手間がかかり、かつできる箇所が限られている(直下に道路あるいは河川などがある箇所では難しい)。塩害に強い下地塗料は工程やコストが増えてしまうという課題を有している。
ソルトリッパーFMは、水と樹脂、増粘剤などから形成される。水が主材料のため、塗膜のダレを起こさないように増粘剤を付与し、膜形成を強固にする働きを与えている。また、水は鋼材表面に付着した塩分をソルトリッパーの方に取り込む役割を果たす。その後、養生して乾燥するが、塩分は樹脂の働きによって物理的に拘束される。これらが同製品の塩分低減メカニズムである。
塩分低減メカニズム
施工は、通常のブラストを施した後、鋼材表面に水系エマルジョンである同材料(標準塗布量は0.5~1.0kg/m2)を刷毛や吹付などで塗り付けて造膜形成させる。12~24時間養生後、膜を手で剥がすかもしくは仕上げブラストを行うことにより、塩分を60~95%低減できる。同材料は乾燥後、半透明となり、残存塩分が特に濃い箇所は茶褐色の斑点が出現するため、塩分の見える化も図ることが出来、塩分を特に吸着した箇所に対し、その後の対策も目算を立てて、容易に行うことができる。
塗替え塗装工程例
刷毛塗り施工状況
エアレス施工状況
『塩分の見える化』
施工温度は作業箇所及び鋼材表面とも5℃以上を推奨している。水が主材料であるため、氷点下では施工できない。また、添接部においては膜の形成や除去が難しく、施工後の塩分測定も難しいが、「少なくとも通常のブラストなどと比較すれば、塩分は確実に低減できていると考えている」(同)。
5現場で試験施工を実施
現在までに夏場、春秋、冬場の環境下において5現場で試験施工を実施しており、塩分低減性はどの現場においても良好な結果が出ている。
今後も試験施工を増やし、添接部などでの確実な塩分低減効果や、膜養生後において、手剥がしと仕上げブラストのどちらの効果が高く、コストが低減できるかなどを確認した上で、5月には販売を開始したい考えだ。
既設塗膜除去は手剥がしもできる