床版打替 鉄筋による重量増は埋設レールの撤去で相殺
既設の下床版とは完全な一体化は行っておらず、構造的には重ね梁
床版打替工
同橋の床版は二重構造になっていた。元々の都電が走っていた床版部は、上面が桁の上フランジとフラットになる形で配置されており上フランジより下に180~200mmの厚さで配置されていた。その後、都電を廃止し、全面的に車道化する過程でレールを厚さ200mmの無筋コンクリートで埋設した構造となっていた。面白いことに古い床版でありながら、上の無筋コンクリートと下の有筋床版との間には防水層があり、これが大きな力を加えるとはがれるような状態であった。
既設床版断面図および旧都電軌道敷も含めた断面図
都電遺構
同床版部を全面的に撤去し、打ち替えるためには桁下にも足場を架設する必要があり、直下の鉄道に配慮しなくてはならない。そのため、当初の床版上面に打設されていた無筋コンクリート部分と埋設されていたレールを全て除去し、一方で主桁上フランジに30cmピッチでスタッドを溶植した上で新たにRC床版を現場打ちした(無筋コンクリートとは言え、レールが載っていたためその分を鉄筋に置き換えると重量増にはならない)。
補修床版断面図
施工にあたっては綿密に計画を立てた
橋面規制の変化が分かる
埋設レールの撤去状況
床版打替工① (左)既設舗装および床版コンクリート撤去、(中、右)既設舗装版の撤去
床版打替工② (左)スタッドジベル設置工、(中)鉄筋工、(右)床版コンクリート打設工
無筋コンクリートはカッターを一定間隔で縦横に入れて、マス目状に切れ込みを作った上で、バックホウではがし、最後にショットブラストを用いて研掃した上で新設床版部を現場打ちした。
TL-20は新たに打設する床版のみで持たせる構造としているため、既設の下床版とは完全な一体化は行っておらず、構造的には重ね梁とした。また、その後、床版防水も新たに施工している。
床版打替工③ 床版コンクリート打設完了状況/仮舗装設置状況
伸縮装置も既設の伸縮装置を撤去し、新しい製品ジョイントに取り替える。端部は段差防止工として可撓性踏掛版を設置した。
可撓性踏掛版設置状況
施工に際して、お茶の水橋は緊急輸送道路であるため、当初は片側2車線ずつを確保する方針であった。しかし、施工性や安全性を高めるため、現場の交通量に鑑みて、上り1車線、下り2車線の合計3車線に計画を変更した。日中は道路交通を確保しながらの施工のため、橋面を12箇所に分割して1か所ずつ施工を行った。
塗替えは塗膜剥離剤 ネオリバー泥パックType-Ⅱを採用
橋梁灯は建設当初の図面に基づく形で復元
腐食箇所の補修・当て板補修、景観対策
主部材においては腐食などは発生しておらず、当て板補強などを施す必要はなかった。但し、伸縮装置近くの歩道を支える部材では、漏水によって腐食が生じおり、当て板補修を必要とした。
当て板補修設置状況
当時の景観を再現することがコンセプトになっているため、一部の塗膜を採取して、建設当時の色彩を調べてそれを再現することに努めた。実際には(5GY7.0/2.0)にすることにした。既設塗膜は鉛など有害物質を含有しているため、塗膜剥離剤(ネオリバー泥パック工法)を用いて掻き落とした上で2種ケレン(塗膜剥離剤はネオリバー泥パックType-Ⅱ、4回塗布)を施して素地調整し、重防食塗替塗装を行った。支承部については黒錆転換型防食塗装を採用している。
塗装塗替工図
塗膜剥離工① (左)施工前状況確認、(中左)足場養生、PCB対策設置、(中右、右)養生シート設置
塗膜剥離工② (左)塗膜剥離剤塗布状況、(中右)掻き落とし状況、(中左、左)剥離後の状態確認
塗装塗替工① (左)素地調整工、(中)防食下地工。(右)下塗工1層目
塗装塗替工② (左)下塗工2層目、(中)中塗工、(右)上塗工
支承部については黒錆転換型防食塗装を採用
橋梁灯は建設当初の図面が見つかったことから、その図面に基づく形で復元する。架橋当時の橋梁灯の柱はドイツの大手鉄鋼メーカーであったマンネスマンの鉄柱であり、趣向を凝らした灯具は鋳物製であった。今回の復元では柱部は鋼管を用い、灯具はステンレス製を採用する。光源は電球色系のLEDとする予定だ。
照明柱姿図
また、供用当初から設置してある親柱については洗浄することで対応でき、取替はせずに済んでいる。
歩道部の拡幅 3.8mから5.3mへ
7万人を超える歩行者に対応
同橋の下流側の歩道部においては、7万人を超える歩行者に対応するため、現在の歩道幅員3.8mを5.3mに拡幅することにした。これは橋全体を拡幅するのではなく、車道部を一部狭くすることで幅員を確保している。また、病院に近いことから歩行が不自由な人や車いすを使う人にも通行しやすいようバリアフリー化を進めている。具体的には現行の高欄に手すりを取り付けて5cmほど高くすることで対応する。こうした重要鉄道を跨ぐ橋梁は本来、投擲防止用のフェンスを取り付けるものであるが、景観を阻害するとして、取り付けを見送った。
現在は、耐震補強関連、塗装塗替えなどは全て完了している。また、橋梁上の橋梁灯の設置、車道床版の打替えも完了した。歩道舗装の打ち替えは上流側のみ完了し、今後、来年度から前後の取付け道路の施工行っていく予定だ。
お茶の水橋補修補強設計はJR東日本コンサルタンツ。
施工は鉄建建設・スバル興業JV。一次下請は床版・舗装工事が世紀東急工業、塗装塗替えが日昇、耐震補強工が富士スチール。