道路構造物ジャーナルNET

コンクリート表面から10~20mmの深さに配置可能に

太平洋マテリアル 柔軟性が高く有害ひび割れを抑制するARG繊維ネット『太平洋ハイパーネットSS』を開発

公開日:2023.01.11

 太平洋マテリアルは、柔軟性に特化した耐アルカリ性ガラス(ARG)繊維ネット『太平洋ハイパーネットSS』を開発した。太平洋ハイパーネットSS(SSはソフトストライプの略、以下、「SS」)は、太平洋ハイパーネット60(以下、「60」)の格子形状を継承しつつ、高い柔軟性を確保することによりコンクリート表層(コンクリート表面から10~20mm)部に設置することができ、ひび割れを効率的に低減できる。


写真-1 太平洋ハイパーネットSS(手前、奥は太平洋ハイパーネット60)

 ハイパーネットシリーズは、ひび割れ低減効果が認められ土木分野から建築分野まで幅広く使用されているが、柔軟性が乏しくコンクリート表層部に設置することはできない。一方、設置場所がコンクリート表層部に近い程、ひび割れ低減効果が向上することは既往の研究で判明しており、コンクリート表層部への設置に対する要望が強い。従来は縦横の繊維が交差する箇所を中心に(目留め処理)、繊維を樹脂で含浸させてネットを製作していたが、SSは含浸樹脂量を約1割に削減すると共に繊維を縦横に編み込んだような手法によって製作することで柔軟性を確保した。
 また、プレキャストコンクリート製品分野からは過密配筋部での柔軟性改善に対する要望が強い。このような背景を鑑みて、柔軟性があり、コンクリートのひび割れ低減効果をより発揮できるARG繊維ネット『太平洋ハイパーネットSS』の開発に至った。

 曲げ試験による結果では、SSなしのひび割れ本数2本、ひび割れ幅0.35mm(写真-2,図-1)に対し、SSを鉄筋に設置(従来のハイパーネットと同じ使用方法)した場合は、ひび割れ本数3本、ひび割れ幅0.25mm(写真-3、図-2)、SSを表面部に設置した場合は、ひび割れ本数4本、ひび割れ幅0.20mm(写真-4、図-3)、と表面部設置した場合、ひび割れ分散効果による有害なひび割れの発生を抑制していることがわかる。


図-1 ひび割れ幅(SSなし)/図-2 ひび割れ幅(SS鉄筋)

図-3 ひび割れ幅(SS表面)

 

 ひび割れ箇所が一点になるよう載荷した結果では、PL(SSなし)に対してSS(表面設置)は、ひび割れ幅(図-4)が0.15mm程度に抑制されており、且つ、鉄筋に発生するひずみ(図-5)も同時に抑制している。これより、SSによりひび割れ応力が負担されていることがわかる。


写真-5 試験状況

図-4 曲げ荷重とひび割れ幅の関係/図-5 曲げ荷重と鉄筋ひずみ

 既に、SSの実施工への適用性も検証している。対象は基礎コンクリート部材上面部で、表面に設置し端部においても曲がり癖なく十分な柔軟性を有しているとともに施工性も良好であることを確認した。


写真-6 表面設置状況 写真-7 表面設置状況(端部)

 今後は橋梁基礎工など実構造物への適用を図っていく方針だ。

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