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鋼管圧着工法を採用 金沢工業大学、中日本高速道路金沢支社と共同開発

オリエンタル白石 施工性に優れたPC合成桁の床版取替工法『SPクランプ工法』が実績重ねる

公開日:2022.10.24

 オリエンタル白石は、鋼管圧着工法によるPC合成桁の床版取替工法『SPクランプ工法』を金沢工業大学、中日本高速道路金沢支社と共同開発実験や検討を行い共同で特許権を取得した。同工法はPC合成桁が対象で、単純PC合成桁において既設の主桁スターラップ筋の先端に定着鋼管を圧着させることで、スターラップの機能を保持させ、またPC床版切欠き部には鋼管圧着によってスターラップを延伸させ、主桁ウェブの首振りに対しても必要な耐荷性能を保持することを可能にした構造であり、施工性も向上させている。土木学会の指針などに拠った性能確認もPC合成桁上の床版取替工法としては他社に先駆けて初めて行っており、既に北陸自動車道の高野川橋(下り線)や太田川橋(下り線)などで実績を重ねている。(井手迫瑞樹)

SPクランプ工法概要図(オリエンタル白石提供、以下同)

PC合成桁の既設床版部の切断はワイヤーソーを活用
 全面的にWJを採用する場合と比べて手間を大幅に削減

 対象となるPC合成桁は、構造的にはPCI桁の上にRC床版が載っている構造であり、鋼橋のRC床版同様に床版に傷みが生じている。しかし鋼橋のRC床版と違ってセンターホールジャッキなどで剥がすことはできない。さらには主桁端部から突出する鉄筋は、新たに設置するPC床版と干渉するため切断しなければならないが、スターラップ筋はせん断抵抗する要の鉄筋であるため残す必要があり、該当するRC床版部をWJなどを用いて撤去してから型枠を組んで現場打ちする必要があった。
 SPクランプ工法は、WJなどで既設床版部をはつり取る作業と現場打ちに要する手間を減らすため、既設床版部の切断はワイヤーソーを活用し、新しいPC床版部への取替はプレキャストPC床版を採用した。


ワイヤーソーの施工状況

WJによるはつり状況

既設床版厚の半分をワイヤーソーで切断、もう半分をWJで斫る
 スターラップ筋に、定着鋼管を圧着することでスターラップの機能を保持

 施工はまず、既設床版の主桁間部については、既設床版のハンチ部ごと鉛直カッターで切断して撤去する。さらに桁直上部についてはまず、既設床版の約半分の高さをワイヤーソーで水平切断した。切断部分は、塩害環境下では腐食が生じている可能性のある主桁のスターラップ筋のフック部を含めた床版上縁側の撤去を前提としている。そして、あと半分の高さ(鉄筋が塩害による腐食が生じにくい部分)をWJではつり、切断した主桁直上部のスターラップ筋に、定着鋼管を圧着することでスターラップの機能を保持する。圧着は専用の油圧ジャッキを用いて施工するが、同機械は約30kgの重量があることおよび、圧着の際の鉛直精度を確保するため、クレーンで吊りながら施工する。さらに延長鉄筋の先端は、機械式定着体を用いて引抜き耐力を向上させている。また、スターラップだけではずれ止め鉄筋が不足する場合には,あと施工のずれ止め鉄筋を新たに配置することで水平せん断抵抗性を担保するようにしている。


鋼管圧着に使うジャッキ・ポンプ


実際の鋼管圧着状況

鋼管圧着部が非常によくわかる

 その後は鋼桁にプレキャストPC床版を設置する場合と同様に、桁と床版間に型枠を配置して無収縮モルタルを打設し一体化する。
 実施工事のプレキャストPC床版については、同社が鋼桁でも用いているSLJスラブを採用している。太田川橋の床版厚は230mm。


SPクランプ工法で用いられたSLJスラブ/床版架設状況

間詰部の施工状況

圧着治具の長さは40mm
 各種試験により従来と同等の耐荷性能を確認

 採用に当たっては、機械式定着体の性能評価を行う必要があった。同評価は土木学会の鉄筋継手・定着指針(2020年度版)に準拠して実施した。圧着する鋼管長は機械式定着併用重ね継手を参考に、厚さは機械式定着具で一般的に使用されている支圧面積比に近くなるように選んでいる。現場での圧着回数を減らすため、圧着治具の長さは、十分な嵌合力が得られる中でなるべく長くなるように40mmとした。長さが40mmを超える鋼管を使用する場合は、片側から数回に分けて順次圧着した。
 性能評価試験としては、引張試験、引抜試験、二面せん断試験、圧着接合定着の性能評価のための桁試験などを行った。引張試験では鉄筋の規格降伏強度の95%まで加力し、2%まで除荷した時の鉄筋と定着具の接合部の残留すべり量は0.3mm以下であり、引張強度も鉄筋の規格引張強度以上を確保しており、圧着定着の定着具としての性能を満足していることを確認できた。また、引抜試験では静的耐力が規格引張強度以上、高応力繰返し性能でも評価基準フックの値以下ということを確認している。


鉄筋応力―すべり量/引張試験結果一覧

 二面せん断試験や桁試験(曲げ耐荷力試験)でもSPクランプ工法における桁と床版の一体性を確認するとともに、従来と同等の耐荷性能が確保できることを確認している。

定着体の特性評価試験-引抜試験体概要図

鉄筋応力-抜出し量


二面せん断試験状況


圧着接合定着の評価-桁試験概要図


桁試験破壊状況

 今回使用した橋梁は単純桁であり本工法の採用が可能であった。今後は連続桁や連結桁への適用の検討を進めている。
 同社では今後、他の大規模更新工事おいても採用を働きかけていく方針だ。

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