一般的なPC橋と比べて上部工の死荷重を10~20%低減
ジェコス 適用支間長10~25mの新型「H形鋼橋梁 GHBⓇ」を商品化
ジェコスは、本設橋梁である新型「H形鋼橋梁 GHBⓇ」を開発、商品化した。主桁と横桁に大型圧延H形鋼を採用し、高力ボルトで添接する構造となっており、適用支間長は10~25m、有効幅員は実案件に沿って対応していくが4~9mを想定している。老朽化が進む地方自治体管理の中小橋梁の架替えニーズに対応した製品として展開していく。
H形鋼橋のGHBでは、一般的なPC橋と比較して上部工の死荷重を10~20%低減(支間長20mの場合)できるため、架替えにおいては既設下部工への影響を軽減でき、その再利用も可能であることが特徴だ。設計面で標準化を図ることから、迅速な設計への対応、工期・費用の縮減も可能としている。
H形鋼橋梁 GHBの構造概要
一般的なPC橋との設計反力の比較
H形鋼は溶接構造用圧延鋼材「SM490Y」を使用し、主桁サイズは、H588×300×12×20、H700×300×13×24、H800×300×14×26、H900×300×16×28、H912×302×18×34の5種類となる。耐候性鋼材も用意しており、発注者の要望があれば提供していく。
これら決まったサイズの鋼材を用いて、平成29年道路橋示方書(H29道示)に基づき標準化した設計を現場条件に合わせてカスタマイズしていくので、効率化とコストダウンが図れるという。また、上部構造の軽量化と工費抑制のために合成桁を採用した。
開発にあたっては、H29道示に準拠して耐荷重、耐震性の照査を実施した。具体的には、耐荷重は死荷重と活荷重(A・B活荷重)、風荷重による照査を、耐震性はレベル1、レベル2地震動に対する照査を行っている。
維持管理性を高める工夫を取り入れていることも特徴だ。主桁下フランジ上の雨水が支承部に浸入しないようにフランジ上への水切り板の設置により耐腐食性を、支点上補剛材の増厚、増し溶接により耐疲労性を向上させた。点検作業性にも考慮し、横桁と床版下面のクリアランスを従来より150㎜拡大している。これらは、国総研資料第1121号「道路橋の耐久性の信頼性向上に関する研究」など、最新の基準、ガイドラインを参考にしたものだという。
施工では、主桁ブロックを分割(最大9m)することにより、輸送ルートの幅員が狭い、山間部などでの狭隘な架設ヤードといった現地条件にも対応できる利点を有している。また、部材重量が主桁10mで約10t、25mで約50tであるため、架設時に一般的なPC橋で使用するクレーンよりも小型化できる。
さらに同社では、支承や伸縮装置、防護柵、排水装置などについてもGHBの一部として提案していく。GHBの開発にあたり、地方自治体やコンサルタント会社に意見を聞いたところ、主構造だけでなく付属物などを含めた「橋梁パッケージ」で提案してもらったほうが効率的であるという意見が多く寄せられ、そのニーズに応えた。客先要望や条件にもよるが、支承はゴム支承を、伸縮装置は埋め込み型を提案する。
山間部(左)と平野部(右)での適用イメージ
ジェコスでは、地方自治体の中小橋梁を対象に、点検・調査から補修・架替えに至る総合的なメンテナンスサービスの提供を目指し、「橋梁メンテナンスのワンストップ対応」の事業基盤を構築中である。点検・調査では橋梁点検に加えて、道路付属物点検でも実績を積み重ねており、今回商品化したGHBもワンストップ対応のひとつと位置付けている。架替えの際に必要となる仮橋についても同社は「PABRISⓇ」を保有しており、架替え橋梁と仮橋をセットで提案できることも強みだという。
商品化発表後、架替え事案だけでなく新設事案についても問い合わせが寄せられており、今後は、地方自治体およびコンサルタント会社への周知をさらに図りたいとしている。