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塗膜剥離剤は環境配慮型の中性型水系塗膜剥離剤「STRIPPER」を採用

岩手県 大荒沢スノーシェッドで塗替え塗装工を中心とした補修工事を進める

公開日:2022.11.08

 岩手県県南広域振興局土木部北上土木センターは、一般国道107号の和賀郡西和賀町杉名畑地内に位置する大荒沢スノーシェッドの補修工事を進めている。鋼材の防食機能の劣化や腐食が進展していることから、塗替え塗装を主に支柱補修や沓座モルタル補修、高力ボルト交換、塗膜防水などを施工するものだ。今年度は2期工事を実施しており、塗替え塗装工では塗膜剥離剤(STRIPPER)を用いて既設塗膜除去を行い、塗替えは錆転換型防食システム(アースコート防錆-塗装システム)を採用している。その塗替え塗装工を取材した。

建設から45年以上が経過 断面欠損をともなう腐食、板厚減少などが発生
 2期工事となる今年度は終点側の山側1車線約100mを施工

 大荒沢スノーシェッドは延長291mの鋼製門型式シェッドで、終点側(秋田県側)の延長64mは1972年に、起点側(北上市側)の延長227mは1977年に建設された。支柱、横梁、支承周りで局部的に断面欠損をともなう腐食、板厚減少が確認されており、定期点検での判定区分はⅢとなっている。損傷要因としては「冬期にほぼ毎日散布する凍結防止剤の影響が考えられる」(北上土木センター)という。


大荒沢スノーシェッド(大柴功治撮影。以下、撮影=*)

施工前の状況(撮影=*)

 同工事は工期を分けて実施されている。昨年度(1期工事)は起点側の山側1車線約190mを施工し、アースコート防錆-塗装システムでの塗替え(5,600㎡)などを行った。今年度(2期工事)は終点側の山側1車線約100mを施工しており、施工面積は2,580㎡だ。来年度以降に谷側1車線を施工し、施工区分は未定だが今年度末の発注が予定されている。


大荒沢スノーシェッド平面図
灰色部分が1期工事区間、赤色部分が2期工事区間、緑色部分は来年度以降施工予定区間(岩手県提供。注釈なき場合、以下同)


大荒沢スノーシェッド標準平面図および2期工事施工内容

1期工事区間(左)/2期工事区間(中央:起点側から/右:終点側から)(撮影=*)

STRIPPER 塗布後の初期塗膜軟化反応を抑え、塗膜内部へ深く浸透
 生分解性の高さや魚毒性の低さなど生体影響が非常に少ない

 既設塗膜の平均膜厚は150μm程度で、最大でも+10μm程度となっている。下塗りには鉛系さび止めペイントが採用されており、8.2mg/Lの鉛の含有が確認されたことから既設塗膜の除去は湿潤化によるものとし、塗膜剥離剤を用いることとした。
 2期工事の元請である木村塗装工業では2種類の塗膜剥離剤を試験して、「剥離効果がより高く施工性に優れ、外部に流出したとしても環境汚染を抑制できる効果もある」ことから、中性型水系塗膜剥離剤「STRIPPER」の採用を決定した。同シェッドの谷側には湯田ダムがあり、「下流の利水者の方々のことも考えると環境に配慮することも必要だった」(北上土木センター)という。

試験施工の様子

 同剥離剤は、タレにくい粘度となっているために塗布作業が軽減できるとともに、塗布後の初期塗膜軟化反応を抑え、塗膜内部へ深く浸透させることにより多くの塗膜を除去できることが特徴だ。環境面においても、特定化学物質「ジクロロメタン」を含まず有害性が少なく、平均生分解度95%(最大値99%)(土木鋼構造物用剥離剤ガイドライン(案)の平均生分解度基準値60%以上)、魚毒性96時間LC50 540ppm(540mg/L)(同(案)の魚毒性96時間LC50の基準値10ppm以上)と優れた性能を有している。
 また、独自の生態影響への安全性の確認では、一般的には(当該材料含有量)50mg/Lで行われるところを3倍の150 mg/Lの設定濃度で、水生生物の中で生命力の弱い「ミジンコ」と、植物の中で枯れやすいとされる「藻」に対する影響を確認した。オオミジンコによる48時間急性遊泳阻害試験は遊泳阻害率0%、藻類による72時間成⾧阻害性試験は平均成⾧阻害率-2.1%という値を示し、ミジンコは生きることができ、藻は成⾧することを確認した。
 施工は約100mの区間(塗替面積2,400㎡)を3ブロックに分けて3班(1班6人前後)で進めた。塗膜剥離作業は、STRIPPERをその標準塗布量である0.7kg/㎡塗布して24時間養生した後に既設塗膜をかき落としていく。塗布回数は2回で、問題なく既設塗膜の除去が行えた。


塗膜剥離剤の塗布作業(左)/既設塗膜の剥離作業(1回目)(中央・右)

剥離作業1回目完了

剥離作業(2回目)

剥離作業2回目完了

 素地調整は、アースコート防錆-塗装システムが1種ケレン以外の素地調整工でRc-Ⅰ塗装系相当以上の防錆力を発揮することから、2種ケレンとして電動サンダーを用いて施工している。


素地調整の施工状況と完了状態

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