床版架設には門型架設機を採用
レーザーバリア警報監視システムで供用車線への安全性を確保
床版の架設には、門型架設機を採用した。幅員分割施工であり施工ヤードと供用車線が極めて近接しておりクレーンが使えないためだ。門型架設機は延長約10m、幅は2.5~4mまで伸縮可能だが、ここでは3.3mで運用している。高さはトレーラーが出入りして床版パネルの撤去・架設を行えるよう5.7mとしたが、トレーラーでの運送時は2.3mまで縮めることが可能。
現場で使用した門型架設機の配置図
門型架設機
加えて、レーザーバリア警報監視システムを用いて供用車線への越境防止対策や、控え索の張力監視による門型架設機の転倒防止対策を実施するなどの体制を整えて施工に臨んでいる。
控え索の張力監視による門型架設機の転倒防止対策を実施(井手迫瑞樹撮影)
床版切断時に主桁を傷つけないように切断位置を測定
施工はまず、昼夜連続車線規制下で、追越車線(または走行車線)の舗装を切削し、仮設防護柵を設置した。
次にコンクリートカッターで施工帯全域の既設床版を分割し、コア削孔を行った。床版剥離機をコアに設置して床版を主桁から引きはがし、門型架設機(東葉製作所製)で撤去する。
既設床版の切断状況
既設床版の撤去状況(Ⅰ期線)
既設床版の撤去
撤去後は主桁上面に対してケレンや面取りを行い、強溶剤形ジンクリッチペイント(大日本塗料『ゼッタールEP-2HB』)を塗布した。さらにPCaPC床版を門型架設機で設置し、スタッドジベルを溶植した。高さ調整ボルトでPCaPC床版を所定の高さに調整した後、主桁と床版間には無収縮モルタル、ジベル孔にはコンクリートを打設した。最後に床版間詰部および端部の場所打ち床版部の配筋・型枠組立を行い、コンクリート(設計基準強度50N/㎟、早強、膨張剤20kg/㎥添加)を打設して一連の作業を完了させた。走行車線側施工時には、これらの工程に加えて、PC床版を架設後にガイドピンの接合作業およびPCケーブルの緊張作業を行っている。
上フランジ上面の鉄筋の除去およびケレンと防錆工
床版の架設状況
床版撤去時は、鉛直カッターによる切断で主桁を傷つけないように、予め床版厚を切断位置ごとに測定し、主桁天端から30mm上まで切断できるよう切断深さを現地で指示し、切断時には床版下面および上面にJV職員を配置して誤切断の無いように監視して施工した。また、架設時の床版設置高さは設計値と3D測量の成果をもとに既設主桁上フランジ高さと新設床版厚から調整厚(モルタル厚)を決定して架設している。
撤去は28枚、架設は25枚 両端部は現場打ちで対応
施工は1日3枚 門型架設機の性能に基づく
床版の撤去と架設の1枚当たりのパネルサイズはいずれも同じで、重さは既設床版で最大10.8t、プレキャストPC床版は同8.3tである。幅員分割施工1箇所あたりの撤去枚数は28枚、架設枚数は25枚となっている。新設床版は間詰部と端部の現場打ち箇所があるためだ。合理化継手の間詰幅は1箇所あたり280mm程度だが、床版更新に合わせて伸縮装置(鋼製フィンガージョイント)の交換も行っており、両端部は上り線が1,500mm、下り線が1,000mmの幅において、「据え付けを行う必要があることから」(元請の川田建設)現場打ちを施工する必要がある。端部の場所打ち部は打ち下ろしとなるため床版厚が最大305mmと厚くなるため「RC構造でももつ」(NEXCO東日本)と判断した。ただし、張り出し箇所だけは活荷重の2倍という制限があったため、ブラケットを付けて補強した。場所打ち部についても養生を含めて1日で打設を完了した。
床版割付図(上り線)
床版の撤去・架設は、門型架設機に搭載されている揚重クレーンの移動スパンから1日3枚とした。門型架設機は前後にレールを敷いて自走して移動させ、施工時はジャッキを張出して既設床版に反力をかけて使用し、3枚の撤去・架設が完了したら、再びレールを敷き直して門型架設機を次の個所まで移動させる、という工程を繰り返した。
門型架設機はレールをその都度敷き直して施工した
今回、床版は高欄と一体となったL型のPCaPC床版のため、偏心が生じやすい。そのため調整はレバーブロックなどを用いて細やかに行い、電動チェーンブロックで施工している。
PCaPC床版架設後の、モルタルやコンクリートの打設に際して使用する型枠はプラスチック製のアングル型枠である。同型枠は、川田建設元請の現場で採用しており。転用ができ、養生性にも優れている。
間詰コンクリート、端部の現場打ちコンクリートの打設に際しては、「幅員分割施工の特徴として施工帯が4.85~5.1mと狭小のため車の方向を変えることが出来ず、生コン車もバック付けが出来ない。そのため傍らに定置ポンプを配置して施工した。圧送距離は最長でも30m程で施工には支障はなかった」(川田建設)としている。
傍らに定置ポンプを配置して施工した
継手部の間詰コンクリート施工
端部の高欄の現場打ち施工
床版架設完了後は防水工(GⅡ)を施工する。今回は工期を考慮し急速施工可能で耐久性にも優れるレジテクトGS-M工法を採用した。その後、基層としてFB13、表層に高機能舗装Ⅱ型を施工し、供用した。
ショットブラストによる研掃(左端)および床版防水の施工①
床版防水の施工②
舗装との接着工の施工および舗装の施工
現在は上り線の床版取替を完了し、下り線の床版取替を施工中だ。
設計は建設技術研究所。元請は床版更新が川田建設、舗装設置工がNIPPO。床版更新の一次下請けはクレーン・コンクリート圧送がナカジマ、床版撤去工が第一カッター興業、床版取替工が川崎技興、舗装切削がNIPPO、スタッドが日本スタッドウェルディング。