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橋梁などコンクリート構造物の鉄筋防錆用途 亜硝酸リチウム代替として亜鉛粉末を防錆材に

住友大阪セメント 複合型ケイ酸塩系鉄筋防錆材『リフレ防錆コートZN』を4月から発売

公開日:2023.03.14

 住友大阪セメントは、橋梁などコンクリート構造物の鉄筋防錆用途に複合型ケイ酸塩系鉄筋防錆材『リフレ防錆コートZN』を製品化し、4月から営業を開始する。コンクリート構造物内の鉄筋防錆材としては、主に亜硝酸リチウムを用いた防錆材が使われている。しかし材料価格暴騰による影響や、国内製造量以上の需要により年々入手自体が困難になり問題となっている。それに代わる防錆材として亜鉛粉末(Zn)を防錆主材として用いることで、従来と同様の防錆効果をもたらし、比較的廉価かつ安定的に供給しようというもの。主材は防錆パウダー(亜鉛粉末)で、内容量の8割に達している。それを特殊ケイ酸塩系のバインダーと混練して一体化させ、露出した鉄筋に塗布し、防錆効果を働かせる。また、ケイ酸塩をバインダーとすることにより、コンクリート、モルタルとの付着性を向上させている。(井手迫瑞樹)

鹿児島大学の厳しい暴露試験場の環境でも発錆が全く見られない
 アクリルエマルションが鉄筋との強い付着性能をもたらす

 同材料は6年ほど前から開発に着手した。開発に際しては、鹿児島大学工学部の海洋土木工学プログラムが運用する海洋暴露試験場を用いて、同大学の山口明伸教授、小池賢太郎助教との共同研究により評価した。鉄筋を塩害環境下において暴露した結果は、2年程度で無塗装鉄筋は全面に錆が生じ、水性エポキシ塗装でも一部に錆が生じたものの、同製品は発錆が全く見られなかった。

NEXCO構造物施工管理要領 鉄筋防せい材の性能照査

防せい性試験の試験体形状

防せい性試験補修モルタル打込み前
「コンクリート補修用防せい材性能」防錆性-試験結果

塩害環境下における暴露試験による評価


鉄筋に対する付着強さ試験 暴露環境(すぐ前は海の厳しい環境だ)/暴露試験開始から2年後の状況、リフレ防錆コートZNはほとんど変化がない

鉄筋に対する付着強さ試験用供試体/補修 モルタル打込み前

鉄筋に対する付着強さ試験結果


鋼板との付着強度結果

断面修復材との付着強度結果

使用防錆剤/供試体の概要図

無塗装鉄筋(未暴露)に対する最大付着応力比
(出典:土木学会年次学術講演会概要集 75th,V-324,2021)

 同製品はケイ酸塩系バインダーと亜鉛粉末が主な材料であるため、「水性塗料のように塗りやすく、塗布後も紫外線などによる劣化が生じない」(同社)。塗布量は0.3kg/m2とそれ程厚く塗りつける必要がない。材料にダレが生じにくい特徴も有するが、これはバインダーの中にアクリルエマルションを含ませており、それが鉄筋との強い付着性能(17.6N/mm2)をもたらすためだ。
 鉄筋防錆効果の原理は亜鉛粉末による犠牲陽極防食作用で、内部鉄筋の腐食作用に対し、亜鉛が先行して溶けだすことによって、鉄筋の腐食を抑制する効果をもたらす。基本的には施工後に断面修復を行うことが前提であるが、「鉄筋腐食があっても塩害環境がそれほど厳しくない環境であれば、鉄筋防錆のみでも数年程度は腐食抑制効果が持続する」(同社)ということで、点検時に緊急補修材としても活用できる。また樹脂鉄筋と異なり、多少の欠陥部が生じても犠牲陽極作用により錆びない。

1m2あたりの使用料は300gが目安
 バインダーと防錆パウダーを混練して使う

 施工はまず、鉄筋の錆などをケレンして除去するなど下地処理を施す。次いで混合用容器にバインダー(1袋200g)と防錆パウダー(同800g)を投入して、ヘラなどを用いてダマがなくなるまで混練する。混練後は、刷毛やローラーを使って鉄筋表面に塗布する。1m2あたりの目安は300gとしている。その後、1~2時間程度養生し、断面修復を行う。混練後の可使時間は約3時間。


防錆パウダーとバインダーを一袋ずつ入れて混練して使用する


施工前後の状況 刷毛やローラーを使って鉄筋に塗布する

 同製品は既にNEXCO3社の構造物施工管理要領「鉄筋防錆材」品質規格に適合することも確認している。
 1缶(防錆パウダー2.4kg、バインダー0.6kg、塗布可能面積約14.3㎡)当たりの価格は41,000円。1m2あたりの材料価格は約3,000円としている。


リフレ防錆コートZN荷姿

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