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スギノマシン協力 上フランジ上面の残コンの撤去からケレンまでを一括して行える

川田建設 床版取替時の鋼桁上面のケレン作業に用いる自走式WJ工法を開発

公開日:2023.01.16

 川田建設は、スギノマシンの協力のもと、高速道路の床版取替え工事において、鋼桁上面のケレン作業に用いることが出来る自走式ウォータージェット(WJ)工法を開発し、北陸自動車道などでの床版取替え工事に実用している。この自走式WJは、遠隔操作によって台車の走行やWJの噴射が出来る装置で、上フランジ上面の残コンの撤去からケレンまでを一括して行えるため、現場での工期や工数を大きく削減することができる。(井手迫瑞樹)


鋼桁上面のケレン作業に用いることが出来る自走式ウォータージェット(WJ)工法を開発

1号機で残コン撤去から鋼桁のケレンまで一気通貫で施工可能
 手斫りに伴う桁の損傷も起こさず、振動や騒音の発生も抑制

 床版取替えの現場でクリティカルな工種の一つになるのが、鋼桁上面のケレン工である。とりわけ鋼合成桁では、ジベル筋の配筋が密であり、さらには馬蹄型ジベルという非常に切断が難しいものもある。また、鋼桁には添接部があり、ボルトやリベットが密に配置されている。そのような箇所ではコンクリートが取りづらく、さらにその後のケレン工も煩雑になる。そのため、ワイヤーソーで水平切断した後に、残コンをチッパーなどで手斫りした後、鉄筋を切断し、さらにケレン工を行うのが一般的であるが、そのうちの手斫りとケレン工は人海戦術で施工する必要があった。また、手斫りでは、鋼桁上面、添接部のボルトやリベットを損傷させてしまう危険性もある。さらに都市部においては、手斫りによる振動や騒音が近隣の住環境に悪影響を及ぼす可能性もある。

 自走式WJによるコンクリート斫りと鋼桁ケレンは、それらの日数と工数の減少だけでなく、手斫りに伴う鋼桁の損傷や、振動や騒音の発生を抑制することが出来る。

 川田建設は、この自走式WJの開発を2020年から開始した。まずケレン機能の検証を主目的とした試作1号機を製作して試験室での走行試験やケレンの仕上がり具合を確認し、2021年度に床版取替え工事の現場に持ち込んで実地検証を行った。


写真1  鋼桁ケレン装置(試作1 号機)によるケレン作業

 その結果、残コンや錆・塗膜・ボルトネジ部のノロも除去することが可能なことやケレン作業を行うために必要なWJの水圧や水量、効率的な移動速度、吐出孔の径や形状などを確認することが出来た。そのノウハウをベースにして、①操作性や作業確認を行うための制御システムと操縦デバイスの導入、②鋼桁からの落下防止や突起物回避、接触時に停止するための安全装置の追加、③使用環境に対応した耐性、防水性の強化、④運搬・設置を容易にするための軽量・小型化を模索し、2号機を製作した。


写真2 試作2号機

2号機 遠隔操作による無線操縦を基本
 ケレン品質の均一化のため、鋼桁上の凹凸に対して研掃装置が一定の高さに自動調整

 自走式WJの2号機は、操作性向上のため遠隔操作による無線操縦を基本とし、その上でケレン品質の均一化のため、鋼桁上の凹凸に対して研掃装置が一定の高さに自動調整される機能、鋼桁からの脱輪を防止する機能、研掃装置が障害物に衝突した際には走行を停止する機能を付与した。吐出孔は、ケレンと斫りの両方ともに適した径を選定し、ノズル配置についても効率的になるように設定している。

 作業者が施工状況を的確に把握できるよう、走行速度などを表示するモニターを具備すると共に、WJの噴霧による視界不良を避けるため、噴霧防止カバーを設置した。さらに機械の耐久性向上を図るべく、電装機器や駆動機構部は防塵・防滴設計とした。

 コンパクト化については、1号機に比べ全長を2.0mから1.3mに、重量を160kgから118kgと約2/3に小型・軽量化している。


自走式WJの2号機は、操作性向上のため遠隔操作による無線操縦を基本

 水量・水圧については、斫りやケレンに必要な最高吐出圧力と最大吐出流量を満足するような仕様とした。また、施工時に生じる水やガラなどを回収するためのバキューム装置も備え付け、施工時の他作業などに対する影響を最小限にするような配慮もしている。


研掃装置図

 2号機を北陸自動車道の現場に実装したところ、フランジ幅0.4mの鋼桁延長200m対して4日で施工を完了し、ケレン品質についても1種相当(原板ブラストでアンカーパターンが残っている場合は1種相当)を確保することが出来た。今後は現場での適用実績を積み、データを増やすことで、ケレン品質に関係する設定パラメーターを標準化し、異なる環境でも対応できる汎用性の高いWJシステムとしていく。また、施工時のガラや水の飛散をより抑制できるカバーの開発や、騒音抑制効果の検証も進めていく方針だ。


ケレン状況写真

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