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アースシフト 豪雪地帯における鈑桁橋の伸縮装置に採用

秋田県羽後町の局前橋でPAジョイントの現場施工研修会を開催

公開日:2023.03.08

 PAジョイント協会の東北エリア代理店であるアースシフトは、昨年12月、秋田県雄勝郡羽後町地内にある町道郷ノ目梺線の局前橋で埋設型伸縮装置PAジョイントの現場施工研修会を開催した。研修会には置賜建設(山形県)、中綱組(青森県)、YAP(宮城県)、アールシー・テック(秋田県)が参加した。同橋は橋長27m、幅員5.7mの鋼床版単純鈑桁橋で、1990年10月に供用された。同橋の健全性の診断結果はⅡと判定されたが、既設伸縮装置については排水型のゴムジョイントの損傷が著しく、両橋台の橋座への漏水・滞水、支承やソールプレートの腐食の要因となっている。そのため橋梁の置かれた環境やライフサイクルコストを鑑みて比較検討した結果、既設ジョイントを撤去してPAジョイント工法を採用したものだ。(井手迫瑞樹)


PAジョイント現場講習会では座学も行った

除雪車等による損傷が生じない
 PAジョイント 対応遊間幅は~110mm
 

 同橋は豪雪地帯にある鋼床版鈑桁橋であるため、伸縮装置採用の際、①除雪車などによる損傷が生じない伸縮装置であること、②鋼床版単純鈑桁への設置が可能であること、③既設舗装厚90mmに対応できること(同ジョイントは施工厚50㎜~)――などについて埋設型伸縮装置と鋼製型伸縮装置を中心に、新技術、従来技術を含めて8タイプの伸縮装置を選定して比較検討を行った。その結果、従来の埋設型ジョイントに比較して、耐久性を大幅に改善したPAジョイントが採用された。同橋は固定側、可動側とも遊間幅は50mmで、ジョイントの設置幅は380mmとなっている。同ジョイントの対応遊間幅は~110mmであり十分対応できる。


施工状況 2~3℃の低温下での施工

ポリウレタン系合成樹脂材の伸縮性能を利用した埋設型ジョイント
 北欧の寒冷地からドバイのような高温の砂漠地帯まで実績を有する

 PAジョイント工法は、ポリウレタン系合成樹脂材を用いた樹脂の伸縮性能を利用した主に埋設型として用いる合成樹脂ジョイントである。従来の樹脂系ジョイントは温度依存性が強く、低温時には縮み、高温時には伸びることによって直上、あるいは隣接する舗装に悪影響を与えるケースが散見されていた。同ジョイント工法は、樹脂に一定の硬度を持たせながら広い温度帯で低弾性を保つ特徴がある。「同工法はヨーロッパのMAGEBA社が開発し、北欧の寒冷地からドバイなどの砂漠地帯までに適用実績があり、目立った損傷事例は起きていない」(同工法協会)ということだ。
 ホイールトラッキング試験において、52,500回転/mm(重交通基準値3,000回転/mmに対し)と10数倍の耐久性能を有している。また360度全ての方向に同じ伸縮性能を発揮するため、クロス交差、突合せ接合、90°角合わせ等の形状にも対応可能であり、地覆も同じ素材で継ぎ目なく止水性を保つことができる。


PAジョイント概要図

試験項目と性能の表

 同ジョイントは、輪荷重は樹脂を通じてダイレクトに下地に懸かってくる。コンクリートの下地状態が悪いままでは伸縮装置や舗装に対する悪影響が出来るため、下地強度の強化と不陸調整を兼ねた材料として超速硬高靭性モルタル『オートモルスーパー』などを用いて補修した上で施工している。さらに樹脂を打設する前に、樹脂厚50mmに対して、鋼製Lアングル材(高さ40mm)を設置しており、これが温度変化だけでなく走行時の伸縮時に懸かる力も多くを吸収している。同ジョイントの樹脂厚は最大70mm厚に達することもあるが、それでも同一アングル高さで対応することが出来る。
 Lアングル背面から後打ちコンクリート(あるいはアスファルト舗装)間(約15~20mm)については走行車両の押抜き荷重がかかるが、それによる樹脂ジョイントとコンクリートあるいは舗装との界面についてはそれぞれ接着プライマー、低反発の目地材をいれることで対応するなど、耐久性の強化に万全を期している。


現場施工状況②

 

樹脂打設後、3時間の養生で開放可能
 3月には2社加盟し、東北6県は6社体制に拡大

 同ジョイントは施工性にも優れる。施工はまず、カッター工で既存ジョイント撤去し、オートモルスーパーによる不陸調整工を行う。次いで養生テープを貼付けた後、プライマーを塗布し、アンカー孔を削孔してLアングルを設置する。そして遊間プレートを設置して、伸縮装置の主材となるPA樹脂を流し込んで打設し、養生して、完成となる。


局前橋のPAジョイント完成状況

 今回の局前橋は、現場見学会もかねての作業であり、交通量も少なく、比較的余裕のある工程で進めることが出来た。また、国産化により樹脂打設後3時間養生で開放が可能なため、規制条件が厳しい現場においても施工が可能だ。例えば高速道路の夜間施工においては、1日目に既設ジョイントを撤去して、下地の不陸調整工までを行った段階で加熱合材でジョイント部を埋めて復旧し、2日目に合材を除去し、プライマー塗布からアングル材の設置、樹脂の打設、養生までを行い、翌朝開放することが可能だ。

 既に、高速道路で9個所・延長209m、国土交通省所管の国道で7個所・延長145m、自治体で51個所・延長1,091mの実績を有している。

 今年2月には栄組(岩手県)の加入が決定し、さらに福島県の会社が加入予定で、東北6県の協会加盟会社は6社に拡大する。今後は営業活動に力を入れ認知度を上げていくとともに、交通量の多い、高速道路や国道での実績を増やすと共に、歪な遊間形状・斜角・縦目地・鋼床版&RCスラブといった通常の伸縮装置では対応の難しい箇所について、積極的に提案していく方針だ。加えて、メーカーであるジェイテック(京都市)は、PAジョイントの歩道橋用の規格を策定し、関西圏で複数の案件が検討されており、歩道橋分野への浸透も目指している。


(左)施工手順/(右)様々な形状のジョイントに適用可能だ

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