1種ケレン+変性エポキシ樹脂塗料塗装と同等程度の長期防食性能を発揮
関西ペイント 錆び面に塗装可能な水性下塗り塗料「ルビゴール」を展開
関西ペイントは、腐食電流抑制型素地調整軽減さび面用塗料「ルビゴール」の橋梁分野への展開を進めている。本塗料は、錆び面に塗装できることから素地調整グレードの軽減が可能で、長期防食性能を有していることが特徴だ。本塗料を用いた塗装系「ルビゴールシステム」(NETIS:KK-220040-A)ではRc-Ⅰ塗装系およびRc-Ⅲ塗装系と比較して2~3日の工程短縮が図れる。施工費もRc-Ⅰ塗装系に対して約4割削減でき、耐用年数も塩害高耐久仕様で35年であることから、LCC縮減にも寄与する。
厳しい腐食環境下の施工事例では1年経過後も良好な状態を保つ
素地調整は4種ケレン相当または3種ケレンの錆残し
ルビゴールは5年前に試験販売を開始してから、プラント構造物の塗替えや建築物の屋外鉄部で実績を積み重ねてきた。海岸線から約2kmに位置する事業所建屋の事例では、エポキシ樹脂塗料+ふっ素樹脂塗料の塗装で2年もたない厳しい腐食環境にあった横梁の裏側に本塗料を用いた塗装系の試験施工を実施し、これまでは1年待たずに錆びていたが、1年経過後も発錆は見られず良好な状態を保っている。
試験施工の作業状況(関西ペイント提供。以下、同)
試験施工1年後の状況。一般部および凹部での発錆は見られず、良好な状態を保っている
本塗料は、素地を全面薄錆(錆厚100μm以下)の状態にして塗装することで、1種ケレン+変性エポキシ樹脂塗料塗装と同等程度の長期防食性能を発揮する。
錆び鋼板に対する防食性比較(複合サイクル試験)
複合サイクル JASO 198サイクル(1,584時間)。180サイクルで沖縄暴露1年6カ月に相当
施工に際しては「素地調整が重要」(関西ペイント)になり、素地調整程度は「全面錆であれば、錆層を4種ケレン相当の作業方法で薄錆残し。活膜が多い場合は3種ケレンの薄錆残し」(同)としている。作業はマジクロンやワイヤーカップを用いて行い、こぶ錆や浮き錆をスクレーパーで除去していく。
橋梁の全面塗替え塗装にも適用できるが、手ケレンやワイヤーカップでの施工の点から、桁端部や狭隘部の部分塗替えやRc-Ⅲ塗装系の置き換えを中心にした適用を同社では想定している。
鋼面のケレン。こぶ錆や浮き錆をスクレーパーで除去/層錆のケレン状態
腐食反応時に発生する腐食電流を抑制することで長期防食性能を実現
超高分子エポキシ樹脂塗料の使用により高い環境遮断性能を有する
既存の錆残存面用塗料には、錆び転換型や塩分・鉄イオン無害化型、環境遮断型があるが、ルビゴールは腐食電流を抑制するメカニズムを採用した新しいタイプの塗料だ。本塗料内に含有されている特殊な防錆成分が錆内に浸透密着し、錆が発生する時に必ず起きる腐食電流を抑制する役割を果たすことで、錆びの発生を防ぐ仕組みとなっている。
塗料の開発段階で、錆面と鉄面での腐食電流の強弱について解析し、全面薄錆の状態が最も腐食電流が微弱であることが解明できた。強力な腐食電流が流れる錆面と鉄素地面が混在する状態でもルビゴールの防食機能は確認されているが、全面薄さび状態が適していると判断している。
錆残存面に対するルビゴールの対処法
本塗料を水性としたのは環境への配慮もあるが、長期防食を実現するために水に溶けだす性質を有する防錆成分を塗料内にできるだけ多く含有させる必要があり、水性塗料が最も適していたからである。さらに、本塗料では超高分子エポキシ樹脂塗料を使用しているので、通常の変性エポキシ樹脂塗料よりも約2倍の環境遮断性能を有している。このため、下塗りで通常120μmが必要な箇所では60μmの1回塗りとすることができる。また、超高分子のエポキシ塗膜を形成するので、中・上塗りは溶剤系、無溶剤系、水性系などの塗料の制限なく塗装可能であることも特徴だ。
水性塗料のため、水洗い後すぐに施工可能
素地調整から下塗りまで1日で完了
施工では前述の素地調整後、塗料の錆内への浸透とボイド対策のために先行塗り(30μm)を行う。素地調整後、塩分除去のために水洗いをするケースが多いが、水洗い後すぐに塗装面が濡れたままで施工できるので、作業効率向上と塩分の再附着を防ぐことができる。
水洗い後すぐに塗装が可能だ
ルビゴールの塗装
先行塗り後は約15分で本塗装(下塗り60μm)が可能で、塗装面積にもよるが素地調整から下塗りまで1日で完了し、工程短縮メリットが得られるものとなっている。下塗り後の塗装系の組み合わせは自由であるが、同社では「ルビゴールシステム」として以下のものを提案している。
標準仕様では、シリコン変性エポキシ樹脂下塗上塗兼用塗料「ユニテクト30SF」(60μm)での先行塗りを含めた3層塗装(総膜厚150μm)、塩害高耐久仕様では、耐塩害用厚膜形変性エポキシ樹脂系さび止め塗料「エンガイン」(120μm)+「ユニテクト30SF」(60μm)での4層塗装(総膜厚270μm)である。
塗装システム例
Rc-Ⅰ塗装系との比較では施工費約4割削減
期待耐用年数は塩害高耐久仕様で35年
「ルビゴールシステム」とRc-Ⅰ塗装系との塗装日数の比較では、ルビゴールでは先行塗りと下塗りが同日にできることから、Rc-Ⅰ塗装系が5日に対して同システムが標準仕様2日、塩害高耐久仕様3日と3日~2日の短縮を実現している。期待耐用年数では同システム(塩害高耐久仕様)は35年とRc-Ⅰ塗装系の40年と比較すると若干劣るものの、桁端部や狭隘部では期待耐用年数に満たずに錆びてしまうケースもあることから、同等程度の耐用年数を期待できるといえる。施工費用はRc-Ⅰ塗装系の約6割(約4割の削減)となっていることから、耐用年数を考慮するとLCCの縮減が実現できる。
同システム(標準仕様)とRc-Ⅲ塗装系との比較では、塗装日数で3日の短縮、耐用年数では25年とRc-Ⅲ塗装系の20年を上回り、施工費用は約1割弱削減できる。
Rc-Ⅰ塗装系との比較(左)/Rc-Ⅰ塗装系(桁端部・狭隘部などの部分適用時)との比較(右)
Rc-Ⅲ塗装系との比較