循環式ブラスト、IH、塗膜剥離剤を用いて旧塗膜を除去
NEXCO東日本 メップ川橋鋼トラス橋部塗替・原形復旧が進む
36,000㎡弱を塗替え
NEXCO東日本は道央自動車道メップ川橋鋼トラス桁部の原形復旧工事を進めている。飛来塩分や凍結防止剤による影響によって、すり鉢状もしくは層状の激しいものを含む腐食といった大きな損傷が生じており、その対策を進めているもの。損傷は格点部などで卓越しているが、床版の損傷部からの漏水や滴下などにより、一般部でも局部腐食や層状さびが生じていた。塗替え総面積は35,961m2におよぶ。同橋は橋長555.6mの鋼3径間連続トラス×2+3径間連続非合成鈑桁、今回はそのうち鋼トラス部434.55mを塗り替えるもの。P3を境界にトラス部を東西に二分して施工している。下塗りに鉛が入っていることや、中塗りに塗膜剥離剤では除去に時間のかかるMIO塗料があること、冬季の塗膜剥離施工を考慮して、東地区はIH工法、西地区は循環式ブラスト工法を採用している。また、断面欠損が著しい箇所においては当て板や炭素繊維シートによる原形復旧工事なども施している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)
鋼トラス部の塗替えは供用後初めて
1,000mg/㎡以上の塩分付着量が確認された箇所も
さて、同橋は昭和48年2月道路橋示方書・同解説により設計された橋梁で1985年10月に供用された。建設時塗膜厚は195μm(建設時塗装仕様より)で、鈑桁部P6~A2のみ3種ケレンで塗り替えたが、鋼トラス部の塗替えは37年間行っていない状況である。現場付近の海のうねりを見ると、飛沫がすごい。記者が取材したのは10月上旬であったが、冬季波浪はさらに激しいという事で、海岸線から僅か1.3kmしか離れておらず、川沿いにある橋梁であるメップ川橋はその影響を免れ得ない状況である。また凍結防止剤の散布量も多く、その影響もあるようだ。
損傷状況①(西地区)(NEXCO東日本提供、以下注釈なきは同)
損傷状況(西地区)②(中・右は井手迫瑞樹撮影)
そのため、塩害が激しく、取り分け横桁の下フランジ上面や縦桁の下フランジ上面の塩分付着量は、場所により1,000mg/m2に達していた。腐食したさびの内部には塩分が入り込んでおり、その除去も行わなくては塗替え後の塗膜が正常な機能を発揮出来ない恐れがある。また、断面欠損箇所において補強を行うための当て板を施しているほか、格点部などでは当て板の代わりに炭素繊維シートを貼り付け補強する手法も施している。
損傷状況③(東地区)/右下写真は炭素繊維シート補強工施工状況(井手迫瑞樹撮影)
西地区 環境的に水洗い不可 循環式ブラストで対応
ブラストの投射時間を約32分/㎡長めに施工 「タイエンダー」を塗布
塗膜塗替えのための塗膜剥離及び素地調整は、西地区は主に循環式ブラスト工法、東地区は主にIH工法+オープンブラストを採用している。
メップ川橋西地区概要図
西地区は直下にメップ川が流れており、高速道路の排水を河川へ流すための油水分離ますも設置されている。そのため桁の塩分を水洗いで除去するという選択肢を取ることができなかったことから、循環式ブラスト工法を採用している。基本的には同工法による1種ケレンの素地調整を施した。
循環式ブラスト施工状況
循環式ブラスト設備配置状況
ブラスト施工後の下地状況(中、右のみ井手迫瑞樹撮影)
その上で事前に試験施工で確認した、特に塩分の浸透が激しい箇所については、ブラストの投射時間を約32分/m2(通常、1種ケレンで約11分/m2)増やし、塩分量の低減(150㎎/m2以下を目標とした)に努めた。鋼材内部の塩分は完全には取れない場合を想定して、通常の重防食塗料に変更する形で、下塗りとして耐塩性塗料『タイエンダー』を1層塗布している。
耐塩性塗料『タイエンダー』を1層塗布した
東地区 IH+塗膜剥離剤および高圧水洗浄+オープンブラストで対応
鋼材表面の塩分量を50mg/m2に下がったことを確認して塗装
東地区は塗膜剥離工法においてIH工法を採用した。その理由について、塗替え工事を担当している日本橋梁は、「IH工法を使うことで冬季でも塗膜剥離が可能であり、残り20μmでは一発で剥離できるなど 施工効率が高いことから採用した」と話している。
東地区概要図
平滑部はIH施工(左)、桁の水洗い(右)
塗膜剥離剤の塗布(左)、および膨潤後の塗膜掻き落とし状況(中)、ブラスト施工状況(右)
鋼材表面や内面に存在する塩分は特に塩分量の多い個所については動力工具などで塩分を掻き出す。また、東地区は直下に河川などの障害物がないため、高圧水により水洗いし、オープンブラスト(フェロニッケル、ネオブラスト)により1種ケレンを施し、鋼材表面の塩分量が50mg/m2まで下がったことを確認して、塗替え作業に入ることにしている。
特殊部及び狭隘部については、バイオハクリX-WBを用いた。膜厚は比較的薄いが、MIO層や鉛入りジンクリッチペイントなど、塗膜剥離剤では浸潤しにくい塗膜層があったことから、試験施工の結果を踏まえて2~3回程度、剥離剤塗布を行ったうえで掻き落とし、その後は塗替えに入っている。
塗装系は両地区ともRc-Ⅰを採用した。
塗装塗替え状況