エスイーは、主に法面の安定化に用いられるグラウンドアンカーの飛び出し防止装置『APPOD(エイポッド)』を製品化した。1991年以前に施工された旧タイプのグラウンドアンカーが主対象。頭部部材をアンカーキャップに取り付け、ワイヤロープを反力体等に連結するだけの簡易な構造であるため、1か所20分程度で、専門性を必要とせず設置が可能だ。標準スペックの場合、1か所5万円程度とコストも低く抑えることが出来る。点検でアンカーが腐食や過緊張により破断が生じる可能性がある、または一部のアンカーが破断した法面等に設置して第三者被害を防止するもので、あくまで新タイプのアンカーを打ち込むまでの緊急・応急措置での採用を想定している。
APPODとその概略図
その他の特長としては、反力体の形状に拠らず設置が可能であること。規格化によるさらなるコスト縮減、納期短縮+設計検討の簡略化による設置までのスピードアップという点にある。従来は現場条件や反力体の形状に応じて、都度設計検討・受注生産していたため、設置までに時間がかかっていた。
APPODは、ワイヤロープ、抑えプレート、緩衝パッキン、アイボルト、シャックルなどの部材で構成される。基本的構造は抑えプレートと緩衝パッキンからなる頭部部材でアンカーの飛び出しを受ける。頭部部材は十字に配置したワイヤロープで固定し、アイボルトやシャックルで反力体等に連結する。頭部部材はアンカーキャップの天端にある既設ボルトを外し、そのボルト孔を用いて固定するため、アンカーが飛び出した場合でも部材が飛散しにくい。
施工手順
アルミスリーブの圧着も現場で手軽に作業可能だ
標準スペックは、テンドン自由長が30m、破断時の引張り荷重が37.3kN程度を想定している。グラウンドアンカーに用いられるPC鋼より線の引張り荷重は7本よりのφ15.2mmの場合、1本あたり261kNと大きいが、「鋼材はいきなり全断面が破断することは稀であり、大方はPC鋼より線を構成する7本の線が1本ずつ破断し、最後の1本が破断する。その最後の1本が破断するときのエネルギーを想定している。またテンドンの破断の90%以上は、アンカー頭部および頭部背面(支圧板から約1m)の範囲だといわれていることも念頭にある。もちろん、現場・破断条件に応じてスペックは変更可能だ。」(同社)ということだ。
標準仕様を想定した検討
実験状況
同社では、NEXCO各社の進めている旧タイプアンカーを新タイプアンカーに置き換える大規模更新事業の他、国土交通省や地方自治体において予算が付くまでの緊急・応急措置として提案していく方針だ。(井手迫瑞樹)